31 / 67
第四章 ママと、パパのこと
- 1 -
しおりを挟む
「ちょっと、美優! 聞いた?! 萌のこと?」
「莉子ちゃん?」
今日の日直で学校に来てすぐ職員室に行った莉子ちゃんが、すごい勢いで教室に戻ってきた。何事かと、みんなの目が莉子ちゃんへ向く。
「萌、昨日転校しちゃったんだって!」
「「「「「「ええーっ!」」」」」」
大きな莉子ちゃんの声に、あちこちから叫び声があがった。
「ちょっと、莉子さん、どういうこと? それ」
「榊が転校? 聞いてねーよ」
「萌さんが……嘘……」
「知ってた? 美優ちゃん」
興奮しながら振り向いた真美ちゃんに、私は首を振った。
「ううん。今、聞いた」
ちょっと棒読みになっちゃった。嘘って難しい。
緊張した私にきづくことなく、みんなは情報を持ってきた莉子ちゃんの周りに集まっていく。
昨日言ったとおり、萌ちゃんは転校したことになっていた。
でも。
確かに萌ちゃんは、私の記憶を消す、と言っていたのに。
今の私は、しっかりと覚えているのだ。萌ちゃんが、天使だったこと。
なんでだろう。昨日、藤崎さんに忘れさせられたんじゃなかったのかな。それとも、萌ちゃんみたいに、藤崎さんの力が私には効かなかったんだろうか。
でも藤崎さんは、とても力のある天使みたいなことを、萌ちゃんは言っていたんだけど。
不思議には思うけど、確かに私は萌ちゃんが天使だったことも、悪魔になりかけた宮崎さんの事も覚えている。どうしてなのかをたずねようにも、もう萌ちゃんはいない。
あのきれいな翼を覚えていられるのは嬉しいけど、やっぱり萌ちゃんに会えないのは淋しい。
「それで莉子さん、萌さんどこに転校したの?」
「先生は、教えてくれなかった。個人情報だからって。……昨日は何も言ってなかったのに、冷たいよね。萌」
ぷりぷりと怒っている莉子ちゃんは、よく見れば涙ぐんでいた。その涙に、は、とする。
そっか。直接聞いていた私だって、こんなに悲しんだもん。何も知らなかった莉子ちゃんやみんなは、もっと悲しいよね。
莉子ちゃんの涙を見て、私まで泣きそうになってきた。ぐす、と鼻をすすりながら、私は莉子ちゃんに言った。
「きっと、なにか理由があったんだよ。私たちには言いたくても言えない事情があったんじゃないのかな」
私の言葉を聞いて、莉子ちゃんは、じ、と考え込む。
「そうだね。萌は、おとなしかったけど、いつだって私たちのことを考えてくれたもん。その萌が言っていかなかったんなら、きっとなにかよほどの事情があったんだよね」
「そうだよ。きっと萌ちゃんだって、今頃悲しんでるよ。いつか、萌ちゃんの方から連絡くれるかもしれないから、その時まで待ってようよ。だって、私たち、友達だもん」
すん、と同じように鼻をすすりあげて莉子ちゃんが言った。
「莉子ちゃん?」
今日の日直で学校に来てすぐ職員室に行った莉子ちゃんが、すごい勢いで教室に戻ってきた。何事かと、みんなの目が莉子ちゃんへ向く。
「萌、昨日転校しちゃったんだって!」
「「「「「「ええーっ!」」」」」」
大きな莉子ちゃんの声に、あちこちから叫び声があがった。
「ちょっと、莉子さん、どういうこと? それ」
「榊が転校? 聞いてねーよ」
「萌さんが……嘘……」
「知ってた? 美優ちゃん」
興奮しながら振り向いた真美ちゃんに、私は首を振った。
「ううん。今、聞いた」
ちょっと棒読みになっちゃった。嘘って難しい。
緊張した私にきづくことなく、みんなは情報を持ってきた莉子ちゃんの周りに集まっていく。
昨日言ったとおり、萌ちゃんは転校したことになっていた。
でも。
確かに萌ちゃんは、私の記憶を消す、と言っていたのに。
今の私は、しっかりと覚えているのだ。萌ちゃんが、天使だったこと。
なんでだろう。昨日、藤崎さんに忘れさせられたんじゃなかったのかな。それとも、萌ちゃんみたいに、藤崎さんの力が私には効かなかったんだろうか。
でも藤崎さんは、とても力のある天使みたいなことを、萌ちゃんは言っていたんだけど。
不思議には思うけど、確かに私は萌ちゃんが天使だったことも、悪魔になりかけた宮崎さんの事も覚えている。どうしてなのかをたずねようにも、もう萌ちゃんはいない。
あのきれいな翼を覚えていられるのは嬉しいけど、やっぱり萌ちゃんに会えないのは淋しい。
「それで莉子さん、萌さんどこに転校したの?」
「先生は、教えてくれなかった。個人情報だからって。……昨日は何も言ってなかったのに、冷たいよね。萌」
ぷりぷりと怒っている莉子ちゃんは、よく見れば涙ぐんでいた。その涙に、は、とする。
そっか。直接聞いていた私だって、こんなに悲しんだもん。何も知らなかった莉子ちゃんやみんなは、もっと悲しいよね。
莉子ちゃんの涙を見て、私まで泣きそうになってきた。ぐす、と鼻をすすりながら、私は莉子ちゃんに言った。
「きっと、なにか理由があったんだよ。私たちには言いたくても言えない事情があったんじゃないのかな」
私の言葉を聞いて、莉子ちゃんは、じ、と考え込む。
「そうだね。萌は、おとなしかったけど、いつだって私たちのことを考えてくれたもん。その萌が言っていかなかったんなら、きっとなにかよほどの事情があったんだよね」
「そうだよ。きっと萌ちゃんだって、今頃悲しんでるよ。いつか、萌ちゃんの方から連絡くれるかもしれないから、その時まで待ってようよ。だって、私たち、友達だもん」
すん、と同じように鼻をすすりあげて莉子ちゃんが言った。
0
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。
takemot
児童書・童話
薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。
「シチュー作れる?」
…………へ?
彼女の正体は、『森の魔女』。
誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。
そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。
どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。
「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」
「あ、さっきよりミルク多めで!」
「今日はダラダラするって決めてたから!」
はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。
子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。
でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。
師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。
表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる