追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

アベル、敗北する

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「まずは宿を決めないとな」

「そうね。どこがいいかしら……」

「俺はウインドウルフを調理してくれるところがいいな。せっかくいい肉が手に入ったわけだし」

 レガリアに入った俺たちは最初に泊まれるところを探すことにした。
 見渡したところ、泊まるところはいろいろあった。伊達に国を名乗っているわけではないか。街の外からも俺たちのような冒険者がたくさん来るのだろう。
 一般客、貴族のような金持ちが泊まりそうなところ……いっぱいあるが、俺は冒険者向きの宿を探すことにした。





 数分後、俺たちはウインドウルフを調理してくれる宿を見つけた。

 外装はいかにも冒険者がやってきそうなところだが、造りが悪いというわけではない。冒険者特有の雰囲気があるのだ。口では説明しにくいがわかってくれるだろうか。
 
「すまない、宿を借りたいんだが……」

「はーい、少し待ってくださいね」

 そう言って中から出てきたのは俺より少し年上の若々しい女性だ。年齢は二十歳くらいか? もっと若いかもしれない。

「宿を借りたい。二人一部屋の場所は空いているか?」

「はい、空いてますよ。もしかして、そちらの方は彼女さんですか?」

 女性の言葉に俺は少し動揺してしまった。だが、なんとか耐えることができた。よくやった俺。
 しかし、ロザリアにそんな耐性はなかったらしく、顔を真っ赤にして「な、な、なあ――ッ!」と動揺していることがバレバレであった。

「いや、違――」

「もしよろしければ、うるさくしてもよい部屋にお連れしましょうか?」

「「ぶぶ――ッ!」」

 ついに我慢しきれなくなって、二人揃って吹き出してしまった。
 だってこの人、左手でわっかを作って、右手の人差し指でズボズボしてるんだぜ! 絶対確信犯だろ!
 幼女疑惑のあったロザリアだったが、この人のしていることが理解できていたため、幼女ではないと確信した。じゃあ、やっぱりと俺と変わらないくらい? って、そんなことどうでもいい!

「あ、あの! そんなことするつもりないんで、普通の部屋を用意してもらえますか!?」

「ふふふ、赤くなっちゃって。若いっていいわね」

 あなたも十分に若いでしょうが!

「ふふ、これ以上からかうと、あなたは大丈夫かもしれないけど、そこの子が危なそうだからやめておくわ。はい、これが部屋の鍵よ。部屋はこの階段を上がって、すぐ右のところにあるから」

「はい、わかりました……」

 いつの間にか、ため口で話してたのに敬語になっていた。くっ! 負けた! 年上って怖い! ……年上だよな?





 俺はシアさん(名前を訊いた)にウインドウルフの肉を渡し、二階にある自分たちの部屋に向かった。

「ふーん、思っていたよりしっかりしてるな……」

 部屋の中に入ってみると、俺の想像していたよりも綺麗だった。てっきり冒険者が来るような宿だったから、壁に穴が開いていたりしていたりと、そんなことを考えていたが、見事に期待を裏切られた。

「わぁ! お布団だぁ!」

 ここでロザリアの幼児化が入りました! 柔らかそうな羽毛布団を見つけたロザリアは布団を見つけるや否や、水に飛び込むような美しいフォームで布団に抱き着いた。

「ふぅ、なんか今日はいろいろあったな……」

 パーティー追放に魔族の少女。今日だけで無駄に濃厚な出来事を体験した俺は、布団に飛び込むというような真似はしなかったが、疲れた体を休めるためにベットに腰を下ろした。
 とりあえず、明日はギルドに行って、ロザリアの冒険証を発行してもらうのと、余ったウインドウルフの肉を売ることだな。冒険証を発行してもらったら、何か依頼を受けてみるか。
 実際のロザリアの実力を見ない限り、どこまで任したらいいかわからないからな。できれば自分の身を守れるくらいの実力はあってほしいのだが、今日の様子を見たか感じ、あまり期待はできないか。

「なぁ、ロザリア。明日、依頼を受けてみようと思うんだが、大丈夫か?」

「依頼? 別にいいけど。なんの依頼を受けるの?」

「ゴブリンとかオークあたりかなぁ。もっと強い魔物でもいいけど、ロザリアのランクがEだからな。これくらいしか受けられない」

「それって私の力試し? 言っとくけど、ゴブリン如き倒せるわよ?」

 まぁ、流石にゴブリンくらいは倒せるだろ。だが、ランクを上げるには通る道だ。面倒だが、一から順にやってもらうしかないな。多分、Cランクくらいなら二、三日あれば行けるんじゃないか?

「じゃあ明日、楽しみにしておくよ」

「ふふん! 任せない!」

 ロザリアは胸を張るように、その場に立ち上がった。

「ふえっ?」

 しかし、ロザリアは抱き着いていた布団の角を踏んでしまい、つまずいたような形になった。つまり、この先起こることは容易に想像できる。うん。こっちにコケて来た。
 バランスを失ったロザリアは俺の上に倒れこんだ。避けようと思えば避けれたが、俺は疲れていたので避けなかった。今、俺の上にロザリアが覆いかぶさるような形になった。例えるなら、男が女を襲う時のような――男女が逆になっているが。

「あ、ごめん……」

「ああ、別に大丈夫だ……」

 なんか気まずくなって二人して黙ってしまった。うぅ、こういう時、どうしたらいいんだ? 神様、助けてください。

「お二人さん、お食事ができました……あら、お邪魔してしまいましたか。すいません。お食事はいつでもいいので、ごゆっくり……」

「「いや! 違うから!」」

……神様、助けてくれとは言ったけど、これは違うと思うんですけど?
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