156 / 551
●REC
●REC<10>
しおりを挟む「――――って、俺のことはいいんだよ! 何話してたっけな? えーっと……。ああ、そうだそうだ。副音声付けるかどうかって話だったね♡♡ どうする?♡ 付けてみる?♡」
しかし、うきうきと弾む彼の声を聞いていると、いくぶん気分も落ち着いてきた。
「んっっ♡♡ ……付けたら、どんないいことがあるの?♡♡」
最後の問いかけが官能的で、甘い声を上げてしまった。
「いいこと?♡ そうだねえ……♡ 紗世ちゃんにとって、いいことって言えるかどうかはわからないけど……♡♡」
彼はそう前置きする間に、身体をぴったりくっつけてきた。
「俺の解説付きでさっきの続き観ることに――……というか、俺が紗世ちゃんの可愛い耳の近くで好き勝手喋ることになるかも♡♡ 今みたいな感じで♡ 集中できなくなっちゃうかもだけど音量には注意するし、もちろん必要そうなとこだけに絞るけどね」
懇切丁寧な説明だ。妄想の余地がないでもなかったけれど、内容はきわめて真面目で――――。
だというのに、耳孔に直に感じる吐息のせいで。あるいは、あまりに好みな声のせいか、限界まで近付けられた身体の発する熱が移ってしまっているのか。私の身体は火照り、腋や首筋がじっとりと汗ばんでいる。
「あとは……そうだな。疑問とかあったら、その都度質問してくれていいよ。それはお喋りにカウントしないことにするから」
「鏑木くんの声聴いてられるのは嬉しいけど、説明が必要になるような内容なの?♡」
「ん~……。どうだろね?♡ そのへんは人によるんじゃない?♡ 紗世ちゃんは頭も勘もいいし、ないならないで別に不自由しないんじゃないかと思うけど、好きなほうにしな?♡♡」
彼の指が再生ボタンの上でタップダンスを踊っている。出来るだけ早く決断しないと。
「うーん……。じゃあ、なしで!」
「おー、意外だね? なくていいの? そのほうが俺は楽出来るけど」
踊っていた指が静止した。
「…………たぶんなんだけど、耳の近くで鏑木くんの声が聞こえてたら、目に映ってるはずのものも認識できなくなっちゃうと思うんだよね……!! せっかく観てほしいって言ってくれてるのに、ちゃんと観れないのは失礼だし……」
手を動かしながらの説明は、ちゃんと説明の体を保っていただろうか。
「へえ♡ 嬉しいこと言ってくれるね……♡♡ そこまで考えてくれてるなんて思ってなかったなあ♡ じゃあ、予定通り、ここからはお喋りは封印ってことで♡」
その疑問に答えるように、優しく手が添えられた。
「全部観終わったら、いっぱいお喋りしようね♡♡ 感想とか色々と……♡♡」
耳たぶに唇が掠めたのち、止まっていた時が動き出した。
0
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
不埒な社長と熱い一夜を過ごしたら、溺愛沼に堕とされました
加地アヤメ
恋愛
カフェの新規開発を担当する三十歳の真白。仕事は充実しているし、今更恋愛をするのもいろいろと面倒くさい。気付けばすっかり、おひとり様生活を満喫していた。そんなある日、仕事相手のイケメン社長・八子と脳が溶けるような濃密な一夜を経験してしまう。色恋に長けていそうな極上のモテ男とのあり得ない事態に、きっとワンナイトの遊びだろうとサクッと脳内消去するはずが……真摯な告白と容赦ないアプローチで大人の恋に強制参加!? 「俺が本気だってこと、まだ分からない?」不埒で一途なイケメン社長と、恋愛脳退化中の残念OLの蕩けるまじラブ!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛
冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる