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二章 《教育編》~夏の誘い~
努力する天才
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期末テスト開始まで本日を入れると残り四日になり本当なら早々に帰宅してテスト勉強を始めるのだが、抜き打ちテストで赤点を取り罰としてプール清掃をする事になった星野 桃は目の前で泳ぐ梅木 ライチを見ながら物思いにふけっていた。
あの写真を削除してもらう為には期末テストで良い結果を出さないと…‥
脳内に浮かぶのは今朝届いた桜桃 凌牙からの一枚の写真付きのメールだった。その一枚の写真はボールペンのインクを頬に付けたまま突っ伏して眠る自身の姿であり、それを削除して欲しいのであれば期末テストで良い結果を出せという内容だったのだ。
あの後、頬のインクを落とすの大変だったんだよね。水性だったからまだ助かったけど
「…ぇ…‥」
…‥ん?
バシャッ!!?
「わっ!!?」
突然下から水がかかり驚きで後ろに体が仰け反りそうになり反射的に片手を床に置き体勢を保つ。
「ねぇ、タイムは?」
「あ…‥‥」
いつの間にか泳ぎ終わっていた梅木 ライチに真顔で問いかけられ慌てて手に持っていたタイムウォッチを見ると時間が進み続けていた。
ヤバいっ!?またやってしまった…
「…ごめんなさい。止めるの忘れて…‥」
申し訳なさそうに謝罪するが梅木 ライチの表情が変わることは無かった。
一回だけじゃなくて二回も押し忘れされたら流石に怒るに決まってるよね
成り行きだったが期末テストが終わって直ぐに始まる水泳大会まで梅木 ライチの泳ぎの練習を手伝う事になり、その中で彼が真剣に泳いでいる姿を見てきた桃は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「……寝てる?」
「え?」
沈黙が終わり口を開くなり怒りの言葉でもなく突き放す言葉でもない予想外の一言に思わず聞き返してしまった。
「勉強で寝不足じゃないか…って‥」
「昼休みに寝たから大丈夫」
本当は早々に昼ご飯を食べて図書室で勉強するつもりだったけど、徹夜したせいで睡魔に負けて爆睡してしまったんだよね
「じゃあ、凌牙との勉強が大変?」
「それは…大変だけど覚えて解く事が出来ていってるから大丈夫」
「そう。凌牙は色々気にしてしてくれるし優しいから…頼れる」
「え…‥」
優しい…‥か?
ライチの耳を疑うような言葉に脳裏に過ぎったのは鬼のようにスパルタで指導する凌牙の姿と今朝の脅しともとれるメール内容だった。
「‥‥色々気にしてくれるってどんな風に?」
「生徒会の仕事を代わりにしてくれたり、寝てたら上着掛けてくれたり…あと寝癖も直してくれる…」
「…そうなんだ」
それって梅木 ライチに対して世話をせずにはいられないからなんじゃ…‥梅木 ライチ限定の優しさだよそれ…
普通に想像がつく梅木 ライチを世話する桜桃 凌牙の姿に苦笑いが零れた。
…ん?それよりもさっきから気になってたけどもしかして…
「あの、ずっと気になってたけどもしかして心配‥してくれてる…?」
「心配?…‥‥‥‥‥‥‥‥してる」
「っ…‥」
長く考え込み口を開くなり真顔でさらりと言い返すライチに言葉を詰まらせた。
そんな正直に言われると逆に困る…っ
「…ありがとう」
「うん」
何だろう?この微妙な空気…でも、最初の頃と比べたら話しやすくはなったかも…これなら聞きたかった事を質問出来るかもしれない
「あの、これもずっと気になってたんだけど…何で泳ぎの練習をしてるの?」
「それは…‥‥」
…バシャッ…ポタ…ポタ…ポタ…
ライチは言葉を途切れさせ隣に移動するなり、水の中から出るとタオルを頭に乗せその場に座り込んだ。
「…‥皆から推薦されたから」
あれか!イケメンの容姿のみならず生徒会監査という肩書きも含め茶道家の顔を持つ梅木 ライチの人気がクラスの生徒全員の推薦にあってしまったわけか…
「本当は泳ぐの好きじゃないから断ろうと思ったけど、皆の顔見てたら断れなかった。それに、水泳大会頑張ったら苺がかっこいいって思ってくれると思ったから…」
