追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

魔族の少女

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「私をどうするつもり……?」

 その声は震えており、俺に怯えているとわかった。

「どうするつもり……とは?」

 少女の言いたいことはわかる。俺があえて触れたのだ。話を逸らすためとはいえ。
 しかも、その話題は俺たち人間と少女――にとっては、簡単に済ませることができない。

 簡単に済ませることができないとは、そのままの意味だ。一般的に人間と魔族は殺し合う運命にある。俺が元いたパーティーも魔族の王である魔王を倒すために旅をしていたのだ。それももう終わったが。
 そんな運命にある俺たちだが、なぜ人間と魔族が対立しているのかはわからない。見た目もそこまで違いはなく、魔族には角と翼が付いているくらいだ。それ以外、大した違いは見られない。
 だが、神々の悪戯なのか、俺たちは互いを殺すことに躍起やっきになっている。どちらが滅ぶまで。それまで、戦いは続くだろう……

 なら、少女の口から出る答えは容易に想像できる。

「私を……殺すつもりなの?」

 涙目になりながら、少女は問いかける。
 確かに殺されると捉えられてもおかしくない。俺たちの関係はわかりきっていることだが、この魔族の少女はウインドウルフ如きに後れを取っていたのだ。つまり、めちゃくちゃ弱い。
 そして、俺は不意打ちとはいえ一撃で倒した。実力差はハッキリしている。
 それに、魔族の素材は高い値で売れる。それも、人間が魔族を狩る理由の一つかもしれない。

 この条件が揃っている今、人間少女魔族を殺さない理由がないのだ。 

「……別に殺すつもりはない」

「……え?」

「だから、殺すつもりはない」

 俺の言葉に少女は驚いたような呆気にとられた表情をした。

 そう、人間と魔族が殺し合う運命にあろうが、。 

 そもそも俺が勇者パーティーにいたのは、国のお偉いさんが

『魔王を倒した暁には、望む報酬を与えよう』

 と言ったからだ。だから俺はあのゴミカスどもと旅を続けていたのだ。しかし、当初の目的を失った今、俺が魔族を殺す意味がないのだ。
 確かに、この少女を殺して売れば金が入るだろうが、一応、俺は元勇者パーティーだ。金の蓄えはそれなりにある。
 相手に戦う意志があるなら、それ相応の対応をするが、明らかに戦意を失っている相手に戦いを挑むほど、俺は腐っていない。……決して相手が女性だからというわけではないぞ!?

「本当に殺さないの……?」

 少女が涙目のまま訊いてくる。その声は儚く、すぐにでも散ってしまいそうなものだ。
 うっ、心が綺麗な人の涙はこちらに罪悪感をいだかせる。欲望が丸見えのあのゴミ女どもの涙とは大違いだ。あの涙に慣れていたせいで、純粋な少女の涙は俺の心に大きなダメージを与えていた。

 だ、だが、俺も冒険者の端くれだ。いくつもの困難を乗り越えてきた! 少女の涙に屈するほど柔ではない!

「あ、ああ。こ、こ、こ――」

「……?」

 思いっきり動揺していました。
 少女は俺が動揺しているわからないようで、首をかしげながら俺を見つめていた。ヤメッ、ヤメロォ――ッ! そんな純粋な目で見ないでくれ!

 今日の体験談。俺の最大の弱点は純粋な少女の涙でした。





「大丈夫?」

「あぁ、もう心配ない」

 あれから数分して、俺はようやく心を落ち着かせることができた。感じていた心の痛みもすでに治まっていた。
 そして、心を落ち着かせていた間、俺はある疑問を抱いていた。

「なぁ、なんでこんなところに一人でいるんだ? こんな何もないところで」

 そう、魔族がこの森――冒険者からは迷いの森と呼ばれる――にいるはずはないのだ。なぜなら、この森は魔族領から離れすぎている。さらに、これといった特徴もない。わざわざ遠い道のりを移動してまで来る場所ではないのだ。
 だが、この少女はなぜか、この森にいた。こんな弱さで、さらには一人で。
 どれだけ考えても、少女がこの森にいる理由がわからなかったのだ。

「えっと……あの、その……」

 少女は恥ずかしそうに、もぞもぞと、俺と目を合わせないように視線を逸らす。うーん、よっぽど言いにくいことなのか? もしかして、ブラックな任務を出されたとか――

「道に…………迷ったの……」

 予想斜めの答えが返ってきた。……へぇ、迷子ね。……この距離を? いやいや! おかしいだろ! ここから魔族領まで、どれだけ離れていると思ってるんだ! 勇者パーティーが一年かけて着くくらいの距離だぞ!? ……俺の魔法を使えば、もっと早いけど。

「ねぇ、どうして人間がここにいるの?」

「……ん?」

 何を言ってるんだ、この子?

「どうして人間が魔の森にいるの?」

「んん――ッ!?」

 ヤバい。この子、ここが魔族領だと思ってる……
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