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第1章 出会い
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「……え? ここが人間領……?」
「そう、人間領」
「魔族領じゃなくて?」
「そう。正確に言えば魔の森でもない」
俺は手短に、ここが人間の住んでいる地だということを教えた。少女は状況を理解できていないようで、口をぽかーんと開けて固まっている。
いや、流石に人間領と魔族領を間違えるって……どれだけ方向音痴なんだ。てか、方向音痴のレベルじゃないだろ。それにしてもよく、この弱さでここまでたどり着けたな。相当運がよかったのだろうか。よくわからないものである。
そういえばアイツら、無事に森から出られたかなぁ……どうでもいいけど。
「ここは人間領……魔族領じゃない。魔の森じゃない……ははは…………」
よほどショックだったのだろうか。少女は壊れたように乾いた笑いを漏らしていた。その姿はなんとも哀れである。慰めの言葉をかけるべきなのだろうか。否。俺はそんなことはしない。
だが、俺はどうしても少女に伝えるべきことがあるので、少女には悪いが、現実に戻ってきてもらうことにする。
「で、どうするつもりなんだ?」
「へ?」
「君はここに来るつもりで来たんじゃないんだろ? これから、どうするんだ?」
「あ……」
少女は今さら気づいたような顔をする。
当然、ここまで来たということは、その帰りもあるということである。しかし、この少女は意図して、ここに来たわけではない。そうなれば、自力で帰れるとは思えない。となると、彼女の口から出る言葉は……
「あのー……私を助けてくれませんか……?」
助けを乞うに決まっている。だが、相手は少女とはいえ、魔族の少女だ。いくら困っていようと、そう安々受けることはできない……
「んー、ま、いっか。どうせ暇だし」
なんて言うとでも思ったか! 当然、受けるに決まっているだろう! 可愛らしい少女が困っているんだ! ここで断れば、男の名が廃れるというものよ!
……というのは半分冗談で、ここで見捨てたら目覚めが悪くなる。それに今、俺はパーティーに追放されたが、冒険者を辞めたわけではない。
そもそも冒険者も俺がやりたいからなったわけじゃなく、元は国のお偉いさんたちが……(割愛)
つまり、俺には金があり、別に急いで冒険者家業をする必要はないのだ。金が少なくなったら働けばいいので、数年はのんびりとできる。要するに、今は暇なのだ。
ちょっとくらい時間を無駄に使ってもいいと、俺は少女の頼みを聞いたのだ。
「え? 助けてくれるの……?」
まさか受けてくれるとは思ってもいなかったのか、少女は呆気にとられたような顔をする。俺、今日だけでこの子のぽかーんとした顔を何回見ただろうか。結構見たと思うぞ?
「なんだ? どこかおかしいとこがあったか?」
「いや、だって私は……」
「別にそんなのはどうだってもいい。人間だとか魔族だとか。人間にもいい奴がいれば悪い奴もいる。それは魔族だって同じだ。生憎と俺は見た目だけで差別しないもんでね。そいつがいい奴か悪い奴かは俺が決める」
うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ――――ッ! なんか俺、格好いいこと言ったんじゃね!?
