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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<XXX>
しおりを挟む「俺が勝ったら『かわいい』なんて言えなくなるようなことしちゃうよ?♡」
にやっと吊り上げた口角から、平素の穏やかな印象とはかけ離れた鋭い犬歯が覗いた。口を閉じているときと開けているときとでがらりと雰囲気が変わるのも、数多ある彼の魅力のひとつだろう。
(『かわいいなんて言えなくなるようなこと』って、やっぱりえっちなことかな? 彼は優しいから、『噛み付かれてみたい』なんて言ったら、きっと困らせちゃうよね……)
「どうしたの?♡ ……怖くなっちゃった? 大丈夫だよ、怖いことはしないから」
黙り込んだわたしを覗き込んだ彼に、ひどいことも怖いこともできるはずはないだろう。
「…………『すごいことは命令してさせるんじゃなくて、本人の意志でしてもらってこそ』なんじゃなかった?♡」
「よく覚えてるね♡ でも、きみがかわいすぎて気が変わっちゃった♡♡ たぶんだけど、きみもちょっと強引にこられるほうが好きなんじゃない?♡」
片腕で引き寄せられ、腰が反った。
「……好きな人限定でね?♡」
「じゃあ、やっぱり俺がぐいぐい行く分にはなんにも問題はないってことだ♡♡」
ウエストのくびれた部分を往復する手付きは、いつもの優しい彼とは少し違っていた。
(そんなふうにされたら、変な気分になっちゃう……♡♡)
「それ貸してもらうね?♡ ついでに、お口あーんして?♡ ……はい、どうぞ♪ 俺が咥えたら、今度こそスタートで」
いかがわしい妄想が始まる一歩手前で、存在を忘れかけていたポッキーが奪われた――だけでなく、上唇と下唇の隙間にその先端が挿し込まれた。
(これだったらチョコかかってないところもわりと好きだから、どっちでもよかったんだけどなぁ…………じゃなくて。これ、さっき一瞬咥えてたよね!? わたしも一瞬咥えちゃったし……ってことは間接キス……?♡♡ まだゲーム始まってないのにキスしちゃってない……?♡)
「…………あぁ、そっち俺が咥えちゃったから気にしてる?♡ ごめんね?♡ でもさ、どうせこれ終わったらキスするんだよ?♡ きみが勝っても俺が勝っても、それだけは決定事項♡♡」
ファーストキスも済ませていない純情な少女のような戸惑いを瞬時に察知した彼は、持ち手を離さずに言葉を繋げていく。
(それは……♡ わかってるよ?♡ わかってるけど…………♡♡)
生温かい唾液でキャラメルプリン味のチョコレートが溶け出した。
(終わったあとにするキスもこの味になっちゃうんだ……♡)
思考と同時に視界も蕩けて、彼がアクションを起こしてくれるのを待つことしかできない。
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