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アフター・レイン・トーク
アフター・レイン・トーク<Ⅹ>
しおりを挟む(※『我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない』の『ティータイム・トーク<前編>』をご覧になってからですと、よりいっそうお楽しみいただけるのではないかと思います。よろしければそちらも是非ご覧ください!)
「そ…………、そんなに褒めても、ここのお会計持つくらいしかできないからね!」
あらかじめ寄せておいたクリップボードを両手で持った。
「え? ……嫌ねぇ。そのくらい自分で払うわよ――――って、あんたいつのまに!? いい子だから、それをこっちに寄越して。私のほうでなくてもいいの。せめてテーブルの真ん中あたりに置きましょう?」
窓華ちゃんは手のひらを上に向けた。指先からちょこんと顔を出す爪は少し先細っていて、いかにも手を見ただけでも彼女の美人度が伝わってくるようだと思った。
「えへへ。窓華ちゃんは一緒にご飯食べたりお茶したりするときいっつも奢ってくれちゃうでしょ。せっかくバイト掛け持ちして頑張ってるんだから、もっと自分のために遣ってほしいの。今日は…………じゃなくて、今日もわたしの相談に乗ってもらったんだから、このくらいのことはさせてよね! ……わたしは窓華ちゃんが忙しいのに貴重なお休み使って会ってくれてるだけで嬉しいんだから……」
催促の手はじわじわ近付いてきたけれど、無我夢中で訴えたら、観念したようにテーブルの下に引っ込んだ。
(窓華ちゃんには自分の思ってること大体思ってるままに言えるのに、どうして彼の前だとてんでだめになっちゃうんだろう。残念すぎる……)
「…………わかったわ。今日はおとなしくあんたに御馳走になる。その代わり、次は私が出すから覚えておいてちょうだい」
窓華ちゃんは視界からフェードアウトしたばかりの右手で、綺麗にセットされた髪の毛を無造作に掻き上げた。
「ふ……ふふ。そんな美人の悪役みたいに言わなくても……!」
その様子は、終演を迎え、一度は舞台袖に消えた悪役のキャストが、ファンの声援に応えて再び姿を見せてくれたみたいだった。――彼女の台詞のチョイスと相俟って。
「『美人の』なんてつけなくてもよかったんじゃない? 悪役で十分伝わるわ。自分でも捨て台詞もいいところだと思ったもの。あんたに褒められるのは嬉しいからいいけど」
嘘を吐いている感じではないけれど、彼女にはまだ言いたいことがありそうだ。そう感じたのは、笑顔に少しだけ陰りがあったから。
「…………ねぇ。ダサい台詞言ったついでに、もうひとつ変な……私らしくないと思われるかもしれないこと、言ってもいいかしら? 言うというか、お願いしたいことって言ったほうがいいかもしれないけど……」
口を挟まずに待機していたら、彼女からずばり切り出してきた。
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