九割方苺の為って事かな
「なんて言うか…昨日、木通くんが”何でも出来る天才肌”って言ってたけど違うんだなって思った」
「…?」
「泳ぎが好きじゃないのにクラスの皆や星七さんの為に見えないところで泳ぎの練習して頑張ってて…何でも出来る天才より凄いと思う。だから、何でも出来る天才じゃなくて努力する天才だね」
「っ…‥初めて言われた」
隣で目を見開きながら言うライチに小さく笑みを浮かべた。
「…他には?」
「え?」
「他に聞きたい事あるなら答える」
え、いいのか?確かに聞きたい事はまだあるけど
思いもよらないライチの言葉に聞いていいのか戸惑いつつも口を開く。
「じゃあ、その…‥プールで会う前に私と会って話した事覚えてる‥?」
「…‥‥新手のナンパ?」
恐る恐る質問した内容に眉を寄せ怪訝な顔をするライチの反応に驚きで目を見張る。
これは一切覚えてない反応だよね
窓枠から入ろうとしていた際に頭とおでこがぶつかり話した事も、林間合宿で丸太を運ぶのを手伝おうとした際に話した事もライチの反応から一切覚えが無いのは一目瞭然だった。
「ごめん、勘違いだったみたい。気にしないで」
苦笑いを浮かべながら謝罪の言葉を口にし何でもないと言わんばかりに気にしないでと付け加えた。
「うん、分かった。他には?」
「他?」
えーと、他?他には…‥
「‥何で質問に答えてくれるのかなっとか‥?」
本当は何で触れられる事をそんなに避けるのか?とか聞きたかったけど流石に答えにくい質問だと思うし…
「最初は君の事凄く気持ち悪くて邪魔な存在だと思ってた」
だから、そこまで正直に言わなくても…っ!
「…でも、今は君が居ると安心する」
「え?」
「だから、答えたくなった」
そう思ってくれるなら此方としても嬉しい限りだが…
「で、でも二人で練習してる所なんて星七さんに知られて誤解でもされたら大変だよね」
あ…しまったぁぁぁぁぁぁっ!!?微妙な空気に負けてつい口にしてはいけない言葉を…っ!
内心動揺しながらも恐る恐るライチの様子を伺うと何故か首を傾げながらキョトンとした顔になっていた。
え?どういう事?
「誤解って何で?」
はい?
不思議そうに問いかけるライチにこっちが首を傾げてしまった。
「嫉妬とか妬いたりして誤解してしまうんじゃないかって…」
「嫉妬?妬くって何?」
もしかして、嫉妬すらも分からないと…!?
「えーと…好きな人が異性と仲良くしたりしてるのを見ると嫌な気持ちになったりする事かな」
「…‥苺には当てはまらないから大丈夫」
「え…何で分かるの?」
「苺の表情や声を聞いたら分かる。それに、僕が一方的に好きだっただけだから」
「だった…?」
何故過去形なんだ?
「最近、苺のそばに居ると違和感を感じる」
「違和感?」
「幼い頃、苺を好きだと思ったのが二回ある。一回目は空港で初めて会った時の事。でも、最近その出来事を思い出そうとすると頭が痛くなる…」
その出来事はヒロインではなく私だ。幼い頃、離婚した父を母と一緒に空港まで見送った際にお婆さんの荷物を運ぶライチを手伝ったのだが何故かその話がヒロインである星七 苺の話になっているというのはライチに限った話じゃない。例に同じ攻略対象者である鳳梨 グアバも同等の話をしていたから、もしかしたら他の攻略対象者全員がそうなのかもしれないな。
「二回目は…‥身動き出来なくて怖くて諦めかけた時、苺が助けてくれた事」
「え…‥一体何があっ‥て‥」
突然表情が暗くなったライチに口に出しながらも言葉が途切れていった。
「あの時は確か…‥父上主催のお茶の体験教室があって………」
それは桃と出会った後の出来事。梅木 ライチが七歳の頃の話だったー…‥
あの写真を削除してもらう為には期末テストで良い結果を出さないと…‥
脳内に浮かぶのは今朝届いた桜桃 凌牙からの一枚の写真付きのメールだった。その一枚の写真はボールペンのインクを頬に付けたまま突っ伏して眠る自身の姿であり、それを削除して欲しいのであれば期末テストで良い結果を出せという内容だったのだ。
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「…ぇ…‥」
…‥ん?
