はんぶんこ天使

いずみ

文字の大きさ
52 / 67
第六章 大きくなりすぎた心の闇は

- 5 -

しおりを挟む
「莉子さん、どうしてそんなことをしたの?」
 沢田先生が、気づかうように優しく聞いてくれる。
 先生は、もうすぐ莉子ちゃんの両親が離婚することを知っている。だから、きっと莉子ちゃんが荒れている理由も、想像がついたに違いない。 

 莉子ちゃんは立ち上がって、さっちゃんの方を向く。
「皐月さん、ごめんなさい」
 莉子ちゃんが頭を下げながら言うと、さっちゃんは驚いた顔になったけど、笑いながら大きくうなずいてくれた。先生もそれを見て笑顔になる。
「悪いと自分でわかっているならいいわ。今度から気をつけましょうね」

 よかった。莉子ちゃん、文句言ったりしないでちゃんとみんなの前で謝ることができた。黒いもやも大きくなっていないし、自分の気持ちをコントロールできたんだ。すごいよ、莉子ちゃん。

 ほ、とした気持ちであたりをみまわすと、やけに大きな黒いもやが視界に入った。恵さんだ。なんでかその顔は、不満そうだった。

「他にありませんね。では、先生のお話」
 先生が立ち上がって児童会祭に向かってがんばりましょうと話をして、帰りの会は終わった。

  ☆

「莉子さん、本当に悪いと思っているの?」
 私と莉子ちゃんが帰ろうとすると、後ろから恵さんに声をかけられた。ふりむくと、恵さんと、その後ろにさっちゃんがいた。
 うわあ。やっぱり恵さんの背中には、かなり大きな黒いもやが乗っていた。

「さっき莉子さんに転ばされて、さっちゃん、足のとこけがしたんだよ」
「え……」
「さっちゃん、大丈夫?」
 慌てて聞くと、さっちゃんはなんだか困ったように答えた。
「うん、たいしたことはないんだけど……」
「ほら」
 恵さんが、さっちゃんのスカートの足を見せる。さっきはジャージをはいていたから気づかなかったけど、確かに少しだけ、膝の下あたりが黒くなっていた。
「なんだ、ほんのちょっとじゃない」
 莉子ちゃんも、ほ、としたのかそんな風に言ってしまった。けれど、そんな言い方をするから、恵さんはよけいに、む、としたようだった。

「人にけがさせて、そんな言い方はないでしょう。もう一度ちゃんと謝りなさいよ」
「……ごめんなさい」
 唇をかみしめて謝る様子は、一生懸命自分の気持ちを押さえようとしているのがよくわかる。確かに悪いのは莉子ちゃんだけど、あんな風に言われたら、きっといい気持ちはしないだろう。
 えらいよ、莉子ちゃん。
 でも、恵さんは怒ったようにまだ続ける。

「本当に悪いと思っているの? さっきだって、先生に言われたからテキトーに謝ったんでしょ? 心がこもってるようには、感じられないのよね」
「転ばされたのは、さっちゃんでしょ? 恵さんがそんなふうに言うことじゃないんじゃない?」
 莉子ちゃんも、ついに言い返してしまった。うーん、ここら辺はまだいつもの莉子ちゃんだけど……

 私は、あわてて莉子ちゃんの腕をとる。
「莉子ちゃん、もう帰ろうよ」
「ちょっと待ってて、美優」
 私が伸ばした手を、莉子ちゃんは握って止めた。私たちの様子を、恵さんは、ふん、と見下ろす。

「莉子さんて、いつもそうだよね。美優さんが迷惑してるのがわからないの?」
「だったら恵さんだって、さっちゃんが何も言わないのをいいことに、偉そうに何言ってるのよ。さっちゃんが文句言ったの? 恵さんは、なんでもかんでも理由をつけて自分が偉ぶりたいだけでしょ?」
「な……!」

 か、となったらしい恵さんが、どん、と莉子ちゃんを突き飛ばした。予想外の行動に、莉子ちゃんは机の間に倒れ込む。
「痛っ!」
「いい気味よ! さっちゃんだってさっきこうされたんだからね! 自業自得!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。  最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。  てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。  てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。  デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?  てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ

オバケの謎解きスタンプラリー

綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます! ――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。 小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。 結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。 だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。 知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。 苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。 いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。 「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」 結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか? そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか? 思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

処理中です...