三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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HONEYDEW RAIN

HONEYDEW RAIN<XV>

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(髪の毛拭くタオルは身体拭くのと別々にしたいタイプなのかな? きちんとしてるもんね) 
 
「…………俺に提案があるんだけど、聞いてくれない?」 

「うん? 話してみて?」

 言ったあとに、すっかり彼の口調が移ってしまっていることに気付いて口を覆った。

「どっちが先に入るかで揉めるくらいなら、一緒に入っちゃえばいいと思ったんだけど、どうかな? もうじきお風呂も沸く頃だろうし。着替えのことは上がったあとにでも考えたらいいんじゃないかと思うんだよ。それより他にもっと優先させなきゃいけないことあるでしょ」 

 彼ははにかんだあと、すらすらととんでもない提案をしてきた。

「君と……一緒にお風呂に……!?」

「…………誤解を生みそうな表現だけど、間違ってはないね。……きみの唇、いつもは薄いピンクなのに、青白くなっちゃってるよ。寒いんでしょ。俺も寒いしさ、一緒にあったまろうよ」

 唇をなぞる指先が少し、ほんの少しだけ震えている気がした。

(平気そうに見えてたけど、君も誘ってくれるときは緊張してるの……? 意外だけど、嬉しいしかわいいし、親近感湧いちゃう♡ でも、ほっこりしてないでわたしもちょっとは頑張らないとなぁ。なんでもかんでも頼りっぱなしは申し訳ないって気持ちもあるけど…………)

 脳裏に過ったのは、彼がリードしてくれているシーンの数々だった。
 
(『手繋いでほしい』とか『ぎゅーってしてほしい』みたいにしてほしいこと伝えるだけでもわかりやすく喜んでくれる君が、わたしからキスしたりハグしたりしたらどうなっちゃうのか見てみたい……♡♡ まぁ、いまの状態じゃそんな大胆なことできないけど、これからはちょっとずつ……)

 そして、次に浮かんできたのは、わたしが彼になにかを頼んだときのリアクションだった。
 
「思ったとおり♪ 保温機能あるし、すぐに冷めちゃうってこともないとは思うんだけどさ、早く決めないと風邪引いちゃうって。大事な時期とか以前に、俺、学校行ってもきみに会えないなんて嫌だよ。きみだって俺と会えないの嫌じゃない?」

 わたしが考えているあいだに、彼は給湯器のパネルの前に移動していた。

「絶対嫌……」

「わかってもらえた? だったら、後ろ向いてるから、濡れたの全部脱いでさっき出してくれたタオル身体に巻いて。俺もそうするから。絶対そっちは見ないって約束する。……脱いでるとこも興味あるけど、どうせなら俺が脱がせたいし、そのときまで我慢する。きみはこっち振り向いてもいいけど、その場合はでよろしく♡♡」

 タオルを押し付けた彼は背中を向け、靴下を脱ぎ始めていた。脱いだものを入れてほしいと指示したカゴも、彼とわたしのあいだにちゃっかり移動させられていた。
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