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二章 《林間合宿編》
壊れた世界に小さな花を
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それは突然俺の世界を壊した…‥‥‥
「早く戻らないとあのアホが風邪でも引いたら俺が困る」
びしょ濡れ状態で待っている桃の姿を想像しながら鳳梨グアバの足は自然と早足で歩いていた。
「元はと言えば俺があいつをボートの練習に付き合わせたのがきっかけなんだよなぁ…‥」
元凶とも言える自分自身の言動や行動に薄々…否、かなり負い目を感じているとふと桃が待つ場所の近くで話し声が聞こえてきた。
こんな夜更けに一体誰が…‥‥
「っ…‥」
そこに居たのはこの世で一番恋焦がれている星七 苺と同じ生徒会メンバーの桜桃 凌牙の姿だった。そして、追い討ちをかけるかのように苺が凌牙にキスをした。
バサッ…‥
思わずタオルが落ち体も心も硬直し俺の中で時が止まった。
な…‥なんで…‥‥
ドンッ!!!
「いっ…‥!?」
硬直した中での突然の衝撃に驚き片目を開けると俺の口を塞ぎ覆い被さる星野 桃がいた。
「しっ!少し静かに大人しくして…っ!」
何でこいつが!?…ってそれよりこれは…‥‥‥ち、近すぎるっ!!!
覆い被さる事により絡む足や柔らかい体の感触、そして至近距離にある顔に全身が真っ赤に染まるのを感じた。
「…何か音がしなかったか?」
キスされたのにも関わらず冷静な言葉を発する凌牙の声が聞こえ思わず体が強ばるもののそれと同時に絡まる桃の体が更に絡まるのを感じ何も考えられなくなる。
「そんな事より!りょんくん………少しはアメちょうだい?」
潤んだ瞳に上目遣いを重ね自分には向けられた事のない甘えるような声に心中で何かがチクッと刺さる。
「苺………」
苺の名を呼ぶ凌牙の声にこの先紡言葉を聞きたくない気持ちでいっぱいになった。
これ以上聞きたくない……もうこの場からいなくなりた‥
「と‥りゃっ…!」
は?
バサッ……
覆い被さったまま何かを苺達とは逆の方に投げた桃の行動に思考がフリーズした。
「チッ…誰か来たみたいだな」
「嘘!?この場所あんまり人来ないはずなのに」
「とにかく早くこの場から離れるぞ!見つかったらお互いやばいだろ?」
「う、うん」
慌ててこの場から離れていく二人の足音が聞こえると立ち上がった桃が手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「あ、ああ…」
状況が追いつかないせいで呆気にとられながらも差し出された手を取り起き上がる。
「一体何をしたんだ?」
「石を投げた」
「は?」
「だから、石を投げた」
「いや、だから何の為にだ!?」
真顔で石を投げたなどと言う桃の発言につい問い詰めてしまった。
「その場にあったのが石しかなかったし遠くで音がすれば誰かいるじゃなくて来たってなるかなって。それで、二人が見つからないようにその場から居なくなる可能性にかけた感じですかね」
「なるほど」
「まぁ、全部会長の為にやった事ですけど」
「俺の為…?」
「だって、会長顔に出てましたよ?早くこの場から離れたいって」
「っ…」
だからって石投げてまでやるか普通
「じゃあ、説明も終わった事だし私達も早く帰りますよ。二人揃って風邪なんてごめんなので」
「…待て」
「かいちょ…‥…何してるんですか?」
これは流れに任せただけなのかもしれない。だけど、今はこうしたくなったのだ…
先を歩く桃に手を伸ばし衝動に任せるがままに小さな濡れた体を抱き締めた。一瞬、震えた様に感じた小さな体から直ぐに冷静な声が聞こえ苦笑いがこぼれる。
「フッ……こんな状況でも貴様は冷静なのだな」
「特に動揺する事でもないので」
嘘つけ……震えてるくせに
「……………ありがとう、桃」
「はぁ~……ほんとこれだから…」
桃は抱き締めている腕をゆっくり外すと振り向き手を伸ばすやいなや袖で口元を拭い始めた。
「なっ…にする…‥んだ‥っ!?」
「よし!これで事故のキスもなし。ファーストキスも抱き締める事も甘い台詞も全部星七さんにしてあげて下さい。じゃなきゃ一生実るものも実りませんよ!」
「いや、でもさっきの見ただろ?苺は俺の事なんか……」
バシッ!
「むっ!?」
「グダグダ言わない!この程度で諦めるつもりですか?会長の星七さんに対する気持ちはこの程度なんですか?この弱虫ヘタレ男!!」
背伸びしながら頬を挟んだまま言う桃の言葉に涙が溢れてきた。
「諦め……たくない」
「ならその涙止めて弱音吐かない!いいですね?」
「……うん」
素直に頷く俺に対し呆れ顔で笑みを零す桃が先程震えていたのが嘘みたいに強く凛々しく見えたのだった。
*
深夜零時を回り既に深夜三時という頃、一人の女子生徒がログハウスの外にあるパイプ椅子に座っていた。
「…眠れない」
満天の星空を眺めながらただただ星野 桃こと私は目が冴えていた。
「ココナのいびきのせいか、もしくはさっきの出来事のせいか…」
先程の湖で起きた通称”スワン事件”(桃が名付けた)での出来事を思い返す度後悔に苛まれる。
「アァァァァァァッ!!!やらかした!鳳梨グアバの練習何か手伝うんじゃなかった!湖に溺れかけるわ!事故でキスしてしまうわ!ヒロインと桜桃凌牙のラブシーンに出くわすわ!長引き過ぎて風邪ひきそうになるわ!最悪すぎるっ!そりゃあ、鳳梨グアバがヒロインとの恋を諦めないように背中おせたのは良かったと思うけど…自身に受ける被害が大きすぎる」
最初から最後まで思い返してみても体張ってるなぁ…私という感想しか出てこなかった。
「それにヒロインと桜桃凌牙を目撃した時なんか色んな意味で冷や汗しかなかったし…」
「何が冷や汗なんだ?」
へ?
突然聞こえた聞き返す声に私は冷や汗ならぬ謎の汗が全身から流れた。
え?え?この時間生徒も教師も皆寝てるはず……いやいやいや、早まるな私!ここで振り返ったら少なからず否、絶対最悪な状況になる間違いないってなるわ
振り向きかけた体を一瞬冷静になり振り向かずに相手の動向を伺う。
「湖に居たよな?星野 桃」
ギクッ!!!
やばいやばいやばいっ!!!
その瞬間私は悟った。背後にいる声の主は間違いなく攻略対象者の一人だと。
もはやこの状況に振り向かずとも逃げ場など無い。そう腹にくくるなり私は恐る恐る振り向くとTシャツとジャージの姿にお風呂かシャワーをしてきた後なのか少し濡れた髪を無造作に乱された桜桃 凌牙の姿あった。
やばすぎる‥っ!!!
「早く戻らないとあのアホが風邪でも引いたら俺が困る」
びしょ濡れ状態で待っている桃の姿を想像しながら鳳梨グアバの足は自然と早足で歩いていた。
「元はと言えば俺があいつをボートの練習に付き合わせたのがきっかけなんだよなぁ…‥」
元凶とも言える自分自身の言動や行動に薄々…否、かなり負い目を感じているとふと桃が待つ場所の近くで話し声が聞こえてきた。
こんな夜更けに一体誰が…‥‥
「っ…‥」
そこに居たのはこの世で一番恋焦がれている星七 苺と同じ生徒会メンバーの桜桃 凌牙の姿だった。そして、追い討ちをかけるかのように苺が凌牙にキスをした。
バサッ…‥
思わずタオルが落ち体も心も硬直し俺の中で時が止まった。
な…‥なんで…‥‥
ドンッ!!!
「いっ…‥!?」
硬直した中での突然の衝撃に驚き片目を開けると俺の口を塞ぎ覆い被さる星野 桃がいた。
「しっ!少し静かに大人しくして…っ!」
何でこいつが!?…ってそれよりこれは…‥‥‥ち、近すぎるっ!!!
覆い被さる事により絡む足や柔らかい体の感触、そして至近距離にある顔に全身が真っ赤に染まるのを感じた。
「…何か音がしなかったか?」
キスされたのにも関わらず冷静な言葉を発する凌牙の声が聞こえ思わず体が強ばるもののそれと同時に絡まる桃の体が更に絡まるのを感じ何も考えられなくなる。
「そんな事より!りょんくん………少しはアメちょうだい?」
潤んだ瞳に上目遣いを重ね自分には向けられた事のない甘えるような声に心中で何かがチクッと刺さる。
「苺………」
苺の名を呼ぶ凌牙の声にこの先紡言葉を聞きたくない気持ちでいっぱいになった。
これ以上聞きたくない……もうこの場からいなくなりた‥
「と‥りゃっ…!」
は?
