三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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DESTINY CHAIN

DESTINY CHAIN<XVIII>

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「ん……♡♡」

「あ、ごめんね。急に触って」

 心地好くて漏れてしまった声を取り繕う前に、彼が謝罪を入れてきた。
 
「ううん。わたしは君のなんだから、好きにしていいよ…………♡♡」

 触れたぬくもりが離れていくのが嫌で、その上に自分の手を重ねる。

「……きみ、意味わかって言ってる?♡♡ ベッドの上で男に『好きにしていい』なんて、一番言っちゃいけないことなんじゃないかと思うんだけど……♡♡」

 腕から肩に上がってきた手が下りてきていた後ろ髪をひと束ずつ戻し、それを終えると、彼の手は鎖骨の終点から肩と腕の継ぎ目のあたりを往復し始めた。

「どうしてだめなの?♡♡ わたしはしてほしいことを言っただけだよ?♡」

「そうだとしても…………!」

「君がわたしを大切にしてくれてるのはわかるよ。いままでの人と全然違うから、ちゃんとわかる。はじめてえっちするまで、何ヶ月も時間掛かったことなかったし、はじめてちゅーしてくれたのも付き合って結構経ってからだったよね。…………でも、わたしは君の娘でもないし、妹でもないよ。ベッドで男のひとにそういうふうに言う意味だって、ちゃんとわかって言ってるから……」

「……そうだね。きみの言うとおり、俺は過保護すぎたよね。ごめん。反省したはずなのに」

「言葉じゃなくて、くれたらいいよ?♡♡」

 何回も謝られるより、名前を呼んでほしくて。

 たくさんの口付けよりも、一回でも構わないから、いままで経験したことのない深度で繋がって、お互いの存在を感じたくて。

 ふたりのあいだにぽっかり空いていた距離を、少しずつ詰めていった。

「お言葉に甘えて、今日は好きにさせてもらっちゃっていい?♡♡」

「もちろん♡ ……わたしのこと、めちゃくちゃにして……?♡♡♡」

「!」

 昂揚感に任せて大胆に誘いかけたら、普通にしていても零れ落ちてしまいそうな瞳が、いよいよコップのきわで表面張力だけを頼りに踏ん張っている水のようになった。
 
「めちゃくちゃに…………か♡♡ そうだなぁ♡ それじゃあ、今日はどういうふうにめちゃくちゃに抱かせてもらおうかな……?♡♡」

 しかし、その状態も長くは続かず、彼はその瞳をシャープな三日月型に細めた。
 
「あ…………あの、えっと! さっきの話だけど、わたしが寒がりなんじゃなくて、君が寒いのに強いだけだと思うよ?♡♡」

 途端に羞恥が危険水域に達し、誤魔化すように両手を顔の前で振った。

「そうかな?♡ でも、身体冷やすのは健康に良くないし、寒いときは俺のこと遠慮なく頼ってね♡♡ すぐにあったかくしてあげるから♡♡」

 次の瞬間、両手首は手錠をかけられたようにロックされ、熱を持った唇が唇に重ねられた。
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