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第1章 出会い
最初の街
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結局、犬っころのことは諦めて森を出ることを優先した。
それにしても、ロザリアはあれだけ弱かったから魔物が出てきた時点で驚くと思っていたが、平然としていた。
彼女曰く、自分はそこまで弱くないらしい。ロザリア自身も魔物の魔力を感知できていたらしく、そのおかげで驚かなかったと。
絶対嘘だろという視線を送ると、さっきはウインドウルフ以外にも魔物がいて、そいつらを倒していたら魔力が先に尽きてしまった。だから、逃げていたらしい。
ロザリアがあまりにも必死に言うもんだから、余計に嘘に聞こえる。もっと落ち着いたらいいのに。
「あっ! あれって出口よね!」
ロザリアが喜びの声を上げて、森の出口へと走っていった。
ふむ、こうしてみると、見た目だけ少女で中身は幼女じゃないかと思う。そもそも、人間と魔族の成長速度は同じなのか?
ロザリアは俺と同じ歳に見えるが、実際はもっと年下だったりするのだろうか。いや、それはないな。胸のことで因縁付けられたし。精神年齢は俺に近いのか?
「まぁ、どうでもいいか。……すっかり日が暮れたな……」
空を見上げると、すでに日は落ちており、無数の星が輝いている。その中でも他の星たちよりも一回り大きい月が俺たちを照らしていた。
森を抜けると、街を囲う砦が目に入る。ここが俺が目的地としていた都市レガリアだ。ん? なんで過去形だって? 追い出されたからだよ!
あのアホどもは森から出られたかな? どうせまだ森の中で迷ってそうだが、知ったこっちゃない。
しばらく歩くと、街の入り口付近にたどり着いた。
入り口には一本の――ちょうど馬車が一台くらい通れるくらいの幅がある橋が架けてある。その両端には二人の警備員らしき人が立っていた。
恐らく街に怪しい人物や危険な人物を入れないために改札の代わりをしているのだろう。
そんなことを暢気に考えていると、俺は重要なことに気づいた。
「ロザリア。角と翼は隠せるか?」
そう、今の俺は魔族の少女ロザリアを連れていたのだ。このまま門をくぐろうとすれば、ロザリアが捕らえられるのは避けられない。
「んー、無理」
少し考える素振りを見せて、ロザリアは答えた。まじか。隠せないのか。
「〈透明化〉」
ま、できるんですけどね(ドヤァ)。
俺は、さっとロザリアに手をかざし、魔法を唱える。すると、ロザリアの頭と背中から魔族の象徴である角と翼が消えた。
といっても、実際に消えたわけではなく、あくまで見えなくしただけだ。だから、実際に触ってみると感触はあったり、翼を使って空を飛べたりする。
まぁ、空を飛ぶくらい、一流の魔術師であればできることだから、飛んでも問題はないだろう。え? 俺? もちろんできますよ?
「一応、角と翼は隠しておいた。だが、なくなったわけではないから、誰かに触られたりするなよ?」
「え? うわっ! 本当だ! 見えないのに感覚はある……ホントにあなたって何者?」
ロザリアは振り向いて、見えなくなった翼を見て興奮する。驚いているようで何よりだ。魔術師はこんな風に驚かれたりするのが大好きだ。少なくとも俺はそう思っている。ついでに答えておく。俺はただの魔術師の人間です(二回目)。
とりあえず、これで街に入るための問題はクリアしたも同然だ。仮に許可書がなくて尋ねられても、俺にはこの(元)勇者パーティーの実績がある。巷では、俺のことは”孤独のアベル”なんて呼ばれていた。うっさいわ。
ついに俺たちは門の前に立つ。バレないか心配だ。ま、俺の魔法が破られるはずがないがな。もし魔力で悟られるようならば、魔力ごと変えてやる。そしたら魔族だとバレないだろう。
「許可書か身分証はあるか?」
「この子はちょっと訳ありで今手持ちにはないんだ。代わりに俺のだけでも大丈夫だろ?」
そう言って、俺は魔法袋から冒険証を取り出す。
冒険証は簡単に言えば身分証にあたるものだ。冒険者の身分証だと考えてもらっていい。そこには基本的な個人の情報の他に、個人のランク、所属パーティー、パーティーランクなどが書かれている。あっ、パーティー抜けたから書き換えないといけないな。
「あっ! 勇者パーティーの方でしたか! 遠いところお疲れ様です。あの、他のメンバーの方々は……」
「あぁ、ちょっとした問題があってな。パーティーを抜けることになった。事情は……まぁ、察してくれ」
そう言うと、警備員の男は気まずそうな顔を向ける。あぁ、察することが出来たということは、俺の二つ名を知ってるんだな。うぅ、悲しくなんかねぇし。
「もう大丈夫です。中でその子の身分証を作ってあげてくださいね」
「それなら心配ない。元からそのつもりだったからな」
「そうでしたか。では、レガリアへの入国を認めます」
国じゃねぇだろと思ったが、レガリアは国といっても差し違えないほど発展している。まさか独立宣言するつもりじゃないだろうな。別にどっちでもいいけど。
そして、俺たちは無事にレガリアに入ることができた。
それにしても、ロザリアはあれだけ弱かったから魔物が出てきた時点で驚くと思っていたが、平然としていた。
彼女曰く、自分はそこまで弱くないらしい。ロザリア自身も魔物の魔力を感知できていたらしく、そのおかげで驚かなかったと。
絶対嘘だろという視線を送ると、さっきはウインドウルフ以外にも魔物がいて、そいつらを倒していたら魔力が先に尽きてしまった。だから、逃げていたらしい。
ロザリアがあまりにも必死に言うもんだから、余計に嘘に聞こえる。もっと落ち着いたらいいのに。
「あっ! あれって出口よね!」
ロザリアが喜びの声を上げて、森の出口へと走っていった。
ふむ、こうしてみると、見た目だけ少女で中身は幼女じゃないかと思う。そもそも、人間と魔族の成長速度は同じなのか?
