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二章 《林間合宿編》
小悪魔の誘いは合意か?否か?
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静かな一室に十個の箱と目の前にはヤレンデレスイッチの入った獣が一匹…‥‥両手は固定され足も体ごと体重で押し付けられ身動き一つ取れないというこの状況……はぁ…奥の手を使うしかないのか
「先生のものにはなれないけど……」
「けど?」
「あなたの欲しい物ならあげる事は出来る」
「えっ……」
「耳を寄せてくれたらそれが何か教えてあげます。お陰様で両手を固定されてるもので…」
固定されている右手をチラッと見るなりわざとらしく残念そうに言うと少しの間考え込み決めたのかその口元には笑みを浮かべていた。
「いいよ~…何をくれるのか知りたいし」
そう言うと癖っ毛のある緑色の髪が近づき綺麗な形の耳が露になった。
「ふっ……あんまり私を舐めないで」
カプッ!
「っ…!?」
耳に呟くなり軽く甘噛みをすると棗の驚いた反動で両手首を固定する力が少しばかり弱まった。
今だ…っ!
その隙を見逃す事なくトドメとばかりに頭突きを食らわすと今度は思いっきりよろけ押し付けられていた体が離れた。
「よっと…」
「っ………も、もも…の……ん」
「すみません、両手も足も塞がっていたものでこれしか出来ませんでした。女もその気になればこんな風に脱出する事くらい簡単に出来るんですよ。知らなかったのなら覚えておいて下さいね?…先生」
頭を抱え蹲る棗 杏子を見下ろすなり早々にその場から去った。
「ペッ………いくら脱出する為とはいえ耳を噛むとか気持ち悪くてならないな」
まだ感触の残る口内に眉を寄せながら固定されていた手首を回す。
「はぁ~…捕まったり下敷きにされたりこんなのばっかりならいっそ護身術でも習おうかな?んー…やっぱりスタンガンにしよっと」
スタンガンを持っていそうなココナや小豆の顔を思い浮かべながら何も無かったかのようにログハウスから出るのだった。
*
日はほとんど沈み、生徒達はキャンプファイヤーを囲んで作ったカレーやフルーツヨーグルト等を食べ二日目の締めくくりであるレクレーションを前にしていた。
「レクレーション楽しみですね!お姉様」
「私は参加しない」
「えー!?」
「ただでさえ存在感無いのに参加して前に出る様な事があれば場がしらけるだけだもの。私は気にせず、ココナはしたいならしてくればいいよ」
「そんな!?お姉様がしないのなら私もしませんっ!私だってお姉様と同じ様に存在感無いんですよ!同じ存在感無し仲間なんですから!」
「はいはい、分かった分かった」
「むぅ…最近、ココナへの扱いが雑じゃないですか?」
「気のせい気のせい」
…多分
ココナの話を適当に聞き流してる間に、レクレーション係である桜桃 小豆・小堺 瓜・星七 苺は教師である棗 杏子の指示の元例の色の付いた箱をキャンプファイヤーの隅に置くと桜桃 小豆によってレクレーションの開始の合図が宣言された。
「皆さん、手作りのご飯美味しかったですね。そんな美味しかったご飯の後には楽しい楽しいレクレーションの始まりです!」
「”わ~い!”」
生徒達の拍手が終わると赤い箱を星七 苺が持ち一人一人に中の紙を引かせていく。ちなみに、桃とココナには存在感無しの影響で回って来なかったのは言うまでもない。
「はい、小豆も」
「ありがとう、苺もね」
「うん」
