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アフター・レイン・トーク
アフター・レイン・トーク<Ⅺ>
しおりを挟む「もちろん! 窓華ちゃんがお願いなんて珍しいね?」
どん、と胸を叩いたはいいけれど、危うく噎せるところだった。どうにか持ち堪えて背筋をぴんと伸ばす。
(わたしに叶えられること? ……って、だめだめ!! まだ聞いてもないのに弱気になってどうするの! 困るにしても聞いてからにしようよ)
いつもお世話になっている彼女の頼みだ。多少、無理を押してでも叶えようと意気込んでいたけれど――――。
「たまにでいいから、これからもこんなふうにお茶しましょうね。惚気も聞くし相談にだって乗るから。卒業までのご縁なんて嫌だもの。……寂しいじゃない。会長にばっかり独り占めなんてさせないわよ。恋愛感情じゃないけど、私だって会長に負けないくらいあんたのこと大好きなんだってこと、知っておいて」
テーブルの上で控えめに指を組んだ彼女の願いは、とてもかわいらしいものだった。
「……えへへ。なんか照れちゃうけど、ありがとう。わたしも窓華ちゃんのこと大好きだよ。彼とおんなじくらい大切だし…………。すごく図々しいなぁって自分でも呆れてるんだけど、窓華ちゃんとは卒業しても当たり前にいままでみたいに会ったり遊んだりするつもりでいたんだって、いま窓華ちゃんのに言ってもらってはじめて気付いた。あはは……」
「あら、そうだったの?」
それまで憂いに曇っていた瞳がぱぁっと輝き出した。女性の瞳を宝石に例えるなんて気障すぎると思っていたけれど、ようやく納得の行く一例に出会えたかもしれない。
「うん。どれだけ甘えてるんだろうって感じだよね。……だから、説得力ないかもしれないけど。奢られなくても、惚気聞いてくれなくても、相談乗ってもらえなくても、わたしは窓華ちゃんとお茶したりお出掛けしたりしたいと思ってるよ? いつもありがとう。これからも……卒業したあともずっとずーっと仲良くしてくれたら嬉しいなぁ」
「そんなの当たり前じゃない!! ……あんたって顔もかわいければ性格もかわいいわよね。話してるだけ……ううん。同じ空間にいるだけで癒されるもの。だから、そのお礼みたいな感じでついつい奢りたくなっちゃうんだけど…………。今日は首を縦に振ってはくれないのかしら?」
窓華ちゃんは流し目でちらりと見てきたけれど、ここで譲るわけにはいかない。
(窓華ちゃんこそ奢りたくなるイイ女って感じなんだけどなぁ。よく貢ぎ物もらって…………というか押し付けられてるし。……でも、もし私が窓華ちゃんのこと好きな男の子で、なにか奢りたいなぁと思ったら、もっと背伸びしたお店に連れていきたくなる……かも? やっぱり格が違うんだよなぁ、私とは)
跳ね上げ気味に描かれたアイラインが、ステージでキレキレのダンスを披露する韓流アイドルのようだ。女のわたしでもそわそわして落ち着かなくなって心臓がうるさくなってしまうのだから、男の人なんてイチコロだろう。
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