三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<XXI>

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「…………きみさ。最近、眠そうにしてること多くない?」

 待ち合わせ場所に着くなり、彼は背中を丸めて顔を覗き込んできた。
 
 朝一番からの王子様フェイスのドアップは心臓に悪い――――などと言っている場合ではない。挨拶を大切にしている彼が『おはよう』をスキップするなんて、よっぽどの緊急事態だ。

「えっ? ……そ、そうかな?」

 不機嫌な猫ちゃんのようなツン、もしくはスン……とした表情の彼に見つめられ、視線を彷徨わせてしまわないよう、にっこりと目を限界まで細くした。

「めちゃくちゃ笑顔じゃん。……君、朝は弱いんじゃなかったの? いつも眠そうで表情かおもほとんど変わらないし、反応も薄かったり遅かったりするのに」

 寝不足かどうかにかかわらず、わたしは毎朝、彼に醜態を晒してしまっていたようだ。
 
「え!? それは…………ええっと、朝から君のお顔が近くで見られて嬉しいなぁと思って……!」

「そんなことが嬉しいの?♡ ついでにキスしちゃう?♡♡ いまなら近くにだぁれもいないし♡♡」

 目を見開いて飛び込んできたのは、先ほどよりもさらに近付いた顔。ほんの少し背伸びをすれば、わたしからキスできてしまう。
 
「えっ、だめだめ! お外でそんなことできないよ……!」
 
 じりじり迫る彼に目で訴える。

「ちぇっ。『おはようのちゅー』の予行演習できると思ったのに。……っていうのは、まぁいいとして」

 嘴のように尖った唇がわたしの唇に触れる一歩手前で、彼は背筋を伸ばした。
  
「怪しいなぁ……。なにか隠そうとしてない? ちゃんと眠れてるの?」

「寝てはいるんだけど……。最近、昔の夢を見ることが多いせいかな……? あんまり寝た気がしないっていうか、気持ちが休まらない…………っていうか。でも、気持ちの問題だし、たいしたことじゃないんじゃないかな? 心配かけるようなこと言ってごめんね?」

 半端な嘘では簡単に見破られてしまうだろう。しぶしぶ最近の夢事情について話して、すぐにその話題を打ち切ろうとしたけれど――――。

、ねぇ…………」

 わざわざその部分を復唱した彼は、もっと詳しいことについて訊きたそうだ。

「君はないの? 昔の夢見ること。……夢のなかなんだから、そのときとは違う行動できるんじゃないかなって気になるんだけど、思うように動けなくて、結局昔とおんなじ結末こと着地するなるの……」

 睡眠事情について尋ねたら、彼はわたしの隣に移動し、そっと手を繋いできた。
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