追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

文字の大きさ
2 / 26
第1章 出会い

飛んで火に入る夏の虫

しおりを挟む
「これからどうすっかな……」

 勢いよくパーティーを抜けたのはいいものの、魔王を倒すといった目標を失ったため、特に何をするかということが決まっていなかった。

「とりあえず近くの街に行くか……」

 俺は〈探索サーチ〉の魔法を使い、人間の街――魔力が多い方角を探す。
 結果、魔力源は目の前の道をまっすぐにあるそうだ。
 確かこっちの方角は次に俺たちが目標としていた街の方角だな。
 もしかすると、次の街であの勇者パーティーと再び出会うかもしれない……彼らが生きていればの話だが。

 まぁ、生き延びることは可能だろう。いくら彼らが強くないといえど、弱いわけではない。どちらかというと、強い部類に入ってしまう。残念なことに。
 だから、次の街で出会ってしまうのは避けられないだろう。俺が早く街を出れば問題ないだろうが、あの短時間で俺が必要だと気づかれたら面倒だ。
 そこまでの頭はないと信じたいが、念には念を入れて、早めに街を出ることにしよう。

「しかし、何もないなぁ。魔物の一匹ぐらい、出てきてくれてもいいのに」

 俺はこの時点で少し苛ついていた。あのパーティーに思い入れがなかったとはいえ、あのような待遇を受けたのだ。
 いかに俺が冷静に対処しようとしても、俺の深層意識は思うようになってくれない。
 気晴らしに一発、強力な魔法を打ちたかった。もちろん、何もいない状態でそんなことをすれば、ギルドから喝を入れられるのでごめんだ。

 だから、魔物が――

「きゃ――ッ! 助けて――ッ!」

 突如、目の前を一人の少女が横切り、その後ろを狼の魔物が追いかけていたのだ。
 その光景を見て一言……

「……獲物、発見」





「きゃ――ッ! 助けて――ッ!」

 私は今まで出したことのないような大きな声を出していた。
 理由は単純だ。今、私の後ろには……

「グルワァッ!」

「もう来ないで~!」

 狼の魔物――それもかなり大きなサイズのものがよだれを垂らしながら追いかけてきていたのだ。
 恐らく、私のことを餌か何かだろ思ってるんだろう。

「どうしてウインドウルフがいるのよッ!」

 私は思わず叫んでいた。
 ウインドウルフはこの辺りでは出現しない魔物のはずであったが、何かの間違いでこの森に迷い込んだらしい。
 ここでは比較的、弱い魔物しかいない……らしい。だからこそ、私は親の反対を乗り切って、ここに来たのに……

「全然安全じゃないじゃないッ! ふぇ――?」

 急に体が軽くなる感覚を覚える。
 この感覚は知っている。それはもう、ついさっきまで空を飛んでいたのだ。それと同じだ。
 つまり、私は今、地面に足をつけていない。そう、木の根っこにつまずいてしまったのだ。

「ぶへ――ッ!」

 すると見事、私は受け身を取ることができないまま、地面に倒れ込んでしまったのだ。
 顔、体全身に走る痛み。だが、私にそんなことを気にする余裕はなく、慌ててウインドウルフの方に振り返る。


「グルルル……」

 ウインドウルフは荒く鼻息を立てて、ゆっくりと私を追い詰めるように歩いてくる。
 十分に襲える距離がいるのに、すぐには襲ってこないのは、私の頭と背中にあるものがあるからだろう。
 それがなければ、ウインドウルフは迷わず私を襲っていたはずだ。

 しかし、それも大して意味はなかった。
 私を襲うことを決めたウインドウルフは短く吠えて、私に飛びかかってきた。

 もう駄目だろうと体をこわばらせた瞬間――

「ギャウン――ッ!」

「…………え?」

 そこで私はあり得ないものを見てしまった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...