はんぶんこ天使

いずみ

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第六章 大きくなりすぎた心の闇は

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「莉子さん、どうしてそんなことをしたの?」
 沢田先生が、気づかうように優しく聞いてくれる。
 先生は、もうすぐ莉子ちゃんの両親が離婚することを知っている。だから、きっと莉子ちゃんが荒れている理由も、想像がついたに違いない。 

 莉子ちゃんは立ち上がって、さっちゃんの方を向く。
「皐月さん、ごめんなさい」
 莉子ちゃんが頭を下げながら言うと、さっちゃんは驚いた顔になったけど、笑いながら大きくうなずいてくれた。先生もそれを見て笑顔になる。
「悪いと自分でわかっているならいいわ。今度から気をつけましょうね」

 よかった。莉子ちゃん、文句言ったりしないでちゃんとみんなの前で謝ることができた。黒いもやも大きくなっていないし、自分の気持ちをコントロールできたんだ。すごいよ、莉子ちゃん。

 ほ、とした気持ちであたりをみまわすと、やけに大きな黒いもやが視界に入った。恵さんだ。なんでかその顔は、不満そうだった。

「他にありませんね。では、先生のお話」
 先生が立ち上がって児童会祭に向かってがんばりましょうと話をして、帰りの会は終わった。

  ☆

「莉子さん、本当に悪いと思っているの?」
 私と莉子ちゃんが帰ろうとすると、後ろから恵さんに声をかけられた。ふりむくと、恵さんと、その後ろにさっちゃんがいた。
 うわあ。やっぱり恵さんの背中には、かなり大きな黒いもやが乗っていた。

「さっき莉子さんに転ばされて、さっちゃん、足のとこけがしたんだよ」
「え……」
「さっちゃん、大丈夫?」
 慌てて聞くと、さっちゃんはなんだか困ったように答えた。
「うん、たいしたことはないんだけど……」
「ほら」
 恵さんが、さっちゃんのスカートの足を見せる。さっきはジャージをはいていたから気づかなかったけど、確かに少しだけ、膝の下あたりが黒くなっていた。
「なんだ、ほんのちょっとじゃない」
 莉子ちゃんも、ほ、としたのかそんな風に言ってしまった。けれど、そんな言い方をするから、恵さんはよけいに、む、としたようだった。

「人にけがさせて、そんな言い方はないでしょう。もう一度ちゃんと謝りなさいよ」
「……ごめんなさい」
 唇をかみしめて謝る様子は、一生懸命自分の気持ちを押さえようとしているのがよくわかる。確かに悪いのは莉子ちゃんだけど、あんな風に言われたら、きっといい気持ちはしないだろう。
 えらいよ、莉子ちゃん。
 でも、恵さんは怒ったようにまだ続ける。

「本当に悪いと思っているの? さっきだって、先生に言われたからテキトーに謝ったんでしょ? 心がこもってるようには、感じられないのよね」
「転ばされたのは、さっちゃんでしょ? 恵さんがそんなふうに言うことじゃないんじゃない?」
 莉子ちゃんも、ついに言い返してしまった。うーん、ここら辺はまだいつもの莉子ちゃんだけど……

 私は、あわてて莉子ちゃんの腕をとる。
「莉子ちゃん、もう帰ろうよ」
「ちょっと待ってて、美優」
 私が伸ばした手を、莉子ちゃんは握って止めた。私たちの様子を、恵さんは、ふん、と見下ろす。

「莉子さんて、いつもそうだよね。美優さんが迷惑してるのがわからないの?」
「だったら恵さんだって、さっちゃんが何も言わないのをいいことに、偉そうに何言ってるのよ。さっちゃんが文句言ったの? 恵さんは、なんでもかんでも理由をつけて自分が偉ぶりたいだけでしょ?」
「な……!」

 か、となったらしい恵さんが、どん、と莉子ちゃんを突き飛ばした。予想外の行動に、莉子ちゃんは机の間に倒れ込む。
「痛っ!」
「いい気味よ! さっちゃんだってさっきこうされたんだからね! 自業自得!」
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