バシャッ!!?
「わっ!!?」
突然下から水がかかり驚きで後ろに体が仰け反りそうになり反射的に片手を床に置き体勢を保つ。
「ねぇ、タイムは?」
「あ…‥‥」
いつの間にか泳ぎ終わっていた梅木 ライチに真顔で問いかけられ慌てて手に持っていたタイムウォッチを見ると時間が進み続けていた。
ヤバいっ!?またやってしまった…
「…ごめんなさい。止めるの忘れて…‥」
申し訳なさそうに謝罪するが梅木 ライチの表情が変わることは無かった。
一回だけじゃなくて二回も押し忘れされたら流石に怒るに決まってるよね
成り行きだったが期末テストが終わって直ぐに始まる水泳大会まで梅木 ライチの泳ぎの練習を手伝う事になり、その中で彼が真剣に泳いでいる姿を見てきた桃は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「……寝てる?」
「え?」
沈黙が終わり口を開くなり怒りの言葉でもなく突き放す言葉でもない予想外の一言に思わず聞き返してしまった。
「勉強で寝不足じゃないか…って‥」
「昼休みに寝たから大丈夫」
本当は早々に昼ご飯を食べて図書室で勉強するつもりだったけど、徹夜したせいで睡魔に負けて爆睡してしまったんだよね
「じゃあ、凌牙との勉強が大変?」
「それは…大変だけど覚えて解く事が出来ていってるから大丈夫」
「そう。凌牙は色々気にしてしてくれるし優しいから…頼れる」
「え…‥」
優しい…‥か?
ライチの耳を疑うような言葉に脳裏に過ぎったのは鬼のようにスパルタで指導する凌牙の姿と今朝の脅しともとれるメール内容だった。
「‥‥色々気にしてくれるってどんな風に?」
「生徒会の仕事を代わりにしてくれたり、寝てたら上着掛けてくれたり…あと寝癖も直してくれる…」
「…そうなんだ」
それって梅木 ライチに対して世話をせずにはいられないからなんじゃ…‥梅木 ライチ限定の優しさだよそれ…
普通に想像がつく梅木 ライチを世話する桜桃 凌牙の姿に苦笑いが零れた。
…ん?それよりもさっきから気になってたけどもしかして…
「あの、ずっと気になってたけどもしかして心配‥してくれてる…?」
「心配?…‥‥‥‥‥‥‥‥してる」
「っ…‥」
長く考え込み口を開くなり真顔でさらりと言い返すライチに言葉を詰まらせた。
そんな正直に言われると逆に困る…っ
「…ありがとう」
「うん」
何だろう?この微妙な空気…でも、最初の頃と比べたら話しやすくはなったかも…これなら聞きたかった事を質問出来るかもしれない
「あの、これもずっと気になってたんだけど…何で泳ぎの練習をしてるの?」
「それは…‥‥」
…バシャッ…ポタ…ポタ…ポタ…
ライチは言葉を途切れさせ隣に移動するなり、水の中から出るとタオルを頭に乗せその場に座り込んだ。
「…‥皆から推薦されたから」
あれか!イケメンの容姿のみならず生徒会監査という肩書きも含め茶道家の顔を持つ梅木 ライチの人気がクラスの生徒全員の推薦にあってしまったわけか…
「本当は泳ぐの好きじゃないから断ろうと思ったけど、皆の顔見てたら断れなかった。それに、水泳大会頑張ったら苺がかっこいいって思ってくれると思ったから…」
九割方苺の為って事かな
「なんて言うか…昨日、木通くんが”何でも出来る天才肌”って言ってたけど違うんだなって思った」
「…?」
「泳ぎが好きじゃないのにクラスの皆や星七さんの為に見えないところで泳ぎの練習して頑張ってて…何でも出来る天才より凄いと思う。だから、何でも出来る天才じゃなくて努力する天才だね」
