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アフター・レイン・トーク
アフター・レイン・トーク<Ⅰ>
しおりを挟む麗らかな土曜日の午後。窓華ちゃんからショッピングのお誘いを受け、久しぶりに彼以外の人とお出掛けに来たのはいいのだけれど――――。
「え……、えぇぇぇっっっ!?」
ひとりの美女の絶叫とも呼べそうな声が落ち着いた雰囲気のカフェに響き渡った。
(休み時間の教室だったらみんな騒いでて紛れちゃっただろうけど、ここのカフェはおしゃべりしてるお客さん自体少ないから目立つ目立つ…………)
冷静で常識的な彼女にこんな非常識な振る舞いをさせてしまったのは、注文をしてすぐにわたしが先日の――彼との仲に著しい進展があった日だ――ことを話してしまったから。つまり、責任はすべてわたしにある。
「ま……窓華ちゃん? もうちょっと声落としたほうがいいんじゃない……かなぁ?」
目が合った店員さんや他のお客さんたち全員に頭を下げたけれど、窓華ちゃんにも悪いことをしてしまったので、ここのお会計はわたしが持とう。今日こそは割り勘させてもらおうと思っていたのでちょうどいい。
彼女が気を取られている隙に、伝票の留まったクリップボードを手元に寄せた。
(とりあえずはミッションクリア……!)
「…………っと。そうだったわね。ごめんなさい。私としたことが……。あんたと向かい合って話してると学校にいる気がしてきて――なんて言い訳にもならないわよね。でも、理解が追いつかないのは本当よ」
窓華ちゃんはまだクリップボードの位置が変わっていることに気付いていないらしい。手元のフレーバーウォーターを一気飲みした彼女は思いっきり口元を拭ったけれど、発色のいいリップは少しも落ちていなかった。
「あの日の雨は確かにすごかったけど、まさかあんたたちのあいだでそんなビッグイベントが起きてたなんて思わないじゃない……!」
「う……。おっしゃるとおりです…………」
「なんで敬語になっちゃうのよ、あんたは。……まぁいいけど。じれったいけど誰から見ても文句なしの純愛を貫いてあのまま離れ離れ――なんてことにならなかったのは本当にめでたいと思うし。それにしたって、急な進展よね…………。これが月刊誌に連載されてる話だったら1ヶ月なにも手につかなくなってたところよ……!」
独特の喩えを交えながら祝福してくれた窓華ちゃんは、綺麗に巻かれた髪のカールを強めるようにくるくると指で巻き取っている。
「びっくりさせちゃって本当にごめんね……! わたしもびっくりしてるし、いまだに夢だったんじゃないかと思ってるくらいなんだけど」
グラスにできた結露が側面を滑り下り、コースターに滲みていく。わたしの意思とは関係なしに記憶がよみがえってきた。あの大雨の日。全身びしょ濡れになったわたしたちはタオルで水気を拭き取って――――。
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