yours-夢の罪過-

片喰 一歌

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●REC

●REC<47>

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「うん。紗世ちゃんは覚えてないと思うけど、泣いてただけじゃなくてめちゃくちゃ荒れてた。お酒もすっごいハイペースで、アル中になっちゃわないかひやひやしたくらい」

 ぽつりぽつりと話し出した彼は、自らの失態を暴露している最中かと思ってしまうほど浮かない表情をしている。理由は定かではないが、私にそれを告げることに迷いを生じていたようだ。

(知ったら、私がもっといたたまれない気持ちになるだろうから、忘れてたほうが幸せだと思った……とか? ずっと引っ掛かってるよりわかっちゃったほうがすっきりするし、そのほうがいいと思うけどな。恥ずかしいとしても)

 史上最速で目の前のグラスが増えていったおぼえだったらあるかもしれない――というか、ある。その様子を面白がって写真と動画に収める向かいの席の友人二人の様子が印象に残っているから。

(でも、『荒れてた』かあ。みっともない姿見せちゃったな……。私、気分悪くなると口もすごく悪くなるから、たぶんそれも聞かせちゃったよね? うわあ、最悪…………)
 
 二人を止めたのは『どこが面白いの? 死亡例もあるし、楽しくて飲んでるわけじゃないの知ってるだろ。感性疑うんだけど』という鋭い声だった。言うまでもなく、その声は私の隣の席から弓矢がごとく真っ直ぐ飛んでいて――――。

(あのときかなあ……。私がはっきり鏑木くんのこと意識したのは。それでも遅すぎると思うけど)

 他のメンバーは他の話題で盛り上がっていて、私の飲みっぷりにもテーブルを占領していくグラスにも気付く気配はなかった。
 
 向かいの二人は私の様子ではなく増えていくグラスを面白がっていただけで、気付いていただけましと言えなくもない。
 
 そんな中、彼は――彼だけは常に私の飲酒量に気を配り、向かいの二人にも注意してくれた。
 
「うん、たくさん飲んだのだけは覚えてる。…………私、何か言ってた?」

「元カレの悪口言ったあと『まだ好き』って……。だけど、『あんな奴に未練残してる自分が嫌』とも言ってた」

「他には……?」

「『早くもっと好きになれる人に出会いたいな』って呟いたのを最後に、それまで大荒れだったのが嘘みたいにすーっと入眠してった。覚えてるのはそれくらいかな? 机に突っ伏すんじゃなくて俺の肩に寄っかかってくれたのは何気に嬉しかったよ」

 左肩に手を当てて微笑む彼はたいそう美しかった。

(鏑木くんは『今日は楽しげな話題振られてもまともに返す気になれないだろうから、ここにいな。俺が適当に返事しとくから』っていちばん左の端っこに座らせてくれたんだっけ……)

 そんな彼につられるように右の側頭部に手を当てたけれど、には到底及ばなかった。
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