はんぶんこ天使

いずみ

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第四章 ママと、パパのこと

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「うん。そうだよね。私たち、萌の友達だもんね」
「うん」
 落ち着いたらしい莉子ちゃんは、みんなが先生に提出する宿題のノートを集め始めた。日直の朝の仕事だ。

 あれ?

 その莉子ちゃんの姿を見るともなしに見ていて気づいた。なんかその背中に、黒いほこりのようなものがついている。
「莉子ちゃん、ちょっと待って」
「うん?」
 振り返った莉子ちゃんの背中をぱたぱたと叩く。ふわんとそのほこりは形を変えるけど、相変わらず莉子ちゃんの背中にくっついていた。

「なに、ごみ? とれた?」
 莉子ちゃんは、一生懸命自分の背中を見ようとぴょんぴょんはねる。
「……うん、とれたよ」
「ありがと、美優」
 そうしてまた、ノートを集めに行ってしまう。私は、その背中をじっと見送った。

 あれは……
 同じような黒いもやを、昨日嫌というほど見た。しかも、もっとおおきなやつ。
 宮崎さんの背中にあったあれと同じだ。
 なんでそれが、莉子ちゃんの背中に?

 そう思ってあたりを見てみると、他にも背中にぼんやりと黒いもやをつけている人が何人かいた。
 ええ? 昨日までこんなの見えなかったのに。

「美優ちゃん。おはよう」
 私がぼんやりとしていたらしく、さっちゃんが心配そうに顔をのぞき込んだ。さっちゃんも、まだ目に涙を浮かべている。どうやら、私が萌ちゃんのことで落ち込んでいるのを心配してくれたみたいだった。

 「おはよう、さっちゃん」
 さっちゃんは、にこりと笑って自分の席へ戻っていく。その背中にも、うっすらと黒いものがついていた。

 人によって小さいものもあったし、大きいものもあった。全くない人もいるけれど、そういう人はクラスの中で数人。たいていの人はその黒いものをつけていた。

 どういうこと?

  ☆

「莉子ちゃん、最近変わったことある?」
「変わったこと?」
 その日の帰り道。二人でぽてぽて歩きながら莉子ちゃんに聞いた。やっぱり何度見ても、莉子ちゃんの背中には黒いもやがゆらゆらと揺れている。

「うん。変わったことって言うか……もしかしてだけど……嫌なこととか、悲しいこととか、あった?」
 萌ちゃんの言っていたことを思い出す。

 心に闇を作ってしまうのは、確か、悲しかったり何かを欲しがったりした時だって言ってたけど、なんとなく莉子ちゃんの場合は、なにか落ち込んでいるような気がした。

 ぽてぽて歩いていた莉子ちゃんの足が止まった。
「……なんで?」
「なんとなく。あ、別に何もなければいいんだけど」
 私があわてて手をふると、莉子ちゃんはにかっと笑顔になる。でも、わかってしまった。
 莉子ちゃん、無理して笑っている。

「んー、よくわかったね、美優」
「莉子ちゃん?」
 莉子ちゃんは、ちょっとだけうつむくと早口で言った。
「うち離婚するんだって」
「え?」

 もともと、莉子ちゃんのところの両親は、あまり仲が良くないって聞いてた。いつも元気な莉子ちゃんだけど、そのことで辛い思いをしてきたことも知っている。
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