三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<XXVIII>

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「…………きみも、楽しみにしててくれたらいいなぁ♡♡」
 
(ゲームが終わったあと……ってキスのこと? それとも、他にもなにか企んでるのかな…………って、彼氏に対して『企んでる』とか失礼だよね! 彼はわたしが楽しく過ごせるようにいろいろ考えてくれてるだけなんだから、そんなふうに言っちゃだめだ)
 
はどうする?♡♡」

 疑問を飲み込んで微笑みかけたら、彼は円を描くようにポッキーを回した。

「……え!? ゲームするだけじゃないの?」

 ひと振りされるごとに未体験のゲームへの期待が高まっていく。彼の手元のポッキーは指揮棒タクトというより魔法の杖ステッキかもしれない。

(彼の目じゃなくて手のほう見ちゃってるけど、『動いてるのが気になる』って……猫じゃらしから目が離せない猫ちゃんと同レベルだ、わたし……!)

「ポッキーゲームだけでも十分楽しめると思うけど、勝者には賞品、敗者には罰ゲームがあったらもっと楽しくなるんじゃないかな?♡」

(ゲームが終わったあとって、そのことを言ってたんだ!?)

 顔を上げて目に入ったのは、彼の口角だった。そこはよほどのことがない限り大体上がっているけれど、いつも以上の上がり具合な気がする。

「なるほど……? そういうものなのかな? ごめんね、よくわかってなくて」

「ぴんと来ないかな? ……あぁ。確かに、きみってあんまりゲームしてるイメージないね?」

「うん。だけど、嫌いなわけじゃないよ? あんまり縁がないだけで。……賞品と罰ゲームかぁ」
 
「なにかいいの思いついた?」

 少ない知識を搔き集めようとして唸るわたしの視界を、彼が完全にジャックした。

「…………王道なのって、やっぱり『負けたほうは勝ったほうの言うことを聞く』みたいな感じなのかな?」

「王道かどうかはいまいちわからないけど、俺もそれがいいんじゃないかって考えてた♡ そしたら、賞品と罰ゲーム同時にこなせるもんね♡」

「じゃあ、賞品兼罰ゲームはそれでいい?」

「俺はOK♡ きみはどう?♡ 勝っても負けても大丈夫そうかな?」

「…………あんまりすごい命令は聞けないよ?」

 確認と牽制を兼ね、小声で尋ねてみた。わたしは合理性を追求しすぎるきらいがあるかもしれない。

「あはは♡ しないしない♡ きみが考えてるみたいなすごいことはさ、命令して従わせるんじゃなくて、本人の意志でしてもらってこそだと思うし♡♡」

 彼はわたしに合わせて声を潜めて言った。わたしは最初から最後まで、唇の動きから目を離せずにいた。
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