まだ引いていないレクレーション係のメンバーもそれぞれ紙を引くと小豆がトランプに似た白いカードを取り出しシャッフルすると苺の前に伏せながら差し出した。
「苺、引いて?」
「うん!よ~し‥‥‥これだっ!」
引いたカードを恐る恐る裏返しにして見るなり何故かヒロインの頬が赤くなっていった。
「え、えっと‥‥‥キスをする‥‥って書いてある」
言葉にするなり真っ赤になるヒロインの姿にその場にいた全員が”可愛い”と思っていたのは間違いないだろ。女子生徒二名を除いては。
「じ、じゃあ‥‥このお題をする赤を引いた二名は前に出て来て」
戸惑いながら言う小豆の言葉に各々紙を開いていくと何も書いていない者の残念がる声が飛び交いその中でも何も書いていない紙を赤い箱片手に委員長こと小堺 瓜は陰ながら回収していった。
委員長も大変だなぁ‥‥‥
「俺、赤だ」
「私も赤だった」
同時に出た赤の声に一斉に視線がいくと表情からしてデレデレな会長こと鳳梨 グアバと心底嫌そうなヒロインこと星七 苺がいた。
「げっ‥‥グアバじゃん!まさか他の人の赤を盗んだりしてないでしょうね?」
「そんな姑息な真似するわけないだろ!俺様が赤を引くのは運命で決まって‥‥‥」
言葉の途中で何かを思い出したのかふと視線が桃の方へ向いた。
止めろ、見るな
見るなり徐々に青ざめていくグアバに何とかしようと鋭い目付きで何度も首を横に振る。
「っ‥‥‥」
「グアバ?」
「グアちゃん?」
小豆と苺の不思議がる声にゆっくりと視線を戻すと青ざめた顔のまま口を開く。
「や‥‥やらない」
「”え?”」
思わぬ言葉にあんぐり顔で固まる二人に心底嫌そうに再度口を開く。
「だから、やらないと言ったんだ!キ、キスを‥‥」
「え、えええ?いいの!?やったー!苺、良かったね!これでキスせずに済むんだよ!」
「それは嬉しいけど‥‥‥だめだよ」
「”え?”」
苺の思わぬ返答にグアバまでもが驚いていると何かを決意したように顔を上げた。
「だって、最初のお題なのにキスしないなんてゲームの楽しみ半減なっちゃうでしょ?せっかくのレクレーションなんだから楽しまなきゃ!だからその‥‥‥グアちゃん、私とキス‥‥‥‥‥して欲しいな‥?」
「っ‥‥‥‥」
潤んだ瞳で可愛くお願いポーズをする苺に口を片手で押さえ赤らめるグアバに思わず溜息をつきたくなった。
はぁ‥‥‥あれほどダメだと言ったのに
「で、でも‥‥グアちゃんがどうしても嫌なら‥‥‥‥諦める」
悲しそうに肩を落とす苺の押しては引く言動に”さすがヒロイン”といつもなら拍手を送っただろう。いつもならね。
「い、嫌ではっ‥‥‥ない」
慌てて取り消すグアバにヒロインの表情は直ぐに笑顔になった。
「ほんとー!?…嬉しい」
「っ‥‥ああ」
いや、照れながら頷いてる場合じゃないんですけど
まんまと苺に流され受け入れてしまっている鳳梨 グアバに内心ツッコミを入れつつも一先ず先を見守る事にした。
「じゃあ、キスお願いし…わっ!?」
突然、苺の腕が横から引っ張られその場にいる全員の視線が引っ張った本人に集められた。
「行くな」
「っ‥‥りょ‥んくん」
戸惑いながら呟く苺の視線の先には普段の鬼畜で冷たい目からは違い真剣な熱の篭った眼差しをする桜桃 凌牙がいた。
「‥‥‥今のは忘れろ」
「え‥‥」
止めておきながら途端に何も無かったかの様に手を離すと直ぐに背を向けた。
「忘れろなんて出来ないよっ!行くなって止めてくれたのはグアちゃんとキスして欲しくなかったからでしょ?だったら私‥‥‥」
「苺?」
踵を返しグアバに向き直る苺の行動に小豆の不思議そうな声が漏れた。