「っ…‥初めて言われた」
隣で目を見開きながら言うライチに小さく笑みを浮かべた。
「…他には?」
「え?」
「他に聞きたい事あるなら答える」
え、いいのか?確かに聞きたい事はまだあるけど
思いもよらないライチの言葉に聞いていいのか戸惑いつつも口を開く。
「じゃあ、その…‥プールで会う前に私と会って話した事覚えてる‥?」
「…‥‥新手のナンパ?」
恐る恐る質問した内容に眉を寄せ怪訝な顔をするライチの反応に驚きで目を見張る。
これは一切覚えてない反応だよね
窓枠から入ろうとしていた際に頭とおでこがぶつかり話した事も、林間合宿で丸太を運ぶのを手伝おうとした際に話した事もライチの反応から一切覚えが無いのは一目瞭然だった。
「ごめん、勘違いだったみたい。気にしないで」
苦笑いを浮かべながら謝罪の言葉を口にし何でもないと言わんばかりに気にしないでと付け加えた。
「うん、分かった。他には?」
「他?」
えーと、他?他には…‥
「‥何で質問に答えてくれるのかなっとか‥?」
本当は何で触れられる事をそんなに避けるのか?とか聞きたかったけど流石に答えにくい質問だと思うし…
「最初は君の事凄く気持ち悪くて邪魔な存在だと思ってた」
だから、そこまで正直に言わなくても…っ!
「…でも、今は君が居ると安心する」
「え?」
「だから、答えたくなった」
そう思ってくれるなら此方としても嬉しい限りだが…
「で、でも二人で練習してる所なんて星七さんに知られて誤解でもされたら大変だよね」
あ…しまったぁぁぁぁぁぁっ!!?微妙な空気に負けてつい口にしてはいけない言葉を…っ!
内心動揺しながらも恐る恐るライチの様子を伺うと何故か首を傾げながらキョトンとした顔になっていた。
え?どういう事?
「誤解って何で?」
はい?
不思議そうに問いかけるライチにこっちが首を傾げてしまった。
「嫉妬とか妬いたりして誤解してしまうんじゃないかって…」
「嫉妬?妬くって何?」
もしかして、嫉妬すらも分からないと…!?
「えーと…好きな人が異性と仲良くしたりしてるのを見ると嫌な気持ちになったりする事かな」
「…‥苺には当てはまらないから大丈夫」
「え…何で分かるの?」
「苺の表情や声を聞いたら分かる。それに、僕が一方的に好きだっただけだから」
「だった…?」
何故過去形なんだ?
「最近、苺のそばに居ると違和感を感じる」
「違和感?」
「幼い頃、苺を好きだと思ったのが二回ある。一回目は空港で初めて会った時の事。でも、最近その出来事を思い出そうとすると頭が痛くなる…」
その出来事はヒロインではなく私だ。幼い頃、離婚した父を母と一緒に空港まで見送った際にお婆さんの荷物を運ぶライチを手伝ったのだが何故かその話がヒロインである星七 苺の話になっているというのはライチに限った話じゃない。例に同じ攻略対象者である鳳梨 グアバも同等の話をしていたから、もしかしたら他の攻略対象者全員がそうなのかもしれないな。
「二回目は…‥身動き出来なくて怖くて諦めかけた時、苺が助けてくれた事」
「え…‥一体何があっ‥て‥」
突然表情が暗くなったライチに口に出しながらも言葉が途切れていった。
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追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
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