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アフター・レイン・トーク
アフター・レイン・トーク<XXXV>
しおりを挟む「どうしたの? ため息なんて吐いちゃって。クリスマスってそんな憂鬱な予定だったかしら? 恋人たちにとっては夢のようなひとときじゃない? ……まだ結構先だけど」
綺麗にカールした彼女の毛先がクリスマスツリーに巻かれたモールに見えてくるなんて、どう考えても重症だ。
「ちっちゃい子はクリスマス終わったら次のクリスマスのこと考えてるみたいなところあるし、それに比べたら別に特別早いわけでもないと思うなぁ!」
2回も同じ指摘を受けては無視するわけにもいかない。
「なんで突然小さい子どもが出てくるのよ。本当に不思議な子ねぇ」
必死に弁解するわたしに、彼女はそれこそ小さい子を見るようなあたたかい眼差しを向けてきた。
「……そうだね。確かにまだ先かも。だけど、窓華ちゃんも知ってると思うけど、わたしって一回悩むと長いでしょ? いまから考えておくくらいじゃないと、用意してくれる側の負担になっちゃう……」
「…………なるほど。あんたとあんたにプレゼントを贈る予定の誰かにとっては早くないってことね。……青春真っ盛りの女子高生がクリスマスプレゼントに欲しがるもの、ねぇ。かなり個人差がありそうだけど、派手でも地味でもない中間層あたりの子がどうなのかを知りたいのよね?」
声を発するのも忘れて必死に頷くと、彼女は人差し指を立てて再度口を開いた。
「それなら、『ちょっと奮発すれば買えるけど、自分で自分に贈るのは少し微妙なもの』とかじゃない? 中学生の頃はバイトもできなかったけど、高校に上がれば多くはなくても自分で好きに使えるお金がゲットできるでしょ。地道に貯金すれば、そこそこ高いものも買える。……でも、金額的には買えても他の人から贈ってほしいものってあると思うのよね」
「自分で買えるけど他の人に贈ってほしいもの? たとえば?」
「…………あんたは思いつかないの? 本当になんにも?」
声を落とした彼女がもう一度問うてきた。
「うん。欲しいもの自体があんまりないというか……。必要なもの以外でなにか欲しいと思ったことがいままでもそんなになかったいうか……? あと、自分で買うか他人にもらうかってところにこだわったこともない……かなぁ」
「知ってたつもりだけど、思ってた以上に無欲ね。あんたと話してると、私がいかに物欲に塗れた人間なのか思い知らされる気がするわ…………」
「物欲が高めなのって、そんなに悪いことじゃないんじゃないかな?」
「そうかしら……」
項垂れる彼女は、生き生き働いてバリバリ稼ぎ、狙っているアイテムの話をする彼女とは別人のようだった。
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