三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<CLXXXVII>

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「ベッドで手繋ぐのって、なんか特別な感じするね♡♡」

 それを見た彼は、わたしにもよく見えるように繋いだ手を起こした。

「そうかも。……でも、なんでかなぁ? 繋ぐ必要がないから……とか?」

 繋がれた手をまじまじと見つめて考える。歩くときはしない繋ぎ方をしたわたしたちの手は、指や爪の長さから手の大きさまで違うことだらけだ。

「確かに。歩くときに手を繋ぐのは、なにかしら理由があるもんね? 『はぐれないようにするため』とか、『歩幅を合わせやすくなるから』とか…………。あと、寒い季節なら、『繋いだほうがあったかいから』みたいな理由で繋ぐこともあるかな? 『恋人と歩くときには手を繋ぐものだ!』みたいな思い込みに従って、そのとおりにしてるだけ……って人も、中にはいるかもしれないけど。あとは……そうだなぁ。個人的には、手を繋いでラブラブな雰囲気でエッチする妄想とかもしちゃうかな♡♡」

 気のせいだろうとは思うけれど、話が進んでいくにつれて彼の手がより熱くなっていっているように思えた。

「! …………君は? 君は、わたしと歩くとき、絶対手繋いでくれるけど、どういう理由で繋いでくれてるの?」

「うーん、そうだなぁ……。人が多い場所だったら、『はぐれないように』って理由も入ってくるけど、基本的には『繋ぎたいから』♡♡ 大好きな彼女に触れられるチャンスは、一度だって逃したくないでしょ♡ だんだん手繋いでるだけじゃ足りなくなってきちゃうけどね♡ ……でも、人前でイチャイチャするのは好きじゃないって聞いてるから」

 彼はそこで言葉を切り、もう一度口を開いた。

「…………最初は正直、『見せびらかせなくて残念だな』って思っちゃってたんだけど、いまは『きみが人前でイチャイチャするの苦手でよかった』って思ってる。……触れられるのは俺だけでも、お顔はその場にいたら見放題だもんね? ……そんなの許せるわけないって。こんなにかわいいお顔、他の奴になんか見せられない……♡♡ 俺が一生、独り占めするって決めてる……♡♡」

 握られたのは手だったのに、心臓を握り潰されたような感覚が襲ってきたのは、冗談では済まされないほど強い独占欲をその台詞と行動に嗅ぎ取ってしまったからだろうか。

「うん、独り占めして?♡♡ わたしの全部は、君のものだから……♡ 全部、君のものにしてほしいから…………♡♡ だから、手じゃないところも触って……?♡ 他の人がいる場所でなんて、絶対に触れないところ♡♡ 君以外の人には、絶対見せないって決めてるところ♡♡ いまはわたしたちだけしかいないから、いままで我慢してくれてた分、いっぱい触って……?♡ わたしのカラダ、好きにしてくれていいよ……♡」

 精一杯の誘惑のつもりで、空いているほうの手を胸板に滑らせる。手のひらの盛り上がった部分に触れた乳首は硬くなっていた。
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