追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

今日の飯はお肉だな

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 早速、俺の鬱憤うっぷんを晴らすために用意されたとしか思えないタイミングで出てきた狼を、俺は追いかけるしかないと思い、〈身体強化フィジカルアビリティ〉をかけて、後を追った。

 ふっふっふ……まさか自分から出向いてくれるとは。今日の俺はツイている。←(パーティーを追放された奴)
 しかも相手はウインドウルフじゃないか。確かそこまで強くはなかったはずだが、味は高級品に劣らない。
 これで今日の夕食に困ることもない。まさにツイている。←(パーティーを追放された奴)
 その前にウインドウルフ以外に何かが走っていたが……まぁ、いいか。どうせ大したものではないだろう。

 俺は加速ブーストをかけ、ウインドウルフを追いかける。
 しばらくすると、ウインドウルフの姿が確認できた。
 ウインドウルフはもう走っておらず、ゆっくりと歩いて、何かを見ていた。察するに、獲物を追い詰めることができたのだろう。
 
「まぁ、俺が仕留めるんだがなぁ……」

 獲物を仕留めて喜んでいるところ悪いが、俺の獲物には変わらないんだ。すまんな。俺の糧になってもらう。
 襲うタイミングはアイツが飛びかかった瞬間――獲物に襲いかかった時だ。
 空中に浮いた無防備な状態時にケリをつける。
 まぁ、反撃されたところで大して苦になることはないが、いちいち戦うのは面倒だ。
 最初は大掛かりな魔法でぶっ飛ばしてやろうと思っていたが、飯の方が重要だ。
 できるだけ傷をつけないで仕留めたい。

「そろそろか……よし! 今だ――ッ!」

 ウインドウルフが獲物に飛びかかった。この時を待っていた。
 ウインドウルフが地面を離れたと同時、俺は足の全筋肉に力を入れ、バネの要領で一瞬にして速度を最大にする。
 端から見たら、今の俺は弾丸のように見えるだろう。そこまで小さくないが。
 当然、ウインドウルフはこちらに気づいていない。あらかじめ、ウインドウルフに気づかれないように〈隠蔽ハイド〉で隠れていたが、ウインドウルフ如きにこの魔法を使うべきではなかったかもしれない。

 そして、ウインドウルフとの距離が零に近くなる。だが、肝心のウインドウルフは気づいていない。
 俺は少し引いていた右足を一気に前に蹴り出した。
 その蹴りは自分が動いていた速度より早い。自分の速度+蹴りの速度だ。
 今、身体能力のみで出せる最大火力の蹴りを――

「吹っ飛べッ!」

「ギャウン――ッ!?」

 ウインドウルフの顔面めがけて放った。
 俺の放った蹴りを受けたウインドウルフは短い悲鳴を上げ、俺が蹴った方向に吹っ飛んで……

「あれ?」

……いくことはなかった。
 
 いや、確かに吹っ飛んでいった。粉々になったウインドウルフの顔面が。
 どうやら俺の蹴りが速すぎたせいで、顔面は吹っ飛んでいったが、体は置いて行かれてしまったのだ。だるま落としのように。
 といっても、肝心の頭も吹っ飛んだというより、砕け散ったといった方が正しいが。

「もう終わり……?」

 呆気ない終わりだったが、当初の目的だった食料を確保できたのだ。後はそれを回収して……

「ぎゃああああぁぁぁぁ――――ッ! 何これ――ッ!?」

 背後から何やら悲鳴が聞こえる。振り向くと、顔面を失ったウインドウルフに抱きつかれる少女の姿が目に入った。

 確かに俺の攻撃によってウインドウルフは死んだ。そこまではいい。ならなぜ、こうなっているのか。
 そういえば、ウインドウルフにトドメを刺したのは獲物――少女に襲いかかっていたときだ。
 空中に浮いている間、何かしら力を加えない限り、その物体は動きを変えない。
 俺も力を加えたはずだが、吹っ飛んでいったのは頭だけ。つまり、力がかかったのは頭だけだ。
 これは、ダルマ落としの要領と同じだ。なんだったけな? 勘、慣……感性の法則だっけ? 頭よくねえからわかんねえや。
 やっぱ勉強はクソだ。魔法こそが至福だ。

 まぁ、まとめると、この少女は飛びかかってきて勢いが死ななかったウインドウルフにそのまま抱きつかれたということでいいか。……うん、どうでもいいな。

「とりあえず、傷つけることなく仕留められたな」

 俺は内心、微笑む。立派な肉が手に入ったのだ。笑ってしまうのも仕方ないだろう。

「ちょっと! ニヤニヤしてないで助けなさいよ!」

 おっと、目の前の少女注意されてしまった。どうやら、心の中で笑っているつもりだったが、表情に出てしまっていたようだ。
 少女は俺を気持ち悪そうに見ながら、ジタバタしてウインドウルフをどかそうと必死になっている。俺の顔って、そんなにキモい?
 冷静になって押し返せば、すぐにどかせるだろうに。少女はパニックを起こして、そのことに気づいていない。

「……はぁ、仕方ないか」
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