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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<CLXXXV>
しおりを挟む「…………ふふ。……ごめんね? わざと試すようなこと言っちゃって。……本当は、少しずつ進んでいけばいいってわかってるし、俺自身もそう思ってるのにね……」
這い回っていた手が動きを止めるのと、彼が言葉を切るのとはほぼ同時だった。
「少しずつ?」
「うん。俺の言い方のせいで、『なんにもしない』と『最後までする』の2択みたいに思わせちゃったかもしれないけど、そうじゃないよ。全然そんなことない。……様子窺いすぎて足踏みしてたのは自分なのに、いまになって焦ってるというか、『俺たちのペースは、本当に俺たちにとって正しいペースだったのかな?』って思い始めてるせいで、またきみに頼ろうとした。『どっちでもいい』とか、『相手に任せる』って、優しさじゃなくて無責任の証明なんだよね……」
ぎゅっと瞑られた目に、眉間に寄った皺に、彼の苦悩が垣間見えた気がした。
「……もしかして、迷ってるの? 今日、どこまで行けばいいのか……」
「かっこ悪いけど、実はそう。…………俺たちくらいの年になるとさ、付き合ってすぐ関係持ったりとか、わりと抵抗ない人が多いというか……。極端なところでいくと、『付き合ってるのに、してないなんてありえない!』みたいな考えの人もざらにいたりするでしょ。俺は全然そういうふうには思ってないんだけど、自分の考えに固執しすぎてた気がするんだよね」
「それは…………でも、わたしのためでしょ? わたしの身体のこととか考えてくれて、大切にしてくれてるから、君はずっと我慢してくれてて」
「…………のつもりだったし、そういうことにしておけたらいいんだけど、万が一のことがあったときに、責任取れるだけの能力がいまの俺にある自信が持てなかっただけ……といえば、本当にそのとおりだし」
(君はまた『大切にしたい』って理由で、わたしのこと…………)
「…………あぁっ、違う違う! 泣きそうなお顔しないで? いや、俺の話し方が下手なせいか……。とにかく、この期に及んで、なんにもしないで帰す……なんて、俺にはできないから。…………きみの泣き顔とか、泣きそうになってるときのお顔とか……いろんな意味でまずいから…………♡♡ かわいすぎて、なんていうか……♡ もうほとんど話しちゃってるみたいなものだけど、まだ内緒ね?」
だんだん雲行きが怪しくなってきて、今日もまただめなのかと早合点して鼻を啜ったら、彼がびくっと身体を跳ねさせて、背中を優しくとんとん叩いてくれた。
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