追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

文字の大きさ
8 / 26
第1章 出会い

最初の街

しおりを挟む
 結局、犬っころのことは諦めて森を出ることを優先した。

 それにしても、ロザリアはあれだけ弱かったから魔物が出てきた時点で驚くと思っていたが、平然としていた。
 彼女曰く、自分はそこまで弱くないらしい。ロザリア自身も魔物の魔力を感知できていたらしく、そのおかげで驚かなかったと。
 絶対嘘だろという視線を送ると、さっきはウインドウルフ以外にも魔物がいて、そいつらを倒していたら魔力が先に尽きてしまった。だから、逃げていたらしい。
 ロザリアがあまりにも必死に言うもんだから、余計に嘘に聞こえる。もっと落ち着いたらいいのに。

「あっ! あれって出口よね!」

 ロザリアが喜びの声を上げて、森の出口へと走っていった。
 ふむ、こうしてみると、見た目だけ少女で中身は幼女じゃないかと思う。そもそも、人間と魔族の成長速度は同じなのか?
 ロザリアは俺と同じ歳に見えるが、実際はもっと年下だったりするのだろうか。いや、それはないな。胸のことで因縁付けられたし。精神年齢は俺に近いのか?

「まぁ、どうでもいいか。……すっかり日が暮れたな……」

 空を見上げると、すでに日は落ちており、無数の星が輝いている。その中でも他の星たちよりも一回り大きい月が俺たちを照らしていた。
 
 森を抜けると、街を囲う砦が目に入る。ここが俺が目的地としていた都市レガリアだ。ん? なんで過去形だって? 追い出されたからだよ!
 あのアホどもは森から出られたかな? どうせまだ森の中で迷ってそうだが、知ったこっちゃない。

 しばらく歩くと、街の入り口付近にたどり着いた。
 入り口には一本の――ちょうど馬車が一台くらい通れるくらいの幅がある橋が架けてある。その両端には二人の警備員らしき人が立っていた。
 恐らく街に怪しい人物や危険な人物を入れないために改札の代わりをしているのだろう。
 そんなことを暢気のんきに考えていると、俺は重要なことに気づいた。

「ロザリア。角と翼は隠せるか?」

 そう、今の俺は魔族の少女ロザリアを連れていたのだ。このまま門をくぐろうとすれば、ロザリアが捕らえられるのは避けられない。

「んー、無理」

 少し考える素振りを見せて、ロザリアは答えた。まじか。隠せないのか。

「〈透明化インビジブル〉」

 ま、できるんですけどね(ドヤァ)。

 俺は、さっとロザリアに手をかざし、魔法を唱える。すると、ロザリアの頭と背中から魔族の象徴である角と翼が消えた。
 といっても、実際に消えたわけではなく、あくまで見えなくしただけだ。だから、実際に触ってみると感触はあったり、翼を使って空を飛べたりする。
 まぁ、空を飛ぶくらい、一流の魔術師であればできることだから、飛んでも問題はないだろう。え? 俺? もちろんできますよ?

「一応、角と翼は隠しておいた。だが、なくなったわけではないから、誰かに触られたりするなよ?」

「え? うわっ! 本当だ! 見えないのに感覚はある……ホントにあなたって何者?」

 ロザリアは振り向いて、見えなくなった翼を見て興奮する。驚いているようで何よりだ。魔術師はこんな風に驚かれたりするのが大好きだ。少なくとも俺はそう思っている。ついでに答えておく。俺はただの魔術師の人間です(二回目)。
 とりあえず、これで街に入るための問題はクリアしたも同然だ。仮に許可書がなくて尋ねられても、俺にはこの(元)勇者パーティーの実績がある。ちまたでは、俺のことは”孤独ボッチのアベル”なんて呼ばれていた。うっさいわ。

 ついに俺たちは門の前に立つ。バレないか心配だ。ま、俺の魔法が破られるはずがないがな。もし魔力で悟られるようならば、魔力ごと変えてやる。そしたら魔族だとバレないだろう。

「許可書か身分証はあるか?」

「この子はちょっと訳ありで今手持ちにはないんだ。代わりに俺のだけでも大丈夫だろ?」

 そう言って、俺は魔法袋マジックバックから冒険証を取り出す。

 冒険証は簡単に言えば身分証にあたるものだ。冒険者の身分証だと考えてもらっていい。そこには基本的な個人の情報の他に、個人のランク、所属パーティー、パーティーランクなどが書かれている。あっ、パーティー抜けたから書き換えないといけないな。

「あっ! 勇者パーティーの方でしたか! 遠いところお疲れ様です。あの、他のメンバーの方々は……」

「あぁ、ちょっとした問題があってな。パーティーを抜けることになった。事情は……まぁ、察してくれ」

 そう言うと、警備員の男は気まずそうな顔を向ける。あぁ、察することが出来たということは、俺の二つ名を知ってるんだな。うぅ、悲しくなんかねぇし。

「もう大丈夫です。中でその子の身分証を作ってあげてくださいね」

「それなら心配ない。元からそのつもりだったからな」

「そうでしたか。では、レガリアへの入国を認めます」

 国じゃねぇだろと思ったが、レガリアは国といっても差し違えないほど発展している。まさか独立宣言するつもりじゃないだろうな。別にどっちでもいいけど。

 そして、俺たちは無事にレガリアに入ることができた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...