yours-夢の罪過-

仮初恋人遊戯

仮初恋人遊戯＜4＞

「なんで謝るのさ♡♡ もっとちゅーちゅーしてくれていいのに♡」

「…………『ちゅーちゅー』だと、なんかちょっと違う感じじゃない？♡」

　内緒話の声量で喋るから聞き逃さないように耳を欹てたけど、本当はそうじゃなくて、顔を近付けたままでいる口実を君のほうで用意してくれてるのかも……なんて、都合よく解釈しすぎかな。

　吐息が多めに混ざった声を聞いているだけで全身がぞくぞくする。
　
「どういう風に違うの？♡♡」

「『ちゅー』って一回だけだったらキスのことかなって思うけど、『ちゅーちゅー』って二回繰り返すと飲み物飲んでるときの音っぽいっていうか……。あとは、ねずみさんの鳴き声のイメージじゃない？♡♡」
　
　言われてみれば、ねずみも（実際の鳴き声はともかく）そうだし、ストローで飲み物を吸っているときのオノマトペのほうが連想しやすいかもしれない。
　
　もしくは、すべすべの肌に吸い付いてキスマークをつけるときのような――――。

「んー。でも、今の俺、ねずみだし♡♡ 可愛い子羊ちゃんにいっぱいちゅーしちゃお♡♡ どこにされるのが好きそうかな～？♡」

　会話を中断し、キスに集中しようと思った矢先、甘い声が耳に飛び込んできた。

「ぁ♡♡ ぜんぶきもちいの♡♡ して……♡ どこでもいいから、もっとして♡♡」

　可愛い声はどんどん行為中のそれっぽい色を帯びてくる。

「仰せのままに♡」
　　
　手の甲、手首の内側……と順番にキスしていると、彼女が躊躇いがちにぽつぽつと言葉を零した。

「…………さっき言いそびれちゃったんだけどね？　その……私のこと、舐めてくれてもいいよ？♡♡」
　　
　声のボリュームに反して大胆なお誘いに目を眇めたら、情欲を擽ってしまったのか、控えめに身体を擦り付けられた。

　求愛行動が動物的というか直接的というか……すごくエッチで俺好み♡

「キスじゃ足りないの、わかっちゃった？♡♡」

「うん、なんとなく♡ でもね、それだけじゃないの。キスでこんなに気持ちいいんだから、舐めてもらったらもっと気持ちいいんじゃないかなあって思って♡♡ 恥ずかしくてそれどころじゃなくなっちゃうかもしれないけど、されてみたいな……♡」

　迷える子羊ちゃんは、まだ見ぬ快楽に導かれる予感に瞳を潤ませた。