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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<CLXI>
しおりを挟む(いま、彼のなかで『わたしと一緒に死にたい』と『わたしと一緒に生きたい』のどっちが優勢かわからないけど、『一緒に生きたい』のほうに意識向けてくれたらいいな……)
祈りを込めて念じていると、背中に置かれていた手がホックの位置を探るような怪しい動きを見せた。
(や…………、やっぱりこの恰好でああいうこと言ったら、そういう意味だって思われるよね……! わかって言ったつもりだったけど、急にされると、本当に心臓破れそうなくらいどきどきしちゃうよ……!)
彼がどういう意味で採ってきてもいいように心構えをして臨んだはずが、いざ次のステップへ進むとなると及び腰になってしまう。
(『もうこれ以上待てない』って思ってたのはわたしだから、逃げたり止めたりしないけど…………)
「…………『ドキドキすること』?♡♡ たとえば、こういうこととか?♡♡」
身を固くして次なる行動を待ち構えているわたしにもたらされたのは、お互いとは未経験の刺激的なスキンシップ――――ではなく、そっと唇に触れるだけのキスだった。
(…………外さ……ない……? 取ってくれてよかったんだけどな……♡♡ 隠したくなったら、わたしから抱き着けばいいだけだし……♡ ちょっと残念……)
「それとも、こんな子どものキスじゃきみはもうドキドキしてくれなくなっちゃったかな?♡♡ ……あぁ、きみを責めてるわけじゃないから安心して?♡ 俺が大人のキスばっかりして、きみのカラダに教え込んじゃったせいだから、罪悪感なんて感じなくていいからね♡」
わたしは不満げな表情をしてしまっていたのだろうか。唇を離した彼はくすっと上品に微笑んだ。
(君には全部お見通しなの?♡)
彼はいつもと同じように話しているだけなのに、唇の動きさえ妖艶に映って、頭がぼーっとしてきた。
「どきどきするよ?♡ 君に触ってもらうと、いまもどきどきしちゃう♡ 手でも唇でも他のところでも……♡♡ だけど、君と一緒にできる『どきどきすること』って他にもあるよね?♡♡ ……こういうこととかも……♡♡」
もう一度彼の身体を抱き締め直す。ただ抱き締めるのではなく、自分の身体を彼に擦り付けるようにして。
「確かに♡ でも、いつものハグとちょっと違うね?♡♡ 大胆なきみもかわいいなぁ♡」
「このくらいでも大胆だと思う?♡ 他にもまだあるよ?♡ もっとどきどきしちゃうこと……♡♡」
「知ってるよ♡ ……わからないわけないって。俺たちがまだお互いとはしたことないことだよね?♡♡」
彼の両手に顔を下から支えられ、やや強引に上を向かされた。返事をするために開いた口は、声を発する前に塞がれた。
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