「ごめんね、グアちゃん。キスはまた今度…‥‥二人っきりの時にさせてね?」
「っ‥‥…」
小さく舌を出し悪戯っ子の様に笑みを零す苺はまさしく可愛い小悪魔の様だった。
「…分かった。今回だけは俺様の優しい心でまたの機会にしてやる」
優しい心ねぇ…‥‥‥ヒロインの手のひらで遊ばされてる人がよく言うわ
苺の小悪魔的な笑みとそれに負けたヘタレグアバのカッコつけセリフにて最初のお題を含めその場は収められたのだった。
少し違ってはいるけどもここまではゲーム通りかな…‥
林間合宿でのレクレーションのイベントでは複数の色が違う箱を元に色と同じ字が書かれた二つの紙を引いた同士は進行をする者によって引かれたお題を強制的にしなければならないという王様ゲームをアレンジしたようなゲームなのだ。そして、裏を返せばヒロインの為のゲームでもある。
色は全部で十箱。その中でヒロインと攻略対象者達が関係あるのは赤・青・黒・緑の四箱。
赤は先程行われたヒロインと鳳梨 グアバのキスイベント。ゲームではヒロインと鳳梨 グアバが赤を引くと恥ずかしそうに躊躇するヒロインと嫌そうな顔で『やらない』と断る鳳梨 グアバ‥‥それでもお題だからとヒロインは『最初のお題だからしないとゲームが楽しくなくなっちゃう…‥お願い!嫌なのは分かるけど、キスしてほしい‥‥』とお願いをするが首を縦に振ってくれないグアバのせいで二度目のお願いに挑む。だが、桜桃 凌牙に腕を引かれ『行くな』と止められてしまうのだ。初めて見る独占欲とも取れる桜桃 凌牙の行動にヒロインはキスをするのを諦めるのだが、最後まで一切首を縦に振らなかった鳳梨 グアバの『仕方ない…今度、俺様が嫌と言うまでしてやる…‥二人っきりでな』と言うセリフが顎を持ち上げられ言われるのだが…‥‥
あのヘタレ暴君にそんな真似が出来ると?ありえない
案の定、顎クイなどと言う俺様感ありありの芸当など彼がする訳もなく終始ヒロインに翻弄されるという結末となった。ヘタレ暴君の行動もそうだが、ゲーム内とは少しばかりセリフが変わっているのもありやはり完全にゲーム通りには行かないのだろう…‥唯一、ゲーム通りの行動やセリフをしてくれた桜桃 凌牙を除いては…
「っ…‥」
「お姉様?どうしました?」
「何でもない」
不思議がるココナの呼びかけを適当に流し反射的に逸らしてしまった桜桃 凌牙がいる方を再度恐る恐る見てみると突き刺さるような真っ直ぐな視線がこちらを見ていた。
こうなる事は薄々分かっていたけどこうするしか手段がなかったんだよ!
レクレーションイベントで私が出来る事は、鳳梨 グアバに”拒否れ”と言う事と桜桃 凌牙に”引き止めて”と言う事だけだった。何故ならこの後の展開を含め攻略対象者達のヒロインに対する心情や好感度からしても食い違う事はないと思ったからだ。
だが、それでも僅かな不安を感じてしまうのはこの後あの人物がどう動くか予測がつかないからか…‥
「先生のものにはなれないけど……」
「けど?」
「あなたの欲しい物ならあげる事は出来る」
「えっ……」
「耳を寄せてくれたらそれが何か教えてあげます。お陰様で両手を固定されてるもので…」
固定されている右手をチラッと見るなりわざとらしく残念そうに言うと少しの間考え込み決めたのかその口元には笑みを浮かべていた。
「いいよ~…何をくれるのか知りたいし」
そう言うと癖っ毛のある緑色の髪が近づき綺麗な形の耳が露になった。
「ふっ……あんまり私を舐めないで」
カプッ!
「っ…!?」
耳に呟くなり軽く甘噛みをすると棗の驚いた反動で両手首を固定する力が少しばかり弱まった。
今だ…っ!
その隙を見逃す事なくトドメとばかりに頭突きを食らわすと今度は思いっきりよろけ押し付けられていた体が離れた。
「よっと…」
「っ………も、もも…の……ん」
「すみません、両手も足も塞がっていたものでこれしか出来ませんでした。女もその気になればこんな風に脱出する事くらい簡単に出来るんですよ。知らなかったのなら覚えておいて下さいね?…先生」
頭を抱え蹲る棗 杏子を見下ろすなり早々にその場から去った。
「ペッ………いくら脱出する為とはいえ耳を噛むとか気持ち悪くてならないな」
まだ感触の残る口内に眉を寄せながら固定されていた手首を回す。
「はぁ~…捕まったり下敷きにされたりこんなのばっかりならいっそ護身術でも習おうかな?んー…やっぱりスタンガンにしよっと」
スタンガンを持っていそうなココナや小豆の顔を思い浮かべながら何も無かったかのようにログハウスから出るのだった。
*
日はほとんど沈み、生徒達はキャンプファイヤーを囲んで作ったカレーやフルーツヨーグルト等を食べ二日目の締めくくりであるレクレーションを前にしていた。
「レクレーション楽しみですね!お姉様」
「私は参加しない」
「えー!?」
「ただでさえ存在感無いのに参加して前に出る様な事があれば場がしらけるだけだもの。私は気にせず、ココナはしたいならしてくればいいよ」
「そんな!?お姉様がしないのなら私もしませんっ!私だってお姉様と同じ様に存在感無いんですよ!同じ存在感無し仲間なんですから!」
「はいはい、分かった分かった」
「むぅ…最近、ココナへの扱いが雑じゃないですか?」
「気のせい気のせい」
…多分
ココナの話を適当に聞き流してる間に、レクレーション係である桜桃 小豆・小堺 瓜・星七 苺は教師である棗 杏子の指示の元例の色の付いた箱をキャンプファイヤーの隅に置くと桜桃 小豆によってレクレーションの開始の合図が宣言された。
「皆さん、手作りのご飯美味しかったですね。そんな美味しかったご飯の後には楽しい楽しいレクレーションの始まりです!」
「”わ~い!”」
生徒達の拍手が終わると赤い箱を星七 苺が持ち一人一人に中の紙を引かせていく。ちなみに、桃とココナには存在感無しの影響で回って来なかったのは言うまでもない。
「はい、小豆も」
「ありがとう、苺もね」
「うん」
まだ引いていないレクレーション係のメンバーもそれぞれ紙を引くと小豆がトランプに似た白いカードを取り出しシャッフルすると苺の前に伏せながら差し出した。
「苺、引いて?」
「うん!よ~し‥‥‥これだっ!」
引いたカードを恐る恐る裏返しにして見るなり何故かヒロインの頬が赤くなっていった。
「え、えっと‥‥‥キスをする‥‥って書いてある」
言葉にするなり真っ赤になるヒロインの姿にその場にいた全員が”可愛い”と思っていたのは間違いないだろ。女子生徒二名を除いては。
「じ、じゃあ‥‥このお題をする赤を引いた二名は前に出て来て」
戸惑いながら言う小豆の言葉に各々紙を開いていくと何も書いていない者の残念がる声が飛び交いその中でも何も書いていない紙を赤い箱片手に委員長こと小堺 瓜は陰ながら回収していった。
委員長も大変だなぁ‥‥‥
「俺、赤だ」
「私も赤だった」
同時に出た赤の声に一斉に視線がいくと表情からしてデレデレな会長こと鳳梨 グアバと心底嫌そうなヒロインこと星七 苺がいた。
「げっ‥‥グアバじゃん!まさか他の人の赤を盗んだりしてないでしょうね?」
「そんな姑息な真似するわけないだろ!俺様が赤を引くのは運命で決まって‥‥‥」
言葉の途中で何かを思い出したのかふと視線が桃の方へ向いた。
止めろ、見るな
見るなり徐々に青ざめていくグアバに何とかしようと鋭い目付きで何度も首を横に振る。
「っ‥‥‥」
「グアバ?」
「グアちゃん?」
小豆と苺の不思議がる声にゆっくりと視線を戻すと青ざめた顔のまま口を開く。
「や‥‥やらない」
「”え?”」
思わぬ言葉にあんぐり顔で固まる二人に心底嫌そうに再度口を開く。
「だから、やらないと言ったんだ!キ、キスを‥‥」
「え、えええ?いいの!?やったー!苺、良かったね!これでキスせずに済むんだよ!」
「それは嬉しいけど‥‥‥だめだよ」
「”え?”」
苺の思わぬ返答にグアバまでもが驚いていると何かを決意したように顔を上げた。
「だって、最初のお題なのにキスしないなんてゲームの楽しみ半減なっちゃうでしょ?せっかくのレクレーションなんだから楽しまなきゃ!だからその‥‥‥グアちゃん、私とキス‥‥‥‥‥して欲しいな‥?」
