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●REC
●REC<11>
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「………………」
リモコンを適当な場所に置いた俺は、少し迷ってシーツの上に手を置いた。密着度は――背中で十分足りてるかなって。
もちろん日焼けしたことなんてなさそうな腕(素肌ってのがまたいいよね。これだから夏は最高なんだよ。)に添えてもよかったんだけど、画面を食い入るように見つめている彼女を邪魔したくはない。
なにせ彼女は、『鏑木くんが見せたいものだから』と誘惑を振り切ってまで真剣に向き合ってくれているのだから。――観賞中の映像が自身のハメ撮りだとも知らずに。
(男が俺ってことはわかったみたいだけど、舞台がここだってことにはいつ気付くかな……♡♡ この家に紗世ちゃん呼んだのは先週が初めてだったし、リビングに通したのも一回だけだと思うから、まだ気付いてないか? 自由を奪ったり襲いやすかったりするのはいいけど、後ろにいると顔が見えないのが少し不便だな)
天使の輪っかを乗せた髪から画面に視線を戻す。
(どの部屋に通しても興味津々であちこち見てたから、薄々勘付いてはいるかもしれないな。……まあ、すぐにでも理解出来るだろうとは思うけど。見えにくかっただろうけどさっきも一回キスしてたし、次のキスは確か――)
と考えるのとほぼ同時に、男――というか俺――が、熟睡中のお姫様に下から掬うような口付けを施した。逃げられもしない彼女の両腕を掴んでのキスなんて、我ながらがっついてるな。
「……っ!!」
彼女は咄嗟に口を覆った。声を出さないために? それとも、君もキスしてほしくなった?♡♡
(こっちの紗世ちゃんもあっちの紗世ちゃんも可愛いな♡♡ それに引き換え、俺ときたら――)
映像の中の俺の後頭部の動きが若干うるさい。洋画を観ているとちょいちょい挟まる恋人たちのキスシーンみたいだ。
(そんな頻繁に角度変えなくたっていいだろ。独りよがりにも程があるんだよ。下手くそか? もっとゆっくり味わえばいいのに。…………まあ、念願叶ってやっとだもんな。がっつくのも仕方ないか。紗世ちゃんが起きてたらここまでじゃなかったかも。……それについては、あとで確かめればいいか♡♡)
フィクションでも現実でもそうだけどさ、人前でイチャつける人ってすごいよね。
――ああ、今のは嫌味じゃなくて。『好きなコの可愛い姿を他の奴に見せても平然としてられるなんて太っ腹すぎると思わない?』って話。
俺には無理。可愛い紗世ちゃんの恥ずかしくて可愛いところを見ていいのは、俺と紗世ちゃんだけ♡ 可能なら、彼女とシたことのある奴の記憶を抹消して回りたいくらいだ。
「好き……。好きだよ…………。ずっと前から――――」
一方的なキスで興奮がピークに達してしまったらしい俺は、彼女の腹部に縋り付いて顔を押し付け、思い詰めたような声で告白し出した。……え、こんなことしたかな。記憶を失っている。
(…………。俺もかなり酔ってたっぽいな。お酒にもだけど、自分が作り出したシチュエーションにはもっと)
とりあえず、今の段階で言えそうなことがあるとしたら――腕はもう離してあげていいんじゃないかってことくらい。
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