96 / 489
Interlude
Interlude<LVI>
しおりを挟む「…………そっか。きみも俺と同じで不安だったんだね」
そこに掛けられたのは、そこはかとない安堵の滲む声だった。わたしが百面相しているあいだに、彼も彼でいろいろと考えていたらしい。
「不安……。うん、そう。すごく不安だよ。完全無欠の生徒会長様は、モテモテだし? ……女子で君のこと嫌いな子、ひとりもいないんじゃないかなぁ。生徒会長様というか学園の王子様だよ、君は」
彼を好きな気持ちと同じくらい、不安も口にしただけ巨大化した。厄介なことに、一回ごとの成長幅は『好き』以上に大きい気がする。
でも、前から感じていたことだ。完全無欠の生徒会長様および学園の王子様――――の隣にいるわたしは、一体、何者なんだろう。
よくてどこにでもいる生徒会書記、悪くて一般通過モブあたりなのではないか。
彼に想いを寄せる人に『この人のなにがよくて付き合っているのか』といちゃもんをつけられたとしても、なにも反論はできない。
わたしにだってわからないし、彼から根気強く説明されたところで、その何割を素直に受け取ることができるかといったところだろう。
それでも、いつも以上ににっこりと口角を上げ、頬を恋色に染めた彼は、いくつもいくつもわたしの好きなところを挙げてくれるに違いない。
「自分で言い出しておいてあれだけど、恥ずかしすぎるからもう言わないで……! あと、別に王子様ってキャラでもないんじゃないかと思うけどなぁ……」
いまこの場にいる彼は、妄想の彼とは異なる理由で頬をぽっと染めていた。
彼は求めに応じて軽度のナルシストっぽい振る舞いを選ぶこともあるけれど、実際の彼は自身過剰とも慢心とも程遠い、とても謙虚な人柄だということをわたしは知っている。
「まぁでも、きみがお姫様っぽいから、そっちはいいや♡♡ 盗賊が王子のふりして、なんだかんだで本物の王子になっちゃった話だってあるもんね♡ 形だけ先に作って、現実を追いつかせればいいだけか♡」
自己評価の低さを補うかのごとく、わたしを過大評価しているのは本当に不思議だし、少し困ったところでもあるけれど。
(……確かに君は、いつだってわたしに新しい世界を見せてくれるひとだね。王子様っぽいとかどうとかじゃなくて)
彼のいう数十年前に公開されたアニメーション映画(および数年前に公開された実写映画)の象徴たる歌のイントロダクションが脳内に流れ出した。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる