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DESTINY CHAIN
DESTINY CHAIN<XIX>
しおりを挟む「……ん……♡♡ ……ふ、ぁ……♡♡」
酸素を求めて開いた口から、熱い舌が遠慮がちに侵入し、わたしの舌に恭しく挨拶をした。
(気持ちよすぎて、涙が勝手に出てきちゃう…………。泣いてばっかりで恥ずかしいなぁ。彼が目瞑ってくれててよかった……)
早々に瞳を仕舞った彼がぼやけ、やがて視界に映るすべてが渾然一体となって、抽象画の世界に迷い込んでしまったような錯覚に陥った。
「!」
遅れて目を閉じた次の次の瞬間くらいだっただろうか。
鋭く息を呑む音に目を開けると、彼と目が合った。
「ど…………どうしたの?」
心なしか青白い顔をした彼を気遣う言葉を掛けあぐね、仕方なしに簡素に尋ねた。
「きみ、寒くなかった!?」
すごい勢いで両肩を掴まれ、反射で身体を引いた。
「…………少しだけ?」
手を繋ぐときの何倍も強い力を感じ、彼が普段からどれだけわたしに負担や不快感を与えないために立ち回ってくれているかが身に染みて、再び涙腺が活性化した。
「いや、それ絶対少しだけじゃないやつでしょ!」
「でも…………!」
「……やっぱり。腕も背中もひんやりしてる。なんでさっき気付かなかったんだろう…………。ごめん、脱がせてからも俺が話し込んでたせいだ……」
用意していた言葉を渡すより先に、項垂れた彼が反省モードに突入した。
「…………わざとじゃないの?」
「そんなわけないでしょ!! きみに風邪引かせるようなことまでして焦らす理由なんてないし。ああ……本当にごめんね。こんなに冷たくなって…………」
(……雪山で遭難したとかでもない限り、出てこなさそうな台詞だなぁ……)
「返事もできないくらい凍えちゃった? ……ごめんね……。俺の体温、きみに全部あげられたらいいのに」
ひしと抱き締められ、ぬくもりに浸るでもなくぼんやりしていたわたしの背中や腕をさする彼は、どれだけお人好しなんだろう。
「……さっき、寒いときは頼っていいって言ってくれたよね?♡」
「? 言ったね?」
「早速、頼らせてもらいたくて…………♡♡ ……あ、でもね? 凍っちゃいそうなくらい寒いわけじゃなくて、君にあっためてもらえたら、すぐに大丈夫になるくらいだから……♡ わたしが寒くなくなるまで、あっためてくれる……?♡♡」
先ほどは遮られてしまったけれど、今度は最後まで言わせてもらえた。
だが、それだけでは不足かと思い、薄い耳たぶに口付けて、意外と広い背中を撫で回した。
「喜んで♡♡ 『寒くなくなるまで』じゃなくて、『寒くなくなっても』あっためててあげる……♡♡」
拙い誘いを正しく受け取った彼は、額を合わせて約束してくれた。
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