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二章 《林間合宿編》
ロリっ子登場!?モブキャラBは妹キャラ
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班わけも無事に終わり、次の日にはそれぞれの役職に分かれ当日の動き等の情報を担当の先生から教わる。私の班はというと最悪な事に乙女ゲー関係者の中に放り込まれた。班わけ後に貼りだされた班表にはヒロインを含む鳳梨 グアバ・梅木 ライチ・桜桃 凌牙・国光 林檎・小堺 瓜がB班だとすると、先行を行く残りの柿本 蜜柑・木通 檸檬・桜桃 小豆・棗 杏子のA班に入れられたのだ。
あと一年のしらな……なんだっけ?
一度見た貼り紙に書かれていた同じ班の一年の生徒の名前を思い出そうとしたが、全くもって浮上してこなかった。
ま、いずれ会うだろうしいっか
悩んだ末、私は思い出す事を放棄した。
とりあえず、今は役職の教室に行かないと…
名前の横に書かれていた私の役職名は『寝具・清掃』係だ。主に、皆の寝具を取りに行ったり毎朝の清掃チェックである。
確か、教室は特進クラス二階の二の一だっけ?早く行かないと……ん?
二階へと続く階段を上り辺りを見渡しているとすぐ側にある一年の教室内で一人の女子生徒を囲む数人の女子生徒達がいた。
もしかして、これは世に言う…カツアゲ?いや、拷問?とにかく、関わっていい事なんてないな
転生前の”虐められない程度に平凡に”の為にここは関わらずに素通りする事にした。
この先を真っ直ぐいけば二年の教室が…
ドンッ!!!
「いい加減何か言いなさいよっ!」
勢いよくロッカーを蹴る音と共に聞こえた怒鳴り声につい足を止めてしまった。
今の時間って皆まだ授業中の人が多いからこんな現場気づく人なんて早々いないだろうな…
なんて、冷静に脳裏に過ぎったがそう思うのは関わりたくなくても多分気にしている自分がいるからだろう。だが、そんな心配めいた考えは直ぐに打ち砕かれた。
「…あの、さっきから何を言っているのですか?興奮めいたお猿さん方…?」
「なっ…誰が猿よ!?このぶりっ子!」
何をやっているんだ?相手を逆上させてどうするよ
余りにも逆撫でする言葉を発する女子生徒に思わず気になって身を屈めながら窓越しにこっそり覗くと、取り囲まれているのにも関わらずニコニコ笑顔で大きなクマのぬいぐるみを抱き締める翡翠色のボブヘア少女がいた。自身とさほど変わらない程の小柄ながら銀色の瞳と真っ白な肌はまるで小さなドール人形のようだった。
「ふふっ、そういう所がお猿さんだと言っているのですよ」
「この…っ!」
「待ってっ!?まだ言わなきゃいけない事あるじゃん!」
「そうだった…ふぅ……あんたずっと林檎くんの傍にいて目障りなのよ!早く皆の林檎くんから離れなさい」
うわぁ…きたよ、イケメンによる取り合い・嫉妬。ただ、イケメンの傍に居るだけで周りの女子から嫉妬され罵声を浴びさせ虐めるという女子あるあるだ
普通ならその場から逃げ出そうとするか怖くて震えるとか泣いちゃうとかあるのだろうけど、彼女は全くもってその様子はなく不思議そうに首を傾げる。
「あの、本当にさっきから何を言っているのですか?林檎くんなんて知らないし、もし一緒にいたのなら私は彼に微塵も関心が湧かないので勘違いもはなはなしいです。それに、彼も私の事なんて気にも止めないと思います」
「黙れっ!このぶりっ子!あんたが誘惑してる事なんてこっちは知ってんだよ!」
「それは何処の情報ですか?もしかして、女子同士の空想で作られた盛り話でしょうか?ふふっ、そんなガセに踊らされるなんて低知能にも程がありますね。さすが、お猿さんです!」
パチパチパチと胸の前で拍手を送る少女に猿と呼ばれた女子生徒達は更に逆上した。
「さっきから猿猿って……他の方法で分からせないと駄目みたいね」
「そうね、早くやっちゃお…っ!」
「ぶりっ子風情が、目障りだわ」
やばい…っ!?これは最終手段に出る気だ
彼女達の目の色が変わり危機を察した私は無意識にある行動に出てしまった。
…バァンッ!!!
「ひっ…!?な、何…っ」
勢いよくすぐ側のドアを開け階段側に向かって叫ぶ。
「先生~!ここで誰か揉めてますっ!!」
「やばっ!?」
「早く逃げよ…っ!」
嘘の言葉に慌てて逆のドアから逃げていく女子生徒達を見送ると一人残された女子生徒へと近づく。
「…大丈夫?」
後退りしたせいか床に座り込んでいる女子生徒の銀色の瞳を覗き込むと何故か頬を赤く染られた。
「怪我は…なさそうだね」
翡翠色のボブヘアからリボン付きの上靴を見つめ怪我がないのを確認し立ち上がる。
「じゃあ、私はこれで…」
叫び声をあげた為人が来ないとも限らないので早々に立ち去ろうとすると小さな手が繋ぎ止められた。
「ま、待って下さい…っ!あ、あの…」
しどろもどろな声に振り返ると真っ赤になりながら言葉が繋げられた。
「お、お名前は…?」
上目遣いで可愛らしく問いかける彼女にどう答えようか迷ったが、もう関わる事もないだろうし素直に答える事にした。
「…星野 桃」
「っ……た、助けてくれてありがとうございました!!」
深く頭を下げお礼を言う彼女に首を横に振る。
「お礼なんていらない。見過ごせなかっただけだから」
「で、でも…」
「じゃ、バイバイ」
彼女が再度言葉を出すのを遮り急ぐようにその場を後にした。
*
「…確か、この辺から聞こえたよな?」
班の役職により副班長になった桜桃 凌牙は、副班長が集まる特進クラス五階の情報室へと向かっていた。だが、二階の階段を登っていた折に聞き覚えのある女子生徒の叫び声が聞こえ慌てて二階に上がったのだ。
…ん?何かあったのか?
階段のすぐ側にある一年の教室に一人座り込んでいる女子生徒を見つめ不思議に思い近付いてみると、何故か頬を染めたまま呆然と固まっていた。
「おい、何かあったのか?」
余りにも不自然な女子生徒の様子に声を掛けるとそれに我に返ったのか勢いよく飛びついてきた。
「うおっ!?」
「どうしましょ!?どうしましょ!?私、私…っ」
「うぐっ…離せ!」
グルングルンと肩を掴んだまま揺らす女子生徒に必死に引き剥がす。
「見つけてしまったんですよ!」
「は?」
「だから!私の王子様ですよっ!!」
コイツハ、ナニヲイッテイルンダ…?
ついカタコトになる程に意味不明な発言をする女子生徒に思考が固まった。
「こうしてはいられません…っ!早くお姉様を…」
引き剥がすまでもなく思考が固まった隙に女子生徒は慌てて駆け出していったのだった。
数分後、我に返り当初の目的である情報室へと足を向けレク係が集まる三階天文室まで来ていた。
はぁ…変な奴に絡まれたな
先程の出来事に頭を抱えながら歩いていると背後から鈴のような可愛らしい声が響いた。
「あっ!?りょ~くん!み~つけっ!」
「離せ」
勢いよく飛びついてきた苺を振り外すと反抗とばかりに不満を漏らす。
「うぅ…昨日の夜ずっと待ってたんだよっ!」
頬を膨らませ涙目のまま見上げる苺に内心一瞬怯みつつも腕を引っ張り引き寄せる。
「ひゃっ…!?りょ…」
「…そんなに来て欲しいならもっと俺を欲しろ」
「っ…」
綺麗な唇を謎り直ぐに突き放し振り向く事もなくその場を立ち去った。
「……そんなだから駄目なんだよ、りょ~くん…?」
立ち去っていく凌牙の後ろ姿を見ながら苺は小さな声で呟いた。
あと一年のしらな……なんだっけ?
