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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<CXLIV>
しおりを挟む「…………顔…………だけ?」
吸い込まれそうな瞳の真ん中に陣取るわたしも、わたしと同じように腑に落ちない顔をしていることだろう。
(君がわたしを『かわいい』って思ってくれてるのも、それを毎回伝えてきてくれるのも嬉しいけど…………)
「ん?♡」
前髪で片目を隠されても半減することのない目力に怯みつつ、心の海に浮かんだ言葉を拾い上げた。
「わたしも君のお顔大好きだし、ずっと見ていたいなぁと思うけど、お顔だけじゃ嫌だよ? ……他のところも見たいよ……?♡♡」
「…………へぇ?♡♡ 『他のところ』って、具体的に言うとどのあたり?♡♡」
すると、彼は髪を掻き上げて双眸をあらわにした。
(訊かれなくてもちゃんと言うつもりだったのに……♡ あんまり急かしたりしないのに、こういうときだけせっかちさんなんだから……♡♡)
嘘発見器よりも正確に心を見抜く目なんて出されなくても本心を告げるつもりでいたし、わざわざ尋ねられなくても言うつもりでいたわたしは、結構しっかり敗北感をおぼえて上下の歯を合わせた。
「腹筋はどうなってるのかなぁとか……♡ 脚も腕みたいに筋張ってるのかなぁとか…………♡ 最近のわたし、ずっとおかしいの。気付いたら、そういうことばっかり考えてて…………♡♡」
視線を合わせて左の頬を包んだら、彼は鼻筋にキスをひとつくれた。
(……キスのおねだりだと思われちゃった……♡♡ してほしくないときなんてないからいいけど、不意打ちでされるとやっぱりどきどきがすごいなぁ……♡)
ハグもキスもふわっと軽い彼は、どんなふうに女の子を抱くんだろう。いまのわたしは、なにをされても言われても、期待に胸を膨らませてしまう。
(意外と全然優しい感じじゃなかったりして…………♡♡)
「…………はいはい、なるほど♡♡ なんとなくわかってきたかも♡ つまり、きみはさ……♡ 俺に抱かれたい以上に、俺のカラダがどうなってるかってことに興味があるんだね?♡♡ まぁそうだよね♡ いつも触ってて、でも実際には一度も見たことないんだから、気になるのは当然だ♡ 好奇心旺盛なのはいいことだよね♡♡」
彼はシャツのボタンをひとつ外し、少ししてからその下のボタンも外した。深すぎるVネックを着用しているかのような状態になった彼の露出した部分を素直に見てしまうのはなんとなく悔しかったけれど、白く陰影の美しい肌を前にして抗うことは決して容易いことではなかった。
「そんな感じ……♡ 順番も…………。『カラダ見せてもらうほうが抱いてもらうより先かなぁ』って……♡」
「そうだね♡ どんなカラダしてるか知ってもらってからのほうが感じてもらいやすくなるかもしれないし…………♡♡」
彼が話すあいだにボタンはすべて外れていた。
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