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HONEYDEW RAIN
HONEYDEW RAIN<LXII>
しおりを挟む「俺もきみとおんなじで…………というか、もしかしたらきみよりもドキドキしちゃってるんだよってこと♡♡」
頭のカーブを伝い下りてきた彼の手は、輪郭をなぞって顎に到着した。
(……さすがにわたし以上ってことはないんじゃないかな?)
「それと同じでさ、裸見るのが当たり前になって、いっつも仲良くお風呂入るようになってからだって、ドキドキしなくなったり飽きたり……ってこともないんじゃないかと思うんだよね♡♡ 他の人たちはどうだか知らないよ?♡ あくまで俺たちの場合ね?♡」
そのまま彼は、親指を支点にして人差し指の側面で顎を撫でてきた。
「本当にそうなったらいいなぁ…………じゃなくて、君に飽きられないように頑張るね! 全然詳しくないけど、アンチエイジングとかもちゃんと勉強する」
わたしが顔を上げても、彼の手はくっついてきて子猫をかわいがるかのような動きをやめなかった。
「アンチエイジングか。俺がきみに飽きるなんて天地がひっくり返ったってありえないと思うけど、努力しようと思ってくれてるその気持ちが嬉しいなぁ♡♡ なにより嬉しいのは、きみがこれからもずっと俺と一緒にいてくれるつもりでいるんだってことがわかったことだけど♡♡」
ぽろっと零した単語を拾い上げた彼は、情報量の少ない返事からわたしの想いを汲み取ってくれたようだった。
「やっぱりちょっと図々しすぎた……?」
「そんなわけないって♡♡ おばあちゃんになっても俺のこと好きでいてね♡」
不安になって蕾のように縮こまった手は、花びらのように開いた両方の手にぎゅっと握られた。
「…………気が早いよ♡ まだ成人してもないうちから何十年も先のなんて……♡」
「そうかな? ……ん? ……あぁ、そっか。俺は全然他の子なんて見えないし、何十年先って考えても『気付いたら過ぎてるんじゃないかな?』くらいにしか考えてないから何十年なんて余裕でクリアできると思うけど、言われてみれば『お母さんになっても』が抜けてたね?♡♡ すぐにおばあちゃんになんてなるはずないのに♡」
くすっと笑った彼は、なんだか少し大人びて見えた。
「え? お母さん!?」
さらっと出てきた単語に驚いた声の残響が、不思議な感覚となって耳を痺れさせる。
「あれ? そういうことじゃなかった? おばあちゃんになる前にお母さんになるはずだから、そこすっ飛ばしちゃったことについて言ってるのかなって思ったんだけど」
(『おばあちゃん』って年齢的な呼び方じゃなくて、彼にとっては家族構成のほうだったんだ……!? 『大人になっても』ってそういう意味で言ったわけじゃなかったんだけどなぁ……! わたしたちってすごく変なところでだけすれ違ってること多いかも)
「俺、早とちりしちゃってた?」
(それにしても『お母さん』って……♡ 君の子の……ってことだよね?♡♡)
胸の高鳴りに呼応するように、お腹の奥がきゅっと疼いた。
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