一度見た貼り紙に書かれていた同じ班の一年の生徒の名前を思い出そうとしたが、全くもって浮上してこなかった。
ま、いずれ会うだろうしいっか
悩んだ末、私は思い出す事を放棄した。
とりあえず、今は役職の教室に行かないと…
名前の横に書かれていた私の役職名は『寝具・清掃』係だ。主に、皆の寝具を取りに行ったり毎朝の清掃チェックである。
確か、教室は特進クラス二階の二の一だっけ?早く行かないと……ん?
二階へと続く階段を上り辺りを見渡しているとすぐ側にある一年の教室内で一人の女子生徒を囲む数人の女子生徒達がいた。
もしかして、これは世に言う…カツアゲ?いや、拷問?とにかく、関わっていい事なんてないな
転生前の”虐められない程度に平凡に”の為にここは関わらずに素通りする事にした。
この先を真っ直ぐいけば二年の教室が…
ドンッ!!!
「いい加減何か言いなさいよっ!」
勢いよくロッカーを蹴る音と共に聞こえた怒鳴り声につい足を止めてしまった。
今の時間って皆まだ授業中の人が多いからこんな現場気づく人なんて早々いないだろうな…
なんて、冷静に脳裏に過ぎったがそう思うのは関わりたくなくても多分気にしている自分がいるからだろう。だが、そんな心配めいた考えは直ぐに打ち砕かれた。
「…あの、さっきから何を言っているのですか?興奮めいたお猿さん方…?」
「なっ…誰が猿よ!?このぶりっ子!」
何をやっているんだ?相手を逆上させてどうするよ
余りにも逆撫でする言葉を発する女子生徒に思わず気になって身を屈めながら窓越しにこっそり覗くと、取り囲まれているのにも関わらずニコニコ笑顔で大きなクマのぬいぐるみを抱き締める翡翠色のボブヘア少女がいた。自身とさほど変わらない程の小柄ながら銀色の瞳と真っ白な肌はまるで小さなドール人形のようだった。
「ふふっ、そういう所がお猿さんだと言っているのですよ」
「この…っ!」
「待ってっ!?まだ言わなきゃいけない事あるじゃん!」
「そうだった…ふぅ……あんたずっと林檎くんの傍にいて目障りなのよ!早く皆の林檎くんから離れなさい」
うわぁ…きたよ、イケメンによる取り合い・嫉妬。ただ、イケメンの傍に居るだけで周りの女子から嫉妬され罵声を浴びさせ虐めるという女子あるあるだ
普通ならその場から逃げ出そうとするか怖くて震えるとか泣いちゃうとかあるのだろうけど、彼女は全くもってその様子はなく不思議そうに首を傾げる。
「あの、本当にさっきから何を言っているのですか?林檎くんなんて知らないし、もし一緒にいたのなら私は彼に微塵も関心が湧かないので勘違いもはなはなしいです。それに、彼も私の事なんて気にも止めないと思います」
「黙れっ!このぶりっ子!あんたが誘惑してる事なんてこっちは知ってんだよ!」
「それは何処の情報ですか?もしかして、女子同士の空想で作られた盛り話でしょうか?ふふっ、そんなガセに踊らされるなんて低知能にも程がありますね。さすが、お猿さんです!」
パチパチパチと胸の前で拍手を送る少女に猿と呼ばれた女子生徒達は更に逆上した。
「さっきから猿猿って……他の方法で分からせないと駄目みたいね」
「そうね、早くやっちゃお…っ!」
「ぶりっ子風情が、目障りだわ」
やばい…っ!?これは最終手段に出る気だ
彼女達の目の色が変わり危機を察した私は無意識にある行動に出てしまった。
…バァンッ!!!