ロザリアは俺と同じ歳に見えるが、実際はもっと年下だったりするのだろうか。いや、それはないな。胸のことで因縁付けられたし。精神年齢は俺に近いのか?
「まぁ、どうでもいいか。……すっかり日が暮れたな……」
空を見上げると、すでに日は落ちており、無数の星が輝いている。その中でも他の星たちよりも一回り大きい月が俺たちを照らしていた。
森を抜けると、街を囲う砦が目に入る。ここが俺が目的地としていた都市レガリアだ。ん? なんで過去形だって? 追い出されたからだよ!
あのアホどもは森から出られたかな? どうせまだ森の中で迷ってそうだが、知ったこっちゃない。
しばらく歩くと、街の入り口付近にたどり着いた。
入り口には一本の――ちょうど馬車が一台くらい通れるくらいの幅がある橋が架けてある。その両端には二人の警備員らしき人が立っていた。
恐らく街に怪しい人物や危険な人物を入れないために改札の代わりをしているのだろう。
そんなことを暢気に考えていると、俺は重要なことに気づいた。
「ロザリア。角と翼は隠せるか?」
そう、今の俺は魔族の少女ロザリアを連れていたのだ。このまま門をくぐろうとすれば、ロザリアが捕らえられるのは避けられない。
「んー、無理」
少し考える素振りを見せて、ロザリアは答えた。まじか。隠せないのか。
「〈透明化〉」
ま、できるんですけどね(ドヤァ)。
俺は、さっとロザリアに手をかざし、魔法を唱える。すると、ロザリアの頭と背中から魔族の象徴である角と翼が消えた。
といっても、実際に消えたわけではなく、あくまで見えなくしただけだ。だから、実際に触ってみると感触はあったり、翼を使って空を飛べたりする。
まぁ、空を飛ぶくらい、一流の魔術師であればできることだから、飛んでも問題はないだろう。え? 俺? もちろんできますよ?
「一応、角と翼は隠しておいた。だが、なくなったわけではないから、誰かに触られたりするなよ?」
「え? うわっ! 本当だ! 見えないのに感覚はある……ホントにあなたって何者?」
ロザリアは振り向いて、見えなくなった翼を見て興奮する。驚いているようで何よりだ。魔術師はこんな風に驚かれたりするのが大好きだ。少なくとも俺はそう思っている。ついでに答えておく。俺はただの魔術師の人間です(二回目)。
とりあえず、これで街に入るための問題はクリアしたも同然だ。仮に許可書がなくて尋ねられても、俺にはこの(元)勇者パーティーの実績がある。巷では、俺のことは”孤独のアベル”なんて呼ばれていた。うっさいわ。
ついに俺たちは門の前に立つ。バレないか心配だ。ま、俺の魔法が破られるはずがないがな。もし魔力で悟られるようならば、魔力ごと変えてやる。そしたら魔族だとバレないだろう。
「許可書か身分証はあるか?」
「この子はちょっと訳ありで今手持ちにはないんだ。代わりに俺のだけでも大丈夫だろ?」
そう言って、俺は魔法袋から冒険証を取り出す。
冒険証は簡単に言えば身分証にあたるものだ。冒険者の身分証だと考えてもらっていい。そこには基本的な個人の情報の他に、個人のランク、所属パーティー、パーティーランクなどが書かれている。あっ、パーティー抜けたから書き換えないといけないな。
「あっ! 勇者パーティーの方でしたか! 遠いところお疲れ様です。あの、他のメンバーの方々は……」
「あぁ、ちょっとした問題があってな。パーティーを抜けることになった。事情は……まぁ、察してくれ」
そう言うと、警備員の男は気まずそうな顔を向ける。あぁ、察することが出来たということは、俺の二つ名を知ってるんだな。うぅ、悲しくなんかねぇし。
「もう大丈夫です。中でその子の身分証を作ってあげてくださいね」
「それなら心配ない。元からそのつもりだったからな」
「そうでしたか。では、レガリアへの入国を認めます」
国じゃねぇだろと思ったが、レガリアは国といっても差し違えないほど発展している。まさか独立宣言するつもりじゃないだろうな。別にどっちでもいいけど。
そして、俺たちは無事にレガリアに入ることができた。
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