いい奴か悪い奴かは俺が決める(キリッ)って、なかなか決まっただろ! この子もきっと心の中で
『きゃぁ、格好いい……。なんて素敵な人なのかしら……』
みたいなことを思ってるに違いない! (妄想)
まぁ、俺の周りの人間どもは、ほとんどがクソどもしかいなかったが。
「えっと、あの、その……ありがとう」
返すべき言葉を考えた結果、シンプルに感謝の言葉が返ってきた。くっ! 裏があるわけでもない純粋な言葉! クソな人間どもの利益しか考えていない打算なものではない! うぅ、感動した……
「気にするな。困ったときはお互い様だろ?」
俺は考えていることを悟られないように冷静に答える。ここで考えていることがすべてが水の泡だ。まぁ、助けを求める相手がいないから、俺の考えがバレても問題なさそうだが。←(なお、自分は己の利益のために動いている模様。所詮は俺もクソどもの一員)
こうして俺は少女を魔族領に送り返すことになった。
「俺の名前はアベル。よろしくな」
「あっ、はい! 私はロザリアって言います」
ロザリアはよろしくと言いながら、俺に頭を少し下げた。
よし、少女の名前もわかったことだし、これから森を出る準備をしないとな。
「そう、人間領」
「魔族領じゃなくて?」
「そう。正確に言えば魔の森でもない」
俺は手短に、ここが人間の住んでいる地だということを教えた。少女は状況を理解できていないようで、口をぽかーんと開けて固まっている。
いや、流石に人間領と魔族領を間違えるって……どれだけ方向音痴なんだ。てか、方向音痴のレベルじゃないだろ。それにしてもよく、この弱さでここまでたどり着けたな。相当運がよかったのだろうか。よくわからないものである。
そういえばアイツら、無事に森から出られたかなぁ……どうでもいいけど。
「ここは人間領……魔族領じゃない。魔の森じゃない……ははは…………」
よほどショックだったのだろうか。少女は壊れたように乾いた笑いを漏らしていた。その姿はなんとも哀れである。慰めの言葉をかけるべきなのだろうか。否。俺はそんなことはしない。
だが、俺はどうしても少女に伝えるべきことがあるので、少女には悪いが、現実に戻ってきてもらうことにする。
「で、どうするつもりなんだ?」
「へ?」
「君はここに来るつもりで来たんじゃないんだろ? これから、どうするんだ?」
「あ……」
少女は今さら気づいたような顔をする。
当然、ここまで来たということは、その帰りもあるということである。しかし、この少女は意図して、ここに来たわけではない。そうなれば、自力で帰れるとは思えない。となると、彼女の口から出る言葉は……
「あのー……私を助けてくれませんか……?」
助けを乞うに決まっている。だが、相手は少女とはいえ、魔族の少女だ。いくら困っていようと、そう安々受けることはできない……
「んー、ま、いっか。どうせ暇だし」
なんて言うとでも思ったか! 当然、受けるに決まっているだろう! 可愛らしい少女が困っているんだ! ここで断れば、男の名が廃れるというものよ!
……というのは半分冗談で、ここで見捨てたら目覚めが悪くなる。それに今、俺はパーティーに追放されたが、冒険者を辞めたわけではない。
そもそも冒険者も俺がやりたいからなったわけじゃなく、元は国のお偉いさんたちが……(割愛)
つまり、俺には金があり、別に急いで冒険者家業をする必要はないのだ。金が少なくなったら働けばいいので、数年はのんびりとできる。要するに、今は暇なのだ。
ちょっとくらい時間を無駄に使ってもいいと、俺は少女の頼みを聞いたのだ。
「え? 助けてくれるの……?」
まさか受けてくれるとは思ってもいなかったのか、少女は呆気にとられたような顔をする。俺、今日だけでこの子のぽかーんとした顔を何回見ただろうか。結構見たと思うぞ?
「なんだ? どこかおかしいとこがあったか?」
「いや、だって私は……」
「別にそんなのはどうだってもいい。人間だとか魔族だとか。人間にもいい奴がいれば悪い奴もいる。それは魔族だって同じだ。生憎と俺は見た目だけで差別しないもんでね。そいつがいい奴か悪い奴かは俺が決める」
うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ――――ッ! なんか俺、格好いいこと言ったんじゃね!?
いい奴か悪い奴かは俺が決める(キリッ)って、なかなか決まっただろ! この子もきっと心の中で
『きゃぁ、格好いい……。なんて素敵な人なのかしら……』
みたいなことを思ってるに違いない! (妄想)
まぁ、俺の周りの人間どもは、ほとんどがクソどもしかいなかったが。
「えっと、あの、その……ありがとう」
返すべき言葉を考えた結果、シンプルに感謝の言葉が返ってきた。くっ! 裏があるわけでもない純粋な言葉! クソな人間どもの利益しか考えていない打算なものではない! うぅ、感動した……
「気にするな。困ったときはお互い様だろ?」
俺は考えていることを悟られないように冷静に答える。ここで考えていることがすべてが水の泡だ。まぁ、助けを求める相手がいないから、俺の考えがバレても問題なさそうだが。←(なお、自分は己の利益のために動いている模様。所詮は俺もクソどもの一員)
こうして俺は少女を魔族領に送り返すことになった。
「俺の名前はアベル。よろしくな」
「あっ、はい! 私はロザリアって言います」
ロザリアはよろしくと言いながら、俺に頭を少し下げた。
よし、少女の名前もわかったことだし、これから森を出る準備をしないとな。
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