三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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DESTINY CHAIN

DESTINY CHAIN<XVI>

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「…………ペアリング……ってこともないかもしれないけどね♡ 大好きな恋人とお揃いってだけで、特別でしょ?♡♡」

 無言で見つめ合うだけの時間を終わらせたのは、世界でいちばん好きな声だった。

「そうだね♡ 君とお揃いのものは、全部特別……♡」

 もっともな指摘を受け、軽率な発言だったと省みる一方で、彼のような考え方ができるひとのいちばん近くにいられるということのありがたみと幸せを噛み締めた。

「よかった♡♡ ……でも、ちょっと待てよ? 自分で言い出しておいてあれだけど、俺たちってなにかお揃いのもの……持ってたっけ?」

 彼の視線がわたしの左手と顔を行き来する。

「…………言われてみれば」

「「まだ…………ない?」」

 示し合わせたように、まったく同じ言葉を同じ間合いを取って言い、鏡写しのように同じだけ首を傾げた。

「あはは♡ すごく綺麗にハモったね♡♡ 合唱コンもこれくらい綺麗にハモれたら、優勝間違いなしだったのになぁ♡」

「確かに? でも、人数が違いすぎるんじゃないかなぁ……?♡」

「やっぱりそう思う?♡ 俺も言ってから全然違うなって思った♡ それに、きみほど俺に合わせられる人も、俺ほどきみに合わせられる人もいるはずないしね♡♡ ……なにはともあれ、きみが俺とお揃いのものを持ってくれる気でいるのがわかってよかったよ♡♡ そういうの苦手な子もいるからさ」

(…………元カノさんたちともお揃いのなにか、持ってたのかな……。持ってたよね。ストラップとかアクセサリーとか、何年か前からペアもの流行ってるし、どこに行ってもたくさん売ってるもん。……いまも使ってたりするのかな。物を大切にするひとだし。……誰もなにも悪くないけど、もしそうなら少し嫌……って思っちゃう自分が嫌だなぁ)
 
「次のデートの行き先、決まったね♡♡ 指輪売ってるところツアー♡ きっと何箇所か回れば、ひとつくらいぴったりなのが見つかると思うんだよね♡♡」

際限なく落ちていくかに思われた気分を再び急浮上させたのは、彼の提案だった。

「やっぱり指輪なの?♡ ……お互い、いちばん苦手なアクセサリーなのに?」

「うん。いちばん虫除けになりそうかなって。恋人いる女の子のアクセサリーが、全部そいつからの贈り物なわけないと思うけど、指輪って嵌める指によってはかなり強いメッセージ込められると思うし、左手薬指に嵌まってたら、『特定の相手がいるのかな』って、常識的な感覚の人は思ってくれるし、牽制になる。俺は、きみは俺の彼女だよってアピールしたいんだ。俺もきみの彼氏だぞってアピールしたいし」

「わたしは君のもので、君はわたしのものですよ……って?♡♡」

 改めて口にしたら、幸福の過剰摂取でげっぷの代わりにため息が出た。
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