追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

人……間…………?

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 森を出る前に、今日の夕食になるウインドウルフを処理しないといけない。早速、準備に取りかかるとするか。
 
 基本的に肉食の魔物はまずいのが多いが、ウインドウルフの味は高級肉といってもいい。焼いてそんまま食べたり、シチューみたいに煮込んだりしても美味い。
 だが、こうやって普通に遭遇するので、ウインドウルフ自体の値段は高くないが、市場に並ぶウインドウルフの値段は高い。それはなぜか。
 ウインドウルフの処理が非常に難しいからである。ウインドウルフは柔らかい肉の周りをナイフでもなかなか切れない堅い皮膚を持っている。だから、素人が解体を行えば、素材を駄目にするのは目に見える。
 だが、俺のようなプロ(自称)となれば、ウインドウルフの解体など……

「えぇ――ッ!? 嘘! ウインドウルフがこんなにも簡単に……」

 この通り。魔族であるロザリアでさえ驚くほどの技量を持っているということがわかってくれただろうか?
 ウインドウルフは普通に切れば、皮膚よりも先にナイフの方が駄目になってしまうが、関節付近――俺は脇の下からナイフを入れることによって、嘘のようにスルスルとナイフが通るようになる。
 ウインドウルフの皮膚は最初こそ切れにくいが、一度でも切り口を付けてしまえば、後は手で引くだけでも勝手に割けてくれる。魚でいったらカワハギウオみたいな感じか。この感覚が気持ちいいんだよなぁ……

 俺は手早く処理をしていく。その時間は約5分。プロ顔負けのスピードだ。
 皮を剥げた後は手頃な大きさに切っていくだけだ。内臓はさっと腹を切って取り出し、魔法で燃やしておく。そうでもしないと、匂いにつられて魔物が寄ってきてしまうからだ。
 切り終えたら、後は入れ物に入れるだけだ。俺は魔法袋マジックバックから袋を取り出し、肉を一つ一つ丁寧に包み込んで仕舞った。なぜかロザリアがギョッとした目で俺を見てくるが、なぜだかわからない。生肉を見たのが初めてだったのだろうか?

 俺の素晴らしい手際の良さで、魔物が来る前に処理することができた。俺は空に視線を向け、太陽の位置を確認する。うーん、今日中に森から出るのは厳しいか……?

「ロザリア。そろそろ行くぞ」

「えぇ、わかったわ」

 そもそもロザリアは何も持っておらず、準備など必要なかったのだが、念のため訊いておく。もしかしたら、お手洗いに行きたいかもしれないからな。うん、下心はないぞ?
 
 しばらくの間、俺たちは無言で森の中を歩いていた。うぅ、ここでコミュ障が出た。何を話せばいいんだ。
 
「ねぇ、アベルってさ……」

 おぉ、神よ。いや、女神だ。わざわざ自分から話を振ってくれるなんて……

「アベルの他に仲間っていないの」

「うぅ――ッ!」

 うぅ――ッ! そこでそれを訊いてくるか……少し声に出てしまったではないか。

「お、俺ほどの実力があったらソロでもいいんだよ」

「確かにアベルって人外じみてる……。アベルくらいの実力があったら、仲間なんて要らないよね!」

 ぐぅ――ッ! 痛いところをついてくる。ここで追い出されましたとか言えるわけがない。

「まさかパーティーで一人だけ仲間はずれにされたからとか――って、大丈夫!?」

 わざと!? わざとなの!? どうして俺の後ろめたいことばっかり指摘するの!? そろそろ泣くよ!?

 まぁ、そんな冗談はさておき、ロザリアが話しかけてきてくれたおかげで、俺はなんとか間の悪い空気を脱することができた。ほんと、ロザリア様々だな。

……ん? どうやら俺たちが話しているせいで魔物が寄ってきたようだな。魔力を感知したところ……一匹だけだな。それも雑魚だ。相手は隠れて俺たちの不意を突こうとしているが、魔力のせいで位置がバレバレだ。
 お? 魔力が濃くなってきた。そろそろ襲ってくるか?

「グルワァ――ッ!」

「うるさい」

「ギャインッ!」

 茂みの中から犬みたいな魔物が飛び出してきた。当然、ウインドウルフよりも小さい。
 そんな犬っころを俺は視線を向けずに裏拳をかます。もちろん、さっきのこともあって、威力は十分に抑えた。顔が吹っ飛ぶことはないだろう。
 犬っころは短い悲鳴を上げた。よかった。今度は木っ端微塵にならなかったようだ。
 ただ、手の感触的にそこまで売れそうな魔物ではないと判断する。まぁ、金になるだけありがたいか。俺は倒した獲物を処理しようと振り向くと……

「……あれ?」

 そこには何もいなかった。あれぇ? ちゃんと倒したはずなんだけどなぁ。
 疑問に思って隣を向くと、ロザリアが何やら呆れた顔をしていた。

「さっきの魔物、向こうに飛んでいったよ」

 えぇっ!? マジで!? あれだけ手加減したのに!?

 俺の考えていることがわかったのか、ロザリアは、はぁとため息をついて一言。

「あなた、本当に人間?」

 正真正銘、ただの人間です。ついでに、肉弾戦が少し得意な魔術師です。
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