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二章 《教育編》~夏の誘い~

事故の嵐〜素直な彼は思いを馳せる〜

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わずかに動くアイスブルーの瞳に水にれた白銀色の髪が水滴で光ってみえた。

え…‥えっと‥‥

…‥ピチャッ‥

冷た…っ

状況が上手く理解出来ずに動けないでいると白銀色の髪から水滴がほおに落ち思わず片目をつむる。

「っ…‥」

ドンッ!!!

水滴に気を取られていると突然体が離れその反動で浮いていた頭が床に落ち痛みが走った。

「っ~~~~~!?!!」

急に離すなんてされる側の身にも考えて…‥

「え…?」

頭を抱えながら視線をめぐらせるとそこには予想にもしてなかった真っ青な顔で片手で口をおおう攻略対象者の梅木 ライチの姿があった。

えーと、真っ青な顔をしたいのは私の方なんですけど‥?

彼の姿にどうしていいか分からず戸惑っていると不意にアイスブルーの瞳が合い何か言おうと口を開けようとしたが開ける間もなく光の速さで脱兎だっとのごとくその場から去って行った。

えぇっ!?逃げたいのも私の方なんですけどぉぉぉっ!?

予想外の出来事の連続に呆気にとられながらも梅木 ライチが居なくなったプールを見渡しふと問題が解決していない事に気づいた。

「プール掃除どうしよう…‥」

それにくちびるも…‥

さっきの出来事が頭をぎりフワッと顔が真っ赤になる。

「事故ちゅー二回目」

 *

チックタック…チックタック…チックタック…‥

静かな生徒会室の中で無心に動くはり呆然ぼうぜんと見つめているとそれを打ち破るかのようにさげすむ声が掛けられた。

「何してるんですか?会長」

顔を上げると怪訝けげんな顔で見つめる桜桃 凌牙が居た。

「んー…メトロノームで未知との対話をしているんだ」

「は?檸檬や棗先生の花畑きんでもうつされたんですか?」

「花畑菌?何だそれ?」

「きっと馬鹿特有の菌じゃないですかね…‥はい、グアバ」

「げっ…蜜柑みかん居たのか」

怪訝な顔をするグアバを他所に蜜柑はいつもの腹黒スマイルでブラックコーヒーをつくえに置いた。

「グアバが勉強をサボってメトロノームを見るなり現実逃避をし始めたあたりからずっと居ましたよ」

「…会長」

蜜柑の容赦ようしゃのない言葉にあきれる凌牙の視線をびつつ机のはしに積み重なっている紙の数々を見つめる。

「…だ、だが仕方ないだろ?勉強だけじゃなくて実家の仕事までさせられてるんだから」

実家の仕事はいつもは上の兄上達が全て終わらせるかたまに多すぎて回って来る時は蜜柑が代わり終わらせるのだが…‥

「何で今回はやってくれないんだ?」

「はぁー…私だって忙しいんです。それに、たまには自分でやっていただかないと”かりにもアラブの第十四王子”なんですから」

「仮にもって、俺はれっきとした第十四王子だ!」

「なら、王子として自分で出来ますよね?」

「っ…‥わ、分かった!やればいいんだろ?やれば」

ぐうの音もでない言葉にあきらめて机の端に積み重なっている紙の数々に手を伸ばした。

「会長、見事に蜜柑先輩の手のひらの上でころがされていますね」

クスッと小さく笑う凌牙にイラッときて持っているボールペンを向ける。

「俺がしたいからしているだけだ‥っ!決して蜜柑の手のひらの上なんて事はない。それより、お前こそ今日生徒会の名を使って授業中にも関わらずグランドの道具倉庫のかぎを借り更には他の生徒まで道連れにしてはその生徒の授業もふくめ自身の授業も免除めんじょしたと聞いたが…‥つね日頃から生徒会の名を小さな事で利用するなと言っているのにこれはるまじき行為こういじゃないのか?」

「それは…‥」

先程、蜜柑に手のひらの上でころがされていた時の表情とは違い強い眼光がんこうで問いただすグアバに眉間みけんしわを寄せ顔をしかめた。

図書室の窓からほふく前進をするあいつを見かける前、まだ教室に小豆・小堺・檸檬れもんと居た頃ー…

「ねぇ、もうすぐ授業始まるのにさすがに苺遅いと思うんだけど」

時計の針を横目に小豆は心配そうにつぶやいた。

「確かに、そろそろ教室に居ないと授業遅れそうだね」

小豆の言葉に檸檬や小堺も心配そうに時計を見つめる様子にため息じりに口を開く。

「はぁ…仕方ない、俺が探してくるからもし他の生徒がさわぎ出したら対処たいしょしておいてくれ」

生徒内だけではとどまらずその容姿や成績の優秀さに教師までも人気のある苺が授業が始まっても居ないとなると騒ぎが起きない方がまず有り得ない為、同等の人気のある小豆に対処をたくす事にした。

