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DESTINY CHAIN
DESTINY CHAIN<XV>
しおりを挟む「確かに俺は、ただの……ファッションのための指輪は、永遠に伸ばせない爪と同じくらい鬱陶しく思っちゃうだろうけど。でも、自分の手をこうやって翳して見るだけで、きみのこと思い出せるなら……鬱陶しいなんて思いっこないんだよ。絶対。きみとの愛を誓った指輪なら、ちゃんとした名前がついてないやつでも。極論でいくと、お祭りの屋台で買えたり、食玩買ったらついてくるような、おもちゃの指輪でもね。もちろん、贈るからにはちゃんとしてて、きみに似合う指輪を贈るけど」
彼は、繋いでいないほうの手を肩より上に上げ、まるで指輪が嵌められているかのよう――――嵌められた指輪をさまざまな角度から眺めているかのようだった。
「…………わたしもそう思う」
「もっと早く気付いて、見に行ってればよかったね。お買い物デートはいままでだって何回もしてるし、アクセサリー置いてあるようなお店だって、何回も入ってるのに」
「……今度、買いに行く? わたしの好きな雑貨屋さん、かわいい指輪も置いてるの」
白い部分が限りなく削られ、角のないように整えられた爪を見て、鬱陶しいというのも爪を短く保っている理由のひとつではあるのだろうけれど、わたしを傷付けないようにという配慮もそのなかのひとつに数えられるのではないかと思った。
「いいね♡ 俺は、ジュエリーショップにも行きたいなぁと思ってるんだけど♡♡」
「屋台でも、食玩とかおもちゃの指輪でもいいんじゃなかったの?♡」
「そうだけど、贈るからにはきみに似合う指輪をちゃんとしたお店で買いたいとも言ったでしょ♡♡」
「……ありがとう♡♡ わたし、アクセサリー詳しくないけど、君の気持ちはすごく嬉しい♡」
「…………というか、待って。そうだよ、そうだった……! 俺だけじゃないな。きみもだよね? きみがネックレスとかイヤリングとか……あと、ブレスレットもしてるの見たことあるけど、指輪してるところは一回も見たことないよ。俺に合わせてくれてるだけ?」
「……冷たいから」
「え? いや、確かに冷たいだろうけど……。素材が素材だし?」
「うん。嵌めるだけなら、そこまで気にならないんだけど……。指をね、こうやって揃えると…………、隣の指がひんやりするのが苦手で」
首を傾げた彼によく見えるように、指の間をなるべく大きく開けたパーを作ったあと、5本の指をぴちっと揃えた。
「な…………るほどなるほど……?」
「あと、わたし、たぶん手を洗う回数が普通の人より多くて……。手洗うときに、いちいち着けたり外したりするのが面倒で。それ考えると、君とは感覚が似てるのかもしれないね? 指輪は……いくつか持ってるけど、滅多に着けることなくて、インテリアの一部みたいになってるし。でも、やっぱり……どっちかっていったら、指揃えたときに隣の指がひんやりしちゃうのが苦手ってほうかなぁ。わたしがあんまり指輪着けたいと思わない理由。君とお揃いの指輪なら、そんなこと思わないだろうけど! お風呂とか手洗うときとかも絶対外したくないと思う、婚約指輪でも結婚指輪でもないただのペアリングでも」
近い将来、わたしたちが左手の薬指に嵌めることになるのは、どんなデザインの指輪なんだろう。
期待に胸を膨らませ、彼の右手を握り直した。
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