追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

バカの次はアホ

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「はぁ、はぁ……助かった……うぇ、気持ち悪…………」

 俺は膝に手をつきながら、上がった息を整えようとしていた。くっ、魔物との戦いでも死の危険を感じたことがなかったのに、まさか味方ロザリアの手によって殺されそうになるとは……。今後は常識を教えるとともに、背後から撃たれないように気をつけないと。

「ふふん! 見た? 私の魔法? これが私の実力よ!」

 実力はわかったが、おつむの方が足りないな。勇者バカの次はロザリアアホか。先が思いやられる。

「はいはい、見た見た。実力があるのは認めるけどさぁ、あんな場所で最上級魔法なんか撃ったら、どうなるかわかるよな?」

 俺はため息交じりにロザリアに問いかける。

 ついでに、ロザリアが使った最上級魔法とは、魔術師が使う魔法の中で二番目にランクが高い魔法のことである。
 魔法にはランク分けがされており、下から順に初級魔法、下級魔法、中級魔法、上級魔法、最上級魔法、そして、すべての魔術師が目標とする神級魔法へと続く。ちなみにギルドのSランクに上がる条件が神級魔法の使用だったりする。

 ん? 俺? 当然使える(ドヤァ)……って自慢したいんだが、流石の俺でも二つしか使えない。その時点でSランクに上がれるが、どうだっていい。だって俺、もうSランクだし。あの受付嬢が勇者どもをクソクソ言っているのも、俺のランクを知っていたからであろう。
 だが、俺は面倒事が嫌いなため、ギルトではAランクの扱いになっている。平穏が一番だよ。

 まぁ、そんな最上級魔法を軽々と放ったロザリアだが、彼女は息切れせずにピンピンしている。当たり前だ。途中から俺が担いできたからな。
 え? 女の子の扱いを知らないんじゃなかったのかって? ふん、知らないさ。でもな、ロザリアはなんて言うか。近所の子供みたいな感じなんだ。だから、緊張という言葉は消えてしまった。なんなら、今なら一緒にお風呂にも入れる気がする。
……すいません、嘘です。流石にそんな勇気ありません。

 ロザリアの様子を見るに、まだまだ余力はありそうだ。正直、勇者パーティーの誰よりも強い。流石、魔族というだけあるな。戦闘面では遙かに人間を超えている。ま、俺の方が強いがな(ここ重要)。

 依頼が終わったことだし、ギルドへ戻ろうかと思ったところで、俺は重要なことに気づいてしまった。

「……なぁ、ロザリア?」

「なぁに? アベル?」

 俺に実力を見せつけられて嬉しかったのか、ロザリアはニコニコして返事をする。

「お前、全力で魔法を撃ったよな?」

「うん、だって私の実力が知りたかったんでしょ? もしかして怒ってる?」

「いや、別にそこまで怒ってない。ただ、俺が言いたいのはなぁ、火属性の魔法を使ったよな?」

「うん、あれ以外には闇属性しか使えないし。それがどうしたの?」

 そろそろ気づいて欲しい、ロザリア君。

「で、跡形もなく消し去ったよな?」

「うん。だって、ゴブリン討伐が依頼だったんでしょ。別に問題なくない?」

 まだわからないか。次で答えを言ってしまうぞ?

「依頼っていうのはな、達成した証拠に魔物の一部をギルドに持っていく必要があるんだ。口だけでは、いくらでもできたと言えるからな」

「ええっと、じゃあ、つまり……」

 ロザリアの額からうっすらと、一筋の汗が流れる。ようやく理解したようだな。

「……依頼失敗だ」

「うそだああああぁぁぁぁ――ッ!」

 これから、ギルドのルールについても教えないといけないな。





「ゴブリン討伐の依頼が失敗……ぷぷっ、Sランクのアベルさんが失敗するなんて。世の中、わからないものですねぇ」

 ギルドに戻った後、依頼結果を例の受付嬢に伝えると、なんか笑われた。いやまぁ、わかるけどさぁ。これは俺のせいじゃなくない? だって、ロザリアが最上級魔法を使えると思わないじゃん。ウインドウルフに負けかけてた奴だぞ? 俺じゃなくても無理だろ。

「今まで依頼達成率100パーセントのアベルさんが初めて失敗した任務がゴブリン討伐……いいネタができました!」

 頼むから広めないで欲しい……ってか、俺って依頼達成率100パーセントだったの? 初耳なんだが?

「依頼が失敗したので、罰金として契約金をもらいますね。……ふふっ、次、頑張ってくださいね。ハハッ」

 いつまで笑ってるんだ、このあま。顔面殴るぞ。俺が殴ったら跡形もなく消えるからな(経験済み)。

 このままだと、マジで殴ってしまいそうだったので、俺は受付から離れて、ロザリアと合流する。

「さて、ロザリア君。言いたいことはあるかね?」

「ええっと……なんかすいません」

 別に謝罪は要らないんだが。まぁ、本人も悪いと思っているようだし……

「じゃあ、帰ってからギルドについての勉強をするか」

「え? 嫌なんだけど?」

 いや、俺もまたやらかされるの嫌なんだが。

「次はちゃんとするから。ね?」

 上目遣いで可愛らしく取り繕っても、俺の前では無力だ(めっちゃドキドキしてます)。そんなことをしても、俺の守りを崩すことはできないぞ? (やべぇ、許しそう)

「駄目だ。俺がのんびりできない」

 自分の欲求の方が上でした。

「嫌だああああぁぁぁぁ――ッ!」

 俺は今日二度目の絶叫を放つロザリアを引っ張って、ギルドを後にした。





 次の日、ロザリアがやつれた表情で宿から出てきたのでした。
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