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第1章 出会い
初めての依頼
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「よし、この依頼を受けるか」
俺はロザリアでも受けることができる手ごろな依頼を手に取り、受付に向かった。
「ゴブリンの盗伐ですか。あの、彼女は初めてですけど大丈夫ですか?」
「心配は無用だ。いざとなれば俺が助けに入る」
「まぁ、アベルさんのレベルだったら大丈夫だと思いますが……てか、アベルさんの実力だったら、もっと上の依頼が受けれるでしょう!?」
「それだったらこいつが受けられないだろ? だから、パッパッとランクを上げるために少しでもレベルが高い任務を受けているんだ」
「ぐぬぬ……こうなったら、ギルドの権限でこの少女のランクを……」
実際にぐぬぬとか言う人、初めて聞いたぞ? それよりこの受付嬢、やばいこと言わなかったか?
「どうせ、アベルさんがいるんですし大丈夫でしょう。勇者パーティーの皆さんだってアベルがいなかったら、ただのCランクくらいの実力しかない人たちですし……」
おぅ、辛辣だなぁ。その評価は間違ってないけど。この受付嬢は俺の本当のランクを知っているのか?
「なあ? あんたって俺のランクを知っていたりする?」
「当然じゃないですか。だって、あなたはパーティーに加入する前、素性が一切知れない”魔剣使いとして――」
「おいっ! ちょっと黙ってろ!」
なんで俺の二つ名なんか知ってんだよ! あれって国のお偉いさんしか知らないはずなのに! 顔も隠してたし。この人、本当にただの受付嬢か!? 俺の情報知りすぎだろ!
俺は慌てて、受付嬢の口を押さえる。口をもごもごとしているが、気にしている場合ではない。チラッと周りを見ると、騒ぎにはなっていないようだった。ふぅ、危なかった。
「いきなり酷いですね。あなたがランクを知っているかって訊いてきたんですよ?」
「いや、あんな大きな声で言うことじゃないだろ……」
「すいません、空気が読めないんで」
ホントだよ。少しは反省して?
「でも、公言してもいいんじゃないですか? あなたのランクを知れば、すぐにパーティーを組めると思いますが?」
「もう勇者パーティーみたいな奴らの面倒を見るのは懲り懲りだ」
「あ、それもそうですね」
納得はやいなぁ。まぁ、勇者パーティーの弱さを知っていたわけだし、当然か。
「長いこと話したし、そろそろ行くわ」
「はい、頑張ってくださいね」
頑張るほどの任務じゃないんだがなぁ……。ま、気合いを入れていきますか。
「行くぞロザリア」
「もう、遅いわよ。どれだけ話してたと思ってるの?」
ロザリアはご立腹でした。
俺たちは街を出て、ゴブリンがいるという洞窟の近くまでやってきた。ふむ、数は四匹くらいか。本当に初心者向けの任務だな。
しかし、ゴブリンは弱いが、決して油断してはいけない敵だ。ゴブリンは単体では弱いが、集団になって襲われると、一気に危険度が増す。集団で拠点を作る人間のように。
最初にゴブリンを倒して調子に乗っているEランク冒険者が死亡する原因も、このような基本的なことを疎かにするからだ。どうせゴブリンだろ? 余裕余裕。こういった油断が死を招くのだ。ろくに準備をせずにゴブリンの巣に入ったとなれば、大抵は出てこられない。
だから、ゴブリンは初心者殺しの魔物と言われている。ま、俺はやられることはないからな。魔術師だし。その気になれば、周り一面を炎の海に変えることだって可能だ。仲間は死ぬけど。
「ロザリア、いけるか?」
「えぇ、四匹くらい、私の敵じゃないわ」
ゴブリンの数は把握しているようだ。あながち、自分が強いと言っているのは嘘ではないな。魔力の流れを感じ取ることができるというのは、並大抵のことではないからだ。これは少し期待してもいいだろう。
「俺はお前の後方からついていく。危なくなったら手を貸す」
「ふっ、いらない心配だわ」
あ、コイツ、鼻で笑いやがった。むかつく……鼻つまんでやろうか?
数分くらい歩くと、ゴブリンまでの距離は視界に映るほど近くになっていた。だが、ゴブリンはまだ俺たちに気づいておらず、仲間同士で仲良く話していた。
「本当にいけるか?」
「ふふん、見てなさい」
そう言って、ロザリアは談笑しているゴブリンたちに向けて、右手をかざした。すると、一瞬で濃い魔力の流れがロザリアを中心にして発生した。
へぇ、ロザリアも俺と同じ魔術師か。いや、魔族は誰でも魔法を使えたんだっけ? まぁ、そんなことはどうでもいいか。これならロザリアを後方にして、俺が前線に……
「燃え尽きなさい、有象無象。〈獄炎〉――ッ!」
「――は?」
おい、ちょっと待て! 今お前、何使った?
ロザリアが魔法を唱えたと同時に、ロザリアの右手から炎が放たれる。放たれた炎は距離が伸びるにつれ範囲が広くなり、ゴブリンがいる距離に達することには洞窟を丸々飲み込むような……って、実際に飲み込んでんだよ!
俺は慌ててロザリアの手を引いて、洞窟の出口に向かって全力で走った。
「お前はバカか!? なんで、こんな狭いところで最上級魔法なんて撃つんだよ!?」
「いや、だってアベルが私のことを弱いって言ったから……」
いや、言ったけどさ。限度ってものがあるだろ? こんな場所で撃ったら自分も巻き込まれるって、誰でもわかるでしょ?
「は? 自分の魔法に巻き込まれるわけないじゃない」
あ、コイツ。俺と同じ考え方をしてる。だから意外と気が合うんだな。
でもな。洞窟が崩れるのは魔法のせいであって魔法じゃないからな? このままだと俺ら、生き埋めになるからね?
