三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<CLXXXVIII>

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(……ここって、男のひとも気持ちいいのかな……?♡♡)

 ほんの一瞬、片目を瞑ったように見えた理由として思い当たるものが乳首に受けた刺激に対抗するための反応くらいしかなかったけれど、わたしの知識はだいぶ偏っていて、事前に勉強として仕入れていたものはほとんど下半身にある男性器に関するものだった。

(…………違う。わたしは『普通の男の人がどうか』なんてこと、知る必要もないし、どうでもいい。『彼がそこで気持ちよくなれるかどうか』だけ知りたい……♡♡ 彼が『女の子が』って言うときは、『普通の女の子がどうか』じゃなくて『わたしがどうか』って意味で言ってくれてるもん。……彼にとっての『女の子』がわたしだけなのと同じで、わたしにとっての『男のひと』だって彼だけだよ)
 
 ダイレクトな愛撫に移行するのも露骨すぎてかわいくないかと思い、いまはそこに手のひらの膨らみを置くだけにとどめておくことにした。

「俺の好きなこと、なんでもしていいってこと?♡♡」

 いつもどおり柔和な笑みを浮かべた彼は、わたしの手の行方には触れず、先ほどの大胆な誘い文句について確認を取ってきた。

「してほしい……♡ 君にしてもらって、やっぱりだめそうって思ったら、ちゃんと言うから…………。ね、お願い♡♡」

「了解♡♡ ……でも、きみはなにをされるとしても、心の準備はしておきたいってタイプだよね?♡」

「させてもらえたら、助かる……かな?」

「それじゃ、とりあえず先に俺のしたいと思ってることを聞いてもらおうかな♡♡」

「うん。…………聞かせて?」

 こくりと頷くと、彼が舌舐めずりをした。
 
「…………俺さ、さっききみのお肌舐めさせてもらって思ったんだよね。『お肌でこんなに甘いなら、俺のこと受け入れてくれるところは、どんなに甘くておいしいんだろう?♡♡』って……♡♡」

 唇をひと舐めしてすぐに口のなかに戻っていった舌の、肉の色とぬめぬめぎらぎらとした質感が網膜に焼き付いて、目の前の景色と重なった。

「……そっちも舐めたいの?♡」

「当たり前でしょ♡♡ きみのカラダはどこもかしこもかわいくてかわいくて食べちゃいたいと思ってるんだから♡♡ 気抜いてたら、いつかうっかり噛み付いちゃうかもしれないし、そこだって舐めたくないはずがないよ♡ 考えただけで、口のなかよだれでいっぱいになってきた……♡♡」

(彼にだったら、噛み付かれてみたいかも♡♡ 絶対噛まないように気を付けてくれるだろうし、『噛んでほしい♡』って言ってもしてくれないか、痛くないように甘噛みしかしてくれないかだと思うけど、歯形付いちゃうくらい、がぶって噛んでもらえたら嬉しいのになぁ……♡♡ キスマークより彼の所有物モノになれた気がしそうで……♡♡)

 粒の揃った真っ白い歯がわたしの肌を貫く場面が脳内で再生される。
 
 R-18というよりR-18Gな方面で彼を求める気持ちが強くなるあまり、唇のあいだには隙間が生まれていた。
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