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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<XVI>
しおりを挟む「……でも、本当に君のミルクティーのほうがおいしく感じるし、好きなんだもん……」
甘えるときに出す声で、彼が『かわいい』と褒めてくれる自慢の声で、素直な気持ちをひと垂らし。
「きみがわざとそういう言い方選んでるわけじゃないのはわかってるんだけど……♡♡」
すると、彼は口元を押さえて首を左右に振った。
「…………いや、俺が邪念を払えてないだけか♡ きみのせいにするのは違うな。……ごめん、いま言いかけたことは忘れて?」
(喜んでくれてはいるみたいだけど、『邪念』って? 別になにも変なことは言ってないと思うけど……。まぁいっか)
彼がなにを言いかけたのか、もう少し追及したい気持ちもあったけれど、話したくないことを無理矢理吐かせる趣味もない。
「それにしても、『なにか飲むたびに』ってすごいな♡♡ そこまで合わなかった?」
別の話題を探していたら、彼のほうがひとつ前の話題を持ってきてくれた。
「うん……。わたしは本当にだめだったなぁ。スイーツとの組み合わせもよくなかったのかも。……でもね? その次に頼んだキャラメルハニーティーはすっごくおいしかったんだよ! 君が好きそうなメニューもあったし、わたしも気になるメニューあるし、今度一緒に行ってみない?」
「へぇ、キャラメルハニーティー?♡♡ きみにぴったりなメニューだね♡♡ 甘くてかわいい感じ♡」
声が先ほどより近くに聞こえた気がして、首を彼のほうに向けると、耳元に寄せられていた唇は離れていってしまった。
「香りはすごく甘いけど、飲んでみると甘くないんだよ♡ 甘いのあんまり好きじゃない窓華ちゃんもおいしいって言ってたし。わたしは甘いの好きだから、最初はちょっと寂しいなって感じだったんだけど、飲み終わる頃には『たまにはああいうのもいいかも』って思うようになってたなぁ」
キャラメルハニーティーに食い付いてくれたおかげで、カフェへのお誘いも悪意なくスキップされてしまい、隙間風が通り抜けたような寂しさをおぼえた。
誤魔化すように言葉を重ねるわたしは、君といるときのいつものわたしでいられているだろうか。
「ふたりとも同じの頼んだの?♡ ほんと仲いいね♡」
いまのところうまく誤魔化せている。そう思ったのに――――。
「ううん。窓華ちゃんはレモンティー頼んでたから、ひと口あげたの」
「…………へぇ」
突然、彼の声が低くなった。相槌まで少し間があったのも気掛かりだ。
「どうしたの?」
「『俺とはそういうことしたことないのになぁ』と思って?」
大きな目を三分の二くらいにして唇をつんと尖らせた彼は、まるで――――。
「……したくなくてしてないわけじゃないよ?」
拗ねた子どものようで、上がりそうになる口角を必死に抑えた。
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