240 / 489
アフター・レイン・トーク
アフター・レイン・トーク<XXXIV>
しおりを挟む「う゛……」
ごもっともすぎる指摘を受け、セクシーからもキュートからもかけ離れた呻きが漏れた。
(だよね!? わたしもそう思う……! でも、王子様スマイルの圧をかけられる対象には、実はわたしも含まれてたりして…………)
心のなかで彼女に同意しつつ、例の質問をされたときの記憶を辿った。
つい先日、彼は予告どおりにクリスマスプレゼントの希望を聞いてきたが、わたしは考えがまとまらずにいた。――もとい、そのことについてはまだ一度も真剣に考えてもいなかった。
(『いろいろあって考えてなかった』なんて言われたら、誰だってイラっとするよ。『どうでもいい』とか『そこまで楽しみじゃない』って言われてるようなものだもん。『まだ決まってなくて』って言っておけばよかったのに。それなら嘘でもなんでもないし、馬鹿正直に言ったわたしが悪かった。……けど、答えた瞬間に空気がピリッてしたのもわかったし、怖かったなぁ)
他のカップルであれば日常の些細な雑談、その話題のひとつなのかもしれないけれど、わたしにとってクリスマスプレゼントの希望を尋ねられることというのは、進路希望が決まっていないにもかかわらず受けなくてはならない三者面談と同程度に気の重いイベントだった。
(クリスマス……クリスマスかぁ。誕生日とかならお祝いしてもらえる理由もはっきりしてるからいいけど、別にキリスト教徒でもないし、お祝いするような陽気な気分になれないんだよね……。当日が近付くほど街はどんどん楽しげな雰囲気になっていくし、それ自体は嫌いじゃないはずなんだけど)
――――というのも、小さい頃からクリスマスイブはクリスマスの2日間といえば、ひとりで過ごすことが確定してしまっている日だったからだ。
(平日でも休日でも両親は仕事だし、冬休み中だから学校もなくて、友達も家族と過ごしたり旅行行っちゃったりしてて。その期間に彼氏がいたこともなかったし。クリスマスの日の朝のプレゼントだけは毎年あったけど、『なにが欲しい?』なんて聞いてもらったこともなかった。『プレゼントになにが欲しいか決まらない』なんて、昔のわたしに相談したら贅沢すぎてびっくりしちゃうかも。希望聞いてくれるのなんて、彼がはじめてだもんね)
だが、今年のクリスマスはきっといい思い出になるだろう。なにせ大好きな彼と一緒に過ごすことができるのだから。
(もうどこにだって出掛けられるし、一緒にいてくれる人もできたし、悲しい日じゃなくなったはずなんだけどなぁ。今年は彼とイルミネーション観に行く予定もあるし、これまでと違って楽しいクリスマスになりそう! でも、プレゼントがなぁ……)
一瞬だけ上向きになった気持ちは、すぐに下降してしまった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる