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二章 《林間合宿編》

ズレの修正は命懸け

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「よ~し!皆、一人一匹だけだからな!」

「やった~~~!!!」

あ、やっぱりろくでもない事に

き火に来るなり魚を前にえらそうに宣言する会長こと鳳梨 グアバに予想通りすぎて頭が痛くなる。

「あの!あの人止めた方がいいんじゃ…」

「うわっ!?あ……何だひよこちゃんか」

近くに居た桜桃 小豆に慌てて声をかけ止めるように言うと何故か謎の間を少し置きまるで一瞬私の存在を忘れていた様な反応した。

存在を消されていた?……いや、考え過ぎか

一瞬違和感を覚えたが確実な証拠しょうこがあるわけでもない為考え過ぎだと思う事にした。

流石さすがにあんな複数の生徒が味見なんかしたら夕食分の皆の魚がなくなります」

「確かにそうね……分かった、私から止めるように言ってくるわ」

「お願いします」

あんな複数の生徒を前に出るわけにも行かない為、小豆に彼の制御せいぎょたくす事にした。

…ん?何か話してる?

小豆はグアバに駆け寄るなり何やら耳打ちをすると一瞬にしてグアバの体が固まり顔が青ざめていった。

「…じゃ、引いてくれるわよね?会長」

「あ、あぁ…」
 
そういうなり何度も首を縦に振りうなずくとすみの方へと歩いて行った。

一体何を言ったんだ…?

グアバの様子の変わりように首をかしげながらも入れ替わりで中心に立つ小豆に視線を向ける。

「皆~!ストップ!会長の言ってた味見は禁止!こんな沢山たくさんの人で食べたら夕食分の魚が無くなるわ。分かったら各々自分の役割に戻りなさい。それと、焼けた魚は班ごとに人数分だけ取り分けてね!」

「”は~い!”」

小豆のグアバよりリーダー感のある言葉に一同嫌々ながらも早々に動いて行った。

「あーあ、せっかく味見出来ると思ったのに~!」

不満そうにふくれるココナの頭に手を伸ばす。

「お姉様?」

「文句言わないの」

そう言うなり優しくポンポンとするとココナの瞳孔どうこうが開いた。

「お、お姉様……」

「ん?」

「いっそこのまま……全身くまなく触って下さいませっ!そして最後には…」

バシッ!!!

「いっ…たぁっ!?」

ココナの発言をすかさず手のひらでたたき止めた。

「急に何するんですかぁ!?もう!」

「変態発言する方が悪い」

「う~…だってだって!お姉様にポンポンなんてされたらそれ以上触って頂きたいって思うじゃないですかっ!」

「思わないよ。それより、ココナも早く焼けた魚を班の人数分確保して来て」
 
「それよりって……ぶぅ~…分かりました、やってきますよー」

心底不満そうな顔のまま焼けた魚がある焚き火の方へと歩いて行くココナを見送ると目的の人物に視線を戻し駆け寄る。

「まったく…一体何を言われたらそこまで落ち込むんですか?」

「うわっ!?な、何か用か…?」

完全におびえきった表情の会長こと鳳梨 グアバに”本当に何を言われたんだ?”と不思議で仕方がなかったが彼に言いたいのはそんな事ではない。

「赤が出た時は絶対にして下さいね」

彼の肩に手を置き真剣にそう言うと”何を言っているのか分からない”とでも言う様な表情で首を傾げた。

「赤が出たら拒否って…一体何の事を言ってるんだ?」

「理由は聞かないで。とにかく、何があっても拒否して下さい。いいですね?」

「あ、ああ」

あまりの真剣な顔と威圧いあつ感に戸惑いながらもそれ以上は何も言わず頷いた。

「じゃあ、私はこれで…」

頷いたグアバを見るなり肩に置いていた手を離すと何も無かった様にその場から離れた。

「一体何がどういう事なんだ…?」

桃の言う言葉に疑問しかかなかったが、鬼みたいな形相ぎょうそうで言われた為拒否など出来るわけもなかった。

「うぅ…思い出しただけで寒気が…っ」

謎の寒気に桃の言う通り”赤がきたら拒否しよう”と何度も頭にきざんだのだった。

 *

「えっと、次は……」

半ば強引に言い負かしグアバを後にするともう一人を探す為辺りを見渡す。

…ん?あれは梅木 ライチか?

焼けた魚を取り分ける事もなく何故か焚き火の前で両ひざを抱え座り込んでは微動びどうだにしない様子に首を傾げる。

何をしているんだ?いや、深くは考えないでおこう…今は彼に構っているひまはない

再び頭を切りかえようと頭を横に振り再度辺りを見渡す。

「誰を探してるんだ?」

バサッ…

「わっ!?」

誰かの声と共に何かが頭にかぶさり慌ててそれを取ると真上で見下ろす桜桃 凌牙がいた。

あ、いた………

ずっと探していた人が自ら目の前に現れ驚きでまばたきを何度かすると威圧するかの様な声と共に直ぐに冷静になる。

「それ、返す」

被せてきた物を見つめ言う彼に改めてそれを見ると昨晩彼に渡した自分のジャージの上着だった。

「あ、ありがとう」

「貸すのはいいがもう少し自分の体型を見直してから貸せ、チビ」

「なっ…!?私はまだ成長期だってばっ!!!」

ドカッ!!!

