はんぶんこ天使

いずみ

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第四章 ママと、パパのこと

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「ちょっと、美優! 聞いた?! 萌のこと?」
「莉子ちゃん?」

 今日の日直で学校に来てすぐ職員室に行った莉子ちゃんが、すごい勢いで教室に戻ってきた。何事かと、みんなの目が莉子ちゃんへ向く。

「萌、昨日転校しちゃったんだって!」
「「「「「「ええーっ!」」」」」」
 大きな莉子ちゃんの声に、あちこちから叫び声があがった。

「ちょっと、莉子さん、どういうこと? それ」
「榊が転校? 聞いてねーよ」
「萌さんが……嘘……」
「知ってた? 美優ちゃん」

 興奮しながら振り向いた真美ちゃんに、私は首を振った。
「ううん。今、聞いた」
 ちょっと棒読みになっちゃった。嘘って難しい。

 緊張した私にきづくことなく、みんなは情報を持ってきた莉子ちゃんの周りに集まっていく。
 昨日言ったとおり、萌ちゃんは転校したことになっていた。

 でも。
 確かに萌ちゃんは、私の記憶を消す、と言っていたのに。
 今の私は、しっかりと覚えているのだ。萌ちゃんが、天使だったこと。

 なんでだろう。昨日、藤崎さんに忘れさせられたんじゃなかったのかな。それとも、萌ちゃんみたいに、藤崎さんの力が私には効かなかったんだろうか。
 でも藤崎さんは、とても力のある天使みたいなことを、萌ちゃんは言っていたんだけど。

 不思議には思うけど、確かに私は萌ちゃんが天使だったことも、悪魔になりかけた宮崎さんの事も覚えている。どうしてなのかをたずねようにも、もう萌ちゃんはいない。
 あのきれいな翼を覚えていられるのは嬉しいけど、やっぱり萌ちゃんに会えないのは淋しい。

「それで莉子さん、萌さんどこに転校したの?」
「先生は、教えてくれなかった。個人情報だからって。……昨日は何も言ってなかったのに、冷たいよね。萌」
 ぷりぷりと怒っている莉子ちゃんは、よく見れば涙ぐんでいた。その涙に、は、とする。

 そっか。直接聞いていた私だって、こんなに悲しんだもん。何も知らなかった莉子ちゃんやみんなは、もっと悲しいよね。
 莉子ちゃんの涙を見て、私まで泣きそうになってきた。ぐす、と鼻をすすりながら、私は莉子ちゃんに言った。

「きっと、なにか理由があったんだよ。私たちには言いたくても言えない事情があったんじゃないのかな」
 私の言葉を聞いて、莉子ちゃんは、じ、と考え込む。

「そうだね。萌は、おとなしかったけど、いつだって私たちのことを考えてくれたもん。その萌が言っていかなかったんなら、きっとなにかよほどの事情があったんだよね」
「そうだよ。きっと萌ちゃんだって、今頃悲しんでるよ。いつか、萌ちゃんの方から連絡くれるかもしれないから、その時まで待ってようよ。だって、私たち、友達だもん」
 すん、と同じように鼻をすすりあげて莉子ちゃんが言った。
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