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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<XXVII>
しおりを挟む「…………あ、待って。何回も止めてごめんなさい。それだったら、始める前にルール……いうか、勝ち負けの条件を確認しておいたほうがいいんじゃない?」
闘志を燃やしていても彼は彼だ。おまけに元の顔がかわいいので怖いということもなかったけれど――――。
(めらめらしてる彼もかっこいい……♡♡ 球技大会で、優勝を賭けた試合の前にもあんな表情してたっけ。試合が始まったらいつもみたいに穏やかな彼に戻って、ミスしちゃった人たちのフォローしたり、どうすればいいのかわからない人にアドバイスしたりしてたけど、本当は自分のことだけに集中したかったんじゃないかな。たぶんあの場の誰より勝ちたがってたと思うし。……それなのに、周りのことよく見て、そのとき必要なことができる人なんだなぁと思ってすごく感心したんだよね。あのときから、わたしは本格的に彼を好きになったのかもしれないなぁ……)
わたしのよく知っている彼に戻ったことに安堵をおぼえつつ、探りをかけてみた。
(……って、思い出に浸ってる場合じゃなかった。始める前に確かめておかないと。わたしの思ってるポッキーゲームと彼のしようとしてるポッキーゲームが同じものかどうか……)
「え? 『先に口を離したほうが負け』じゃなかった? それ以外になにかあったかな? ……実は俺もはじめてだし、詳しくないんだよね。期待を裏切るみたいで申し訳ないけど……。ちゃんとしたルール調べてからにしよっか?」
「ううん、そこまでしなくていいよ。わたしだって詳しくないし、いま言ってくれたこと以外はさっぱり。……でも、それって少なくとも『片方がポッキーから口を離した場合』だよね? もしふたりともが最後まで離さないで食べきれたときはどうなるの?」
「…………あ、そういうことか! キスすることになるのは、勝ち負けとは直接関係ないもんね? 真剣勝負なのにどっちが勝ったかわからないんじゃ意味ないから、確認してくれたんだ♡」
彼はしばらく考え込んでから、指をぱちんと鳴らした。
「そう。ずっと考えてたんだけど全然わからないから……。もしかして、君なら知ってるんじゃないかなぁって」
「…………んー。わからないけど、そうだなぁ……。そしたら『ふたりとも勝ち』でいいんじゃないかと思うけど…………。納得行かないって顔してるね♡」
手を口元に持って行った彼は、まだゲームも始まっていないのに楽しそうで嬉しそうだ。
「なんでそんなに嬉しそうなの?♡」
「納得行かないお顔のきみがすっごくかわいいから♡ これからこんなかわいい子にキスできるんだから、嬉しくないわけがないでしょ?♡♡」
「!」
小首を傾げた彼はかわいいというよりセクシーで、なにも言い返せなくなってしまった。
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