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はじまり
第二話、または出会い
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「――それで、この私に相談と」
「そうなんだよモネ。私もどうしたらいいか」
私は隣にいるソレを引き連れて、目の前の少女に事の顛末を話していた。
カチカチと音を刻みながら車輪を回し、私の方へと近づく。
そうして私のもう片方の隣から、その青年に問いを投げかける。
「おい、少年。名前はなんだ?」
「……」
青年は何も答えない。
フードと前髪で隠れたその表情を読み取ることもできず、私はただ困惑の表情を浮かび上げた。
20分ほど前、私は自身の家から仕事場まで歩いていた。
そんないつも通りの日々とは少しだけ変わったことが起こった。
それがこの青年。いや、少年ともいえるだろう。
何せ私よりも若い。
いつも視界の端に見える小さな路地裏。
そこはあまり見たくないのだが、今日は違った。
路地裏に、ボロボロの外套を身にまとった黒い服の男がそこにはいた。
彼はズボンのポケットから一枚の紙きれを出す。
「んで、それがこの『入隊志願』の紙ってことね」
「そうなんだ。正直困っていてね。なんせ、うちは……その……アレだろう?」
「まぁ、うん。そうだね」
正直本当に困っている。
私の所属する部隊は少々特殊だ。そのため彼のような、はっきりと思うようにするが、乞食のようなくる場所ではない。
私は部屋にあるソファーに腰掛ける。
少年はいまだ、何も口をするでもなくただ突っ立っていた。
「君、名前は?」
私も一応聞いてみた。
どうせ入隊はしないであろうし、入ったところですぐやめてしまうのがオチだろう。
だが、思わぬ反応があった。
「……ヴァン」
彼はそうつぶやく。
ヴァン、今確かにそう答えた。
「……君は、ヴァンというのかい?」
彼はこくりと頷く。
「そ、そうか。では、君はなぜうちに志願したんだい?」
私は聞いてみた。
だがいくら待っても彼からの返事はない。
「……おい、少年。君は金のために入隊したのかい?」
車椅子に座ったモネがそう聞くと、彼は首を横に振った。
「なら、なんで入隊したいんだ?」
部屋がまた静寂に包まれる。
だが先ほどとは少し違う反応が見て取れた。
だが、口は微動だにせず。
ただ暗い雰囲気が部屋に木霊する。
「とりあえず、ヴァン君と呼んでいいかな?」
私は彼の目を探りだす。
「――」
彼はこくりと頷いた。
前髪を揺らし、布の擦れる音を出しながらゆっくりと呼吸をしている。
彼を観察するが、特におかしな点はない。
ある一点を除いて。
彼が頷いたと同時に揺れた外套の隙間から顔を出したソレ。
「……いいだろう。入隊したいんだろう?」
私は言った。
「リリア、正気なの?!こんなわけのわからない薄気味悪いやつを部隊に入れるの?」
「うん、面白そうだし入れるよ。それに人手は多い方がいいでしょ?」
そう、人手は多いに越したことはない。
先ほどまで抱いていた印象とは異なる雰囲気を彼から感じ取り、私は彼の入隊を許可することにした。
「そうなんだよモネ。私もどうしたらいいか」
私は隣にいるソレを引き連れて、目の前の少女に事の顛末を話していた。
カチカチと音を刻みながら車輪を回し、私の方へと近づく。
そうして私のもう片方の隣から、その青年に問いを投げかける。
「おい、少年。名前はなんだ?」
「……」
青年は何も答えない。
フードと前髪で隠れたその表情を読み取ることもできず、私はただ困惑の表情を浮かび上げた。
20分ほど前、私は自身の家から仕事場まで歩いていた。
そんないつも通りの日々とは少しだけ変わったことが起こった。
それがこの青年。いや、少年ともいえるだろう。
何せ私よりも若い。
いつも視界の端に見える小さな路地裏。
そこはあまり見たくないのだが、今日は違った。
路地裏に、ボロボロの外套を身にまとった黒い服の男がそこにはいた。
彼はズボンのポケットから一枚の紙きれを出す。
「んで、それがこの『入隊志願』の紙ってことね」
「そうなんだ。正直困っていてね。なんせ、うちは……その……アレだろう?」
「まぁ、うん。そうだね」
正直本当に困っている。
私の所属する部隊は少々特殊だ。そのため彼のような、はっきりと思うようにするが、乞食のようなくる場所ではない。
私は部屋にあるソファーに腰掛ける。
少年はいまだ、何も口をするでもなくただ突っ立っていた。
「君、名前は?」
私も一応聞いてみた。
どうせ入隊はしないであろうし、入ったところですぐやめてしまうのがオチだろう。
だが、思わぬ反応があった。
「……ヴァン」
彼はそうつぶやく。
ヴァン、今確かにそう答えた。
「……君は、ヴァンというのかい?」
彼はこくりと頷く。
「そ、そうか。では、君はなぜうちに志願したんだい?」
私は聞いてみた。
だがいくら待っても彼からの返事はない。
「……おい、少年。君は金のために入隊したのかい?」
車椅子に座ったモネがそう聞くと、彼は首を横に振った。
「なら、なんで入隊したいんだ?」
部屋がまた静寂に包まれる。
だが先ほどとは少し違う反応が見て取れた。
だが、口は微動だにせず。
ただ暗い雰囲気が部屋に木霊する。
「とりあえず、ヴァン君と呼んでいいかな?」
私は彼の目を探りだす。
「――」
彼はこくりと頷いた。
前髪を揺らし、布の擦れる音を出しながらゆっくりと呼吸をしている。
彼を観察するが、特におかしな点はない。
ある一点を除いて。
彼が頷いたと同時に揺れた外套の隙間から顔を出したソレ。
「……いいだろう。入隊したいんだろう?」
私は言った。
「リリア、正気なの?!こんなわけのわからない薄気味悪いやつを部隊に入れるの?」
「うん、面白そうだし入れるよ。それに人手は多い方がいいでしょ?」
そう、人手は多いに越したことはない。
先ほどまで抱いていた印象とは異なる雰囲気を彼から感じ取り、私は彼の入隊を許可することにした。
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