「っ‥‥‥‥」
潤んだ瞳で可愛くお願いポーズをする苺に口を片手で押さえ赤らめるグアバに思わず溜息をつきたくなった。
はぁ‥‥‥あれほどダメだと言ったのに
「で、でも‥‥グアちゃんがどうしても嫌なら‥‥‥‥諦める」
悲しそうに肩を落とす苺の押しては引く言動に”さすがヒロイン”といつもなら拍手を送っただろう。いつもならね。
「い、嫌ではっ‥‥‥ない」
慌てて取り消すグアバにヒロインの表情は直ぐに笑顔になった。
「ほんとー!?…嬉しい」
「っ‥‥ああ」
いや、照れながら頷いてる場合じゃないんですけど
まんまと苺に流され受け入れてしまっている鳳梨 グアバに内心ツッコミを入れつつも一先ず先を見守る事にした。
「じゃあ、キスお願いし…わっ!?」
突然、苺の腕が横から引っ張られその場にいる全員の視線が引っ張った本人に集められた。
「行くな」
「っ‥‥りょ‥んくん」
戸惑いながら呟く苺の視線の先には普段の鬼畜で冷たい目からは違い真剣な熱の篭った眼差しをする桜桃 凌牙がいた。
「‥‥‥今のは忘れろ」
「え‥‥」
止めておきながら途端に何も無かったかの様に手を離すと直ぐに背を向けた。
「忘れろなんて出来ないよっ!行くなって止めてくれたのはグアちゃんとキスして欲しくなかったからでしょ?だったら私‥‥‥」
「苺?」
踵を返しグアバに向き直る苺の行動に小豆の不思議そうな声が漏れた。
「ごめんね、グアちゃん。キスはまた今度…‥‥二人っきりの時にさせてね?」
「っ‥‥…」
小さく舌を出し悪戯っ子の様に笑みを零す苺はまさしく可愛い小悪魔の様だった。
「…分かった。今回だけは俺様の優しい心でまたの機会にしてやる」
優しい心ねぇ…‥‥‥ヒロインの手のひらで遊ばされてる人がよく言うわ
苺の小悪魔的な笑みとそれに負けたヘタレグアバのカッコつけセリフにて最初のお題を含めその場は収められたのだった。
少し違ってはいるけどもここまではゲーム通りかな…‥
林間合宿でのレクレーションのイベントでは複数の色が違う箱を元に色と同じ字が書かれた二つの紙を引いた同士は進行をする者によって引かれたお題を強制的にしなければならないという王様ゲームをアレンジしたようなゲームなのだ。そして、裏を返せばヒロインの為のゲームでもある。
色は全部で十箱。その中でヒロインと攻略対象者達が関係あるのは赤・青・黒・緑の四箱。
赤は先程行われたヒロインと鳳梨 グアバのキスイベント。ゲームではヒロインと鳳梨 グアバが赤を引くと恥ずかしそうに躊躇するヒロインと嫌そうな顔で『やらない』と断る鳳梨 グアバ‥‥それでもお題だからとヒロインは『最初のお題だからしないとゲームが楽しくなくなっちゃう…‥お願い!嫌なのは分かるけど、キスしてほしい‥‥』とお願いをするが首を縦に振ってくれないグアバのせいで二度目のお願いに挑む。だが、桜桃 凌牙に腕を引かれ『行くな』と止められてしまうのだ。初めて見る独占欲とも取れる桜桃 凌牙の行動にヒロインはキスをするのを諦めるのだが、最後まで一切首を縦に振らなかった鳳梨 グアバの『仕方ない…今度、俺様が嫌と言うまでしてやる…‥二人っきりでな』と言うセリフが顎を持ち上げられ言われるのだが…‥‥
あのヘタレ暴君にそんな真似が出来ると?ありえない
案の定、顎クイなどと言う俺様感ありありの芸当など彼がする訳もなく終始ヒロインに翻弄されるという結末となった。ヘタレ暴君の行動もそうだが、ゲーム内とは少しばかりセリフが変わっているのもありやはり完全にゲーム通りには行かないのだろう…‥唯一、ゲーム通りの行動やセリフをしてくれた桜桃 凌牙を除いては…
「っ…‥」
「お姉様?どうしました?」
「何でもない」
不思議がるココナの呼びかけを適当に流し反射的に逸らしてしまった桜桃 凌牙がいる方を再度恐る恐る見てみると突き刺さるような真っ直ぐな視線がこちらを見ていた。
こうなる事は薄々分かっていたけどこうするしか手段がなかったんだよ!
レクレーションイベントで私が出来る事は、鳳梨 グアバに”拒否れ”と言う事と桜桃 凌牙に”引き止めて”と言う事だけだった。何故ならこの後の展開を含め攻略対象者達のヒロインに対する心情や好感度からしても食い違う事はないと思ったからだ。
だが、それでも僅かな不安を感じてしまうのはこの後あの人物がどう動くか予測がつかないからか…‥
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