バサッ……
覆い被さったまま何かを苺達とは逆の方に投げた桃の行動に思考がフリーズした。
「チッ…誰か来たみたいだな」
「嘘!?この場所あんまり人来ないはずなのに」
「とにかく早くこの場から離れるぞ!見つかったらお互いやばいだろ?」
「う、うん」
慌ててこの場から離れていく二人の足音が聞こえると立ち上がった桃が手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「あ、ああ…」
状況が追いつかないせいで呆気にとられながらも差し出された手を取り起き上がる。
「一体何をしたんだ?」
「石を投げた」
「は?」
「だから、石を投げた」
「いや、だから何の為にだ!?」
真顔で石を投げたなどと言う桃の発言につい問い詰めてしまった。
「その場にあったのが石しかなかったし遠くで音がすれば誰かいるじゃなくて来たってなるかなって。それで、二人が見つからないようにその場から居なくなる可能性にかけた感じですかね」
「なるほど」
「まぁ、全部会長の為にやった事ですけど」
「俺の為…?」
「だって、会長顔に出てましたよ?早くこの場から離れたいって」
「っ…」
だからって石投げてまでやるか普通
「じゃあ、説明も終わった事だし私達も早く帰りますよ。二人揃って風邪なんてごめんなので」
「…待て」
「かいちょ…‥…何してるんですか?」
これは流れに任せただけなのかもしれない。だけど、今はこうしたくなったのだ…
先を歩く桃に手を伸ばし衝動に任せるがままに小さな濡れた体を抱き締めた。一瞬、震えた様に感じた小さな体から直ぐに冷静な声が聞こえ苦笑いがこぼれる。
「フッ……こんな状況でも貴様は冷静なのだな」
「特に動揺する事でもないので」
嘘つけ……震えてるくせに
「……………ありがとう、桃」
「はぁ~……ほんとこれだから…」
桃は抱き締めている腕をゆっくり外すと振り向き手を伸ばすやいなや袖で口元を拭い始めた。
「なっ…にする…‥んだ‥っ!?」
「よし!これで事故のキスもなし。ファーストキスも抱き締める事も甘い台詞も全部星七さんにしてあげて下さい。じゃなきゃ一生実るものも実りませんよ!」
「いや、でもさっきの見ただろ?苺は俺の事なんか……」
バシッ!
「むっ!?」
「グダグダ言わない!この程度で諦めるつもりですか?会長の星七さんに対する気持ちはこの程度なんですか?この弱虫ヘタレ男!!」
背伸びしながら頬を挟んだまま言う桃の言葉に涙が溢れてきた。
「諦め……たくない」
「ならその涙止めて弱音吐かない!いいですね?」
「……うん」
素直に頷く俺に対し呆れ顔で笑みを零す桃が先程震えていたのが嘘みたいに強く凛々しく見えたのだった。
*
深夜零時を回り既に深夜三時という頃、一人の女子生徒がログハウスの外にあるパイプ椅子に座っていた。
「…眠れない」
満天の星空を眺めながらただただ星野 桃こと私は目が冴えていた。
「ココナのいびきのせいか、もしくはさっきの出来事のせいか…」
先程の湖で起きた通称”スワン事件”(桃が名付けた)での出来事を思い返す度後悔に苛まれる。
「アァァァァァァッ!!!やらかした!鳳梨グアバの練習何か手伝うんじゃなかった!湖に溺れかけるわ!事故でキスしてしまうわ!ヒロインと桜桃凌牙のラブシーンに出くわすわ!長引き過ぎて風邪ひきそうになるわ!最悪すぎるっ!そりゃあ、鳳梨グアバがヒロインとの恋を諦めないように背中おせたのは良かったと思うけど…自身に受ける被害が大きすぎる」
最初から最後まで思い返してみても体張ってるなぁ…私という感想しか出てこなかった。
「それにヒロインと桜桃凌牙を目撃した時なんか色んな意味で冷や汗しかなかったし…」
「何が冷や汗なんだ?」
へ?
突然聞こえた聞き返す声に私は冷や汗ならぬ謎の汗が全身から流れた。
え?え?この時間生徒も教師も皆寝てるはず……いやいやいや、早まるな私!ここで振り返ったら少なからず否、絶対最悪な状況になる間違いないってなるわ
振り向きかけた体を一瞬冷静になり振り向かずに相手の動向を伺う。
「湖に居たよな?星野 桃」
ギクッ!!!
やばいやばいやばいっ!!!
その瞬間私は悟った。背後にいる声の主は間違いなく攻略対象者の一人だと。
もはやこの状況に振り向かずとも逃げ場など無い。そう腹にくくるなり私は恐る恐る振り向くとTシャツとジャージの姿にお風呂かシャワーをしてきた後なのか少し濡れた髪を無造作に乱された桜桃 凌牙の姿あった。
やばすぎる‥っ!!!
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