「分かった」

心配をぐえない顔でうなずく小豆に対し特に笑顔を見せる事もなく淡々たんたんと教室を後にしたのだった。

探すとなると予想として居そうな場所は屋上・家庭科室・中庭・図書室・生徒会室ぐらいだが…‥今は先に職員室だな

…コンコン

「失礼します」

早足で職員室のある中央舎一階に辿り着くと中に入るなり次の授業の担当たんとうである先生を見つけ真っ直ぐに駆け寄った。

「すみません、次の授業の件についてお話があるのですが…」

「ん?次の授業を受ける生徒かし…うぎゃっ!?さ、桜桃 凌牙くんっ!?!!」

眼鏡を掛けた英語の女性教師は振り向くなり平然と隣に立つ凌牙に驚いて飛び上がった。

心做こころなしか頬が赤い気もするが…

「実は、俺を含め同じく授業を受ける星七 苺の授業を生徒会の頼みという事で免除して欲しいんです」

「免除?」

「はい、不可能であればいさぎよく諦めますが…」

「い、いえっ!免除ですね?凌牙くんの…いえ、生徒会の頼みとならば仕方ないです‥っ!やっておきますね」

むねの前で両手でこぶしを握りしめ頷く先生に引き気味でいるとふと他の教員達の話し声が耳に入ってきた。

なつめ先生一体どこにいるんでしょうか?」

「そろそろ授業が始まるというのに生徒からはまだ教室には来ていないと聞いたし、机の上には次の授業で使われる教材が置いたままだし…」

「困りましたね、棗先生の次の授業って確か専門の天文学科の授業でしたよね?自習かけといた方がいいですかね?」

「そうねぇ…」

棗先生が居ないのか…?

「あの、棗先生が居ないって本当ですか?」

視線を戻し見ると何故か胸の前で手を組みほうけた顔をする英語教師に耳に入った話を疑問に思い問いかけた。

「え、ええ!本当よ」

「どこに行ったか心当たりとかあったりしますか?」

「心当たりかぁー…そう言えば最近、図書室で生徒に勉強教えてるって聞いた事あるようなないような…」

それってもしかして…ん?って事はがいる可能性も…

頭に浮かんだ予想に早々に体が動いた。

「すみません、やっぱり免除する生徒を星七 苺じゃなくて星野 桃にお願いします。それとグランドの道具倉庫の鍵を借りたいのですが…」

「えっ?ほ、星野さん!?それに、道具倉庫の鍵って…っ!?」

突然の変更や要望に戸惑う英語教師にしびれを切らし机に手をつく。

ガタッ!

「すみません、俺愚図ぐずな奴嫌いなんで早くしてもらえないですか?」

「っ…‥は、はい!!」

至近距離で言ったせいか頬を赤く染め頷きやっと動いた英語教師に内心ため息をつく。

はぁ…早く動いてもらわないと間に合わなかったら意味ないからな

壁にかざられている時計の針と英語教師の行動を見比べながらじりじりとせまる時間に苛立いらだちが増していった。

「はい、これグランドの道具倉庫の鍵ね!」

「ありがとうございます。では、失礼します」

受け取るなり早々に職員室を出ると一か八かで西校舎五階へと向かう。

もし、あいつが居たとしたら俺の仮説としてを知っている可能性があるかもしれない。もしそうなら、その時は…‥

そんな思惑おもわくを抱きながら結果的に図書室でのほふく前進から拉致らち、道具倉庫へとなったわけだが仮説としてあった予想はまんまと外れたのだった。

あんな的はずれな回答を聞くぐらいなら初めからあいつの授業免除も道具倉庫の鍵すらも借りるつもりなどなかった。だが…‥

久しぶりに感じる自分に向けた威圧するような鳳梨 グアバの強い眼光に何かを言い訳するような言葉の数々は無意味だとさとった。

「…すみませんでした。今回の件はさすがに軽率けいそつでした。言い訳もするつもりもないです」

「…‥‥」

凌牙の滅多めったにない素直すぎる言葉にグアバならず蜜柑までもが驚きで言葉をなくした。

…‥ブー…‥ブー…

「…‥っとメールか」

間を割るように鳴った携帯けいたいに気が抜けグアバが携帯を取る間に同じく気が抜けた蜜柑が口を開いた。

「凌牙がここまで言っているのですから今回は大目に見て許してあげてはどうですか?グアバ」

「ああ、そうだな。今回は大目に見るが次はないからな、凌牙」

「はい」

釘をすように言い凌牙の返事を聞くと手に取った携帯を開いた。

「一体誰から…‥‥こ、これは…っ!?」

「グアバ?」

携帯を見るなりプルプルとふる凝視ぎょうしするグアバの異様な様子に不思議に思い蜜柑が問いかけた。

「わ、悪い…勉強も実家の仕事も後だ。急に用が出来た!蜜柑少しの間頼んだ…っ!」

「え?グアバ…っ!?」

バタンッ!!!

携帯片手に勢いよく出て行ったグアバに呆気にとられながらも頭を抱えた。

「はぁ、また勝手な事を…少しは振り回される身にもなって欲しいものです。期末や各々の事情で皆忙しい中で凌牙も生徒会の仕事をしてくれているというのに…」

「俺は別にしたいからしてるだけで……それより、さっきから蜜柑先輩の携帯も鳴ってたみたいなんですけど出なくていいんですか?」

凌牙の言葉にふと自分の席に置いていた携帯を見ると気づかないうちに画面の光が点滅てんめつしていた。

「気づきませんでした。一体誰からなのでしょ…‥フッ‥」

「蜜柑先輩?」

携帯を見るなり不敵な笑みを浮かべた蜜柑の姿に凌牙が首を傾げると直ぐに携帯を閉じポケットに入れ先程とは違い生き生きした姿で笑みを向けた。

「すみません、私もちょっと要件が出来ましたので少しの間任せてもよろしいですか?凌牙」

「要件って一体…?」

「ふふっ、少々厄介やっかいな事になる前に止めに(お仕置きしに)行くだけですよ」

「あー…了解です」

蜜柑の笑顔の裏にある黒い何かを察した凌牙はそれ以上掘り下げるのは止め素直に承諾しょうだくした。

「では、直ぐに戻りますので…」

…バタンッ…‥

「厄介な事か…‥逆に悪化しなければいいが…」

蜜柑が居なくなった扉を見つめ、これから暴走しそうな彼の身をあんじるのだった。


































    
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