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We hope your Halloween is a ”Treat”!
We hope your Halloween is a ”Treat”!【6】
しおりを挟む「足りないって?」
挙手までして聞いてきたのはヴィニーだった。安心安定の即レス。
欲しかったのと真逆の答えにがっかりした半面、『ああ、やっぱりそうだったんだ』と思う気持ちもあって。
「『名古屋城のしゃちほこが天守にない』みたいな違和感……みたいな? いや、ガチで一時期いなかったけどさ。地上で展示するとかで」
それでも、探りをかけるのをやめられない。
一縷の望みをかけてるってより、ほぼほぼ祈りだったけど。
四人もいるんだしさ、私の他にもう一人くらい気付いててもよくない?
「しゃちほこのない名古屋城は確かに『なにか足りない』だろうが、僕にはこの景色が不完全なものには見えない。いつもと同じだ。なにひとつとして変わっていない」
悪意なんてまったくないスーが、わずかな希望を粉砕していった。
「……そっか、私だけか」
返事はなんとかできたけど、『おかしいのはこっちのほうか』って言いたかったよ。本当は。
「カリンはそんなに花火が見たいんですか? ヴィニーが余計なことを言ったせいですね。責任取って、大きい花火打ち上げてきてください。五分あげますから」
『足りない』をそう解釈したパックは、かぐや姫並みの無理難題をヴィニーに命じた。
「ええ!? さすがにそれは言いがかりでしょ~。ていうか、それは俺じゃなくても無理だから! オールラウンダーなパックにだってできないんじゃない?」
否定しようとしたけど、パックが喋り出すほうが早かった。
「おっしゃるとおりですね。そんなことができたら超人です。仕方ないので、時間は倍あげましょう」
「十分と十分は違うからね!? 漢字は同じだけど!」
「……おい、ふたりとも。違うだろう。いまはそんなことで言い合っているときではない」
そろそろふたりのイチャイチャ(違)を止めようかと思ったところで、ヴィニーとパックの間に物理的に割って入ったのはスーだった。
ありがとう。会話のテンポ良すぎて、つい聞き入っちゃってたわ。
「そうだよぉ。ねぇカリン、なにが足りないの?」
凛とした声のあとに聞こえてきたのは、のんびりした声だ。
「……本当にわからない?」
こんなめんどくさい彼女みたいな発言をする日が来るなんて。
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