「ひっ…!?な、何…っ」
勢いよくすぐ側のドアを開け階段側に向かって叫ぶ。
「先生~!ここで誰か揉めてますっ!!」
「やばっ!?」
「早く逃げよ…っ!」
嘘の言葉に慌てて逆のドアから逃げていく女子生徒達を見送ると一人残された女子生徒へと近づく。
「…大丈夫?」
後退りしたせいか床に座り込んでいる女子生徒の銀色の瞳を覗き込むと何故か頬を赤く染られた。
「怪我は…なさそうだね」
翡翠色のボブヘアからリボン付きの上靴を見つめ怪我がないのを確認し立ち上がる。
「じゃあ、私はこれで…」
叫び声をあげた為人が来ないとも限らないので早々に立ち去ろうとすると小さな手が繋ぎ止められた。
「ま、待って下さい…っ!あ、あの…」
しどろもどろな声に振り返ると真っ赤になりながら言葉が繋げられた。
「お、お名前は…?」
上目遣いで可愛らしく問いかける彼女にどう答えようか迷ったが、もう関わる事もないだろうし素直に答える事にした。
「…星野 桃」
「っ……た、助けてくれてありがとうございました!!」
深く頭を下げお礼を言う彼女に首を横に振る。
「お礼なんていらない。見過ごせなかっただけだから」
「で、でも…」
「じゃ、バイバイ」
彼女が再度言葉を出すのを遮り急ぐようにその場を後にした。
*
「…確か、この辺から聞こえたよな?」
班の役職により副班長になった桜桃 凌牙は、副班長が集まる特進クラス五階の情報室へと向かっていた。だが、二階の階段を登っていた折に聞き覚えのある女子生徒の叫び声が聞こえ慌てて二階に上がったのだ。
…ん?何かあったのか?
階段のすぐ側にある一年の教室に一人座り込んでいる女子生徒を見つめ不思議に思い近付いてみると、何故か頬を染めたまま呆然と固まっていた。
「おい、何かあったのか?」
余りにも不自然な女子生徒の様子に声を掛けるとそれに我に返ったのか勢いよく飛びついてきた。
「うおっ!?」
「どうしましょ!?どうしましょ!?私、私…っ」
「うぐっ…離せ!」
グルングルンと肩を掴んだまま揺らす女子生徒に必死に引き剥がす。
「見つけてしまったんですよ!」
「は?」
「だから!私の王子様ですよっ!!」
コイツハ、ナニヲイッテイルンダ…?
ついカタコトになる程に意味不明な発言をする女子生徒に思考が固まった。
「こうしてはいられません…っ!早くお姉様を…」
引き剥がすまでもなく思考が固まった隙に女子生徒は慌てて駆け出していったのだった。
数分後、我に返り当初の目的である情報室へと足を向けレク係が集まる三階天文室まで来ていた。
はぁ…変な奴に絡まれたな
先程の出来事に頭を抱えながら歩いていると背後から鈴のような可愛らしい声が響いた。
「あっ!?りょ~くん!み~つけっ!」
「離せ」
勢いよく飛びついてきた苺を振り外すと反抗とばかりに不満を漏らす。
「うぅ…昨日の夜ずっと待ってたんだよっ!」
頬を膨らませ涙目のまま見上げる苺に内心一瞬怯みつつも腕を引っ張り引き寄せる。
「ひゃっ…!?りょ…」
「…そんなに来て欲しいならもっと俺を欲しろ」
「っ…」
綺麗な唇を謎り直ぐに突き放し振り向く事もなくその場を立ち去った。
「……そんなだから駄目なんだよ、りょ~くん…?」
立ち去っていく凌牙の後ろ姿を見ながら苺は小さな声で呟いた。
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