yours-夢の罪過-

片喰 一歌

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親友転序

親友転序<24>

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「はぁ……っ♡♡」

 無我夢中でキスを繰り返していた彼女の瞼がゆっくり開いたかと思うと、間を置かずして可憐な唇が離された。

 そのすぐあとに、ペットボトルに入ったお茶のCMばりにさわやかなようでほんのりエッチな声まで漏らしたのも計算のうち?

「可愛い♡♡」
 
 小さく開いた唇の間から漏れ出す吐息に肌を撫でられるたびに情熱的なキスの様子が思い出されて、呂律の回らないくらいのお返しをしたくなったけど、ここはぐっと堪えることにした。

「…………もうペット扱いしない?」 

「気にしてたの? ごめんね。最初から女の子としてしか見てないし、見えないよ。今から証明してもいいけど、どうする?」 

「それって、『今から私が忘れちゃってることする』みたいな感じで合ってる……?」

 とろんとした瞳に見え隠れしているものの正体を俺は知っている。
 
 ――――期待と興奮だ。
 
「うん。紗世ちゃんの記憶が戻るが思い出せるように、あのとき……って昨日か、まだ。昨日のエッチの流れ、完全に再現してもいいと思ってるよ?」

 本当に再現するなら、まず可愛い可愛い紗世ちゃんに眠り姫になってもらう必要があるんだけど――――。
 
 二回連続で反応が見れないとか嫌だし、そこまでは再現してあげなくてもいいよね。

「ほんと? でも、ごめんなさい。眠くて…………」 

 口を覆った彼女が動きを止める。噛み殺せなくて出てきたあくびを隠したんだろう。
 
「じゃあ、今日はもう寝よっか。今日暑かったし、いっぱい歩いたから疲れてると思うし」

「え……。寝ちゃうの?」

「添い寝は好きじゃない?」
 
「ううん……。好きだけど……その、鏑木くんはしたいんじゃないかなと思って」

「俺が?」

「…………硬いの、当たってるから」

 ノーメイクにもかかわらず長い睫毛が、何度も何度もせわしなく上下している。緊張してるのかな。

「ごめん! 気持ち悪かったよね」

 相当気を付けていたつもりだったのに、無意識に押し付けていたらしい。
 
 いつから当てちゃってたんだろう。最悪だ……。

「ううん。エッチなこと考えてなくてもそうなっちゃうって聞いたことあるし……。大変だよね」

 泡を食って腰を引こうとしたけど、彼女は腕の固定を強める一方で、少しも動けない。

 この小さい身体のどこにそんな力隠してたの?

 というか、自分の気持ちそっちのけで気遣ってくれてるの尊すぎない? 『一生保護しとかないと』って気にさせるのが随分上手いね?
 
「確かに刺激で勃っちゃうこともあるけど、俺が今こうなってるのは、大好きな紗世ちゃんにいっぱいキスしてもらえて嬉しくなっちゃったからだよ」

「…………鏑木くんも気持ちよかった?」

 怖がらせないように言葉を選んだけど、及び腰の回答はこの場にはふさわしくなかったのかもしれない。
 
 わずかに揺れた声は、揺らいだ自信をそのまま写し取ったみたいだった。
 
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