俺はロザリアでも受けることができる手ごろな依頼を手に取り、受付に向かった。
「ゴブリンの盗伐ですか。あの、彼女は初めてですけど大丈夫ですか?」
「心配は無用だ。いざとなれば俺が助けに入る」
「まぁ、アベルさんのレベルだったら大丈夫だと思いますが……てか、アベルさんの実力だったら、もっと上の依頼が受けれるでしょう!?」
「それだったらこいつが受けられないだろ? だから、パッパッとランクを上げるために少しでもレベルが高い任務を受けているんだ」
「ぐぬぬ……こうなったら、ギルドの権限でこの少女のランクを……」
実際にぐぬぬとか言う人、初めて聞いたぞ? それよりこの受付嬢、やばいこと言わなかったか?
「どうせ、アベルさんがいるんですし大丈夫でしょう。勇者パーティーの皆さんだってアベルがいなかったら、ただのCランクくらいの実力しかない人たちですし……」
おぅ、辛辣だなぁ。その評価は間違ってないけど。この受付嬢は俺の本当のランクを知っているのか?
「なあ? あんたって俺のランクを知っていたりする?」
「当然じゃないですか。だって、あなたはパーティーに加入する前、素性が一切知れない”魔剣使いとして――」
「おいっ! ちょっと黙ってろ!」
なんで俺の二つ名なんか知ってんだよ! あれって国のお偉いさんしか知らないはずなのに! 顔も隠してたし。この人、本当にただの受付嬢か!? 俺の情報知りすぎだろ!
俺は慌てて、受付嬢の口を押さえる。口をもごもごとしているが、気にしている場合ではない。チラッと周りを見ると、騒ぎにはなっていないようだった。ふぅ、危なかった。
「いきなり酷いですね。あなたがランクを知っているかって訊いてきたんですよ?」
「いや、あんな大きな声で言うことじゃないだろ……」
「すいません、空気が読めないんで」
ホントだよ。少しは反省して?
「でも、公言してもいいんじゃないですか? あなたのランクを知れば、すぐにパーティーを組めると思いますが?」
「もう勇者パーティーみたいな奴らの面倒を見るのは懲り懲りだ」
「あ、それもそうですね」
納得はやいなぁ。まぁ、勇者パーティーの弱さを知っていたわけだし、当然か。
「長いこと話したし、そろそろ行くわ」
「はい、頑張ってくださいね」
頑張るほどの任務じゃないんだがなぁ……。ま、気合いを入れていきますか。
「行くぞロザリア」
「もう、遅いわよ。どれだけ話してたと思ってるの?」
ロザリアはご立腹でした。
俺たちは街を出て、ゴブリンがいるという洞窟の近くまでやってきた。ふむ、数は四匹くらいか。本当に初心者向けの任務だな。
しかし、ゴブリンは弱いが、決して油断してはいけない敵だ。ゴブリンは単体では弱いが、集団になって襲われると、一気に危険度が増す。集団で拠点を作る人間のように。
最初にゴブリンを倒して調子に乗っているEランク冒険者が死亡する原因も、このような基本的なことを疎かにするからだ。どうせゴブリンだろ? 余裕余裕。こういった油断が死を招くのだ。ろくに準備をせずにゴブリンの巣に入ったとなれば、大抵は出てこられない。
だから、ゴブリンは初心者殺しの魔物と言われている。ま、俺はやられることはないからな。魔術師だし。その気になれば、周り一面を炎の海に変えることだって可能だ。仲間は死ぬけど。
「ロザリア、いけるか?」
「えぇ、四匹くらい、私の敵じゃないわ」
ゴブリンの数は把握しているようだ。あながち、自分が強いと言っているのは嘘ではないな。魔力の流れを感じ取ることができるというのは、並大抵のことではないからだ。これは少し期待してもいいだろう。
「俺はお前の後方からついていく。危なくなったら手を貸す」
「ふっ、いらない心配だわ」
あ、コイツ、鼻で笑いやがった。むかつく……鼻つまんでやろうか?
数分くらい歩くと、ゴブリンまでの距離は視界に映るほど近くになっていた。だが、ゴブリンはまだ俺たちに気づいておらず、仲間同士で仲良く話していた。
「本当にいけるか?」
「ふふん、見てなさい」
そう言って、ロザリアは談笑しているゴブリンたちに向けて、右手をかざした。すると、一瞬で濃い魔力の流れがロザリアを中心にして発生した。
へぇ、ロザリアも俺と同じ魔術師か。いや、魔族は誰でも魔法を使えたんだっけ? まぁ、そんなことはどうでもいいか。これならロザリアを後方にして、俺が前線に……
「燃え尽きなさい、有象無象。〈獄炎〉――ッ!」
「――は?」
おい、ちょっと待て! 今お前、何使った?
ロザリアが魔法を唱えたと同時に、ロザリアの右手から炎が放たれる。放たれた炎は距離が伸びるにつれ範囲が広くなり、ゴブリンがいる距離に達することには洞窟を丸々飲み込むような……って、実際に飲み込んでんだよ!
俺は慌ててロザリアの手を引いて、洞窟の出口に向かって全力で走った。
「お前はバカか!? なんで、こんな狭いところで最上級魔法なんて撃つんだよ!?」
「いや、だってアベルが私のことを弱いって言ったから……」
いや、言ったけどさ。限度ってものがあるだろ? こんな場所で撃ったら自分も巻き込まれるって、誰でもわかるでしょ?
「は? 自分の魔法に巻き込まれるわけないじゃない」
あ、コイツ。俺と同じ考え方をしてる。だから意外と気が合うんだな。
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