「いっ…!?」

”チビ”という言葉に思わず怒りで右足を思いっきりるとその反動で凌牙が右ひざを抱え込んだ。

「お、お前……仮にもサッカー部の俺の足を思っきり蹴るバカがいるか!」

「チビって言う方が悪い」

「チビはチビだろ。体格差も考えないで貸すバカにチビと言って何が悪い?」

「うっ……」

確かにそうだ。自分の小さなジャージが彼に着れるわけもない。

「他に言う事がなければ、俺も使わない焚き火を処理しなければいかないからじゃ…」

「待って」

その場から立ち去ろうと背を向ける彼の腕を慌てて掴み引き止める。

「何だ?」

「赤がきたら引き止めて」

「は?」

「誰をとまでは言えないけど、その時が来たら誰を引き止めればいいかあなた自身が分かるわ」

「質問は?」

「それも答えられない。無理にとは言わない。ただあなたにとっては利益りえきになる事だから」

「ふーん……別に言う通りにしなくてもいいって事だな?」

「ご自由に」

「……分かった」

少しの間が空き素っ気なく頷くと再度その場から離れていった。

「はぁー………」

疑いしかない冷たい目と少しの間に冷や汗がひたいから流れ今にも地べたに座り込みそうになるがまだやらなければいけない事がある為足を叱咤しったする。

「あとはがあるか確認しないと…」

一人そうつぶやくと足をログハウスに向け目的の場所へと真っ直ぐに歩き出した。

 *

男女別の部屋をはさむ教員部屋がある中心には人一人の影もなく皆外にいるのが見て分かった。

「……誰もいない」

だが、そうでなければこんな事出来るはずもない

ある教員の部屋にある十個の色の違う箱の内、四つの箱に手を伸ばす。

「見つけた」

中心に空いた穴の中に手を入れると沢山たくさんの小さな紙が入っておりその中から箱の色が書かれた二つの紙を探し出しては戻し確認する。

「あとは緑…」

緑の箱の中を探り紙を見ては戻しを繰り返し、ようやく二つの緑の紙を探し出した瞬間聞きたくもなかった声が部屋に響いた。

「あれ~?こんな所で何をしてるのかな~?

っ…!?ヤバいっ!!!

手にしていた最後の紙を慌ててポケットに入れ平然とした顔で振り返ると楽しげに不敵な笑みを浮かべる棗 杏子の姿があった。

「生徒が先生の部屋に来ちゃいけないんだよ~?もものん」

「すみません、迷子になっただけです。すぐに出ますので」

…とは言ったもののポケットの中にある紙を箱に戻さなければいけないのにどうすれば…

「すぐに出るかぁ……本当に出られると思う~?」

「は?何を言って…」

徐々じょじょに距離をめてくる棗 杏子に思わず後退あとずさりしてしまう。

「もものんがその緑の箱を探ってるの見ちゃったんだけどさ~…何でそんな事をしてるのか?先生は知りたいな~」

この部屋には私と棗 杏子だけ。外にも誰もいない。ポケットには紙があって最悪な事に箱を探っていたのを見られてしまう始末……逃げ場がない

「……ふっ」

「もものん?」

「ほんと…欲だらけになりましたね」

「昔?一体何の……っ!?」

突然頭を抱えうずくまる杏子を見るなりすきを見てポケットに入れていた紙を箱に入れる。

よし、あとは今のうちにここから脱出を……

「っ……」

きびすを返し早々にその場から立ち去ろうとするが彼の手がそれを止めた。

「あんまり大人をめてはだめだよ?…もものん」

腕を掴むなり引っ張られ下敷したじきになると内心動揺で心が乱れるが彼にさとられるわけにもいかずえる様にくちびるをキュッと結ぶ。

「ふふっ…動けないでしょ~?そりゃそうだよ~男がその気になればこんな風に動けなくさせる事なんて簡単なんだよん。知ってた~?でもね、先生にはもっと簡単にだってあるんだよね~……」

手に入れる方法…?って今はそれよりも……

「何が目的?」

「目的かぁ…ん~…先生ね、もものんが探ってた事もそうだけど何で箱がここにあるのが分かったのかなぁ~?とか全部知りたいんだよね。もちろん、もものんの肌が何でこんなにも白いのかとか綺麗なのかとか大きなへき色の瞳もほんのり赤い唇も小さな手も指先も全部全部知りたいんだよね……そして、全部先生のものにしたい…」

「っ……」

長い指先でそっとほお撫でられ息もできない程に恐怖で体が強ばる。

「ねぇ、もものん……先生のものになってよ?」
































 














    
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