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●REC
●REC<48>
しおりを挟む「でも、私が肩借りちゃってたせいで楽しめなかったんじゃない? 重かったと思うし、そこから動けなくて他の人たちともあんまり話せなかったでしょ」
左の肩を撫でたら、見た目よりもごつごつした感触にきゅんとして、なおさら胸が苦しくなった。彼を労わりたかっただけなのに。
「まぁね。でも、話し相手いなくてつまんなかったとかはないよ。別に他の奴と話したいこともなかったし。向かいの奴らは論外。今度からあいつらいるときは参加しないにしようかと思ってる。――というか、もうあの集まり卒業しようかな。俺は紗世ちゃんに会いに来てただけだし。初回からずっとね」
「…………今思うと、私もそういうとこあったかも。あそこには鏑木くんと話しに行ってた。みんなで集まってるはずなのに、長いことろくに喋ってない人のが多くなってたし……。二人で会ってるときと変わらなかったよね」
「紗世ちゃんも同じこと思ってた?♡♡ やっぱり俺たちって通じ合ってるんだね♡♡ ……まあ、そうなるように仕向けてた面もあるけど」
右手を銃の形にした彼は、私に照準を合わせて撃ち抜いた。小さく『Bang!』とも言っていた気がする。
「え? 『仕向けてた』?」
神に愛されしイケメンにしか許されない仕草だ。――――などと感心している場合ではなく。
「あれ? 俺たち毎回隣に座ってたんだけど、まさか気付いてなかった感じ? ……『今回も楽しくお喋りできたな~』って毎回ほくほくで帰ってたのは俺だけか。悲しいなあ……」
言い間違いか聞き間違いかと思って聞き返したけれど、肯定されてしまった。白々しくも愛らしい泣き真似とセットで。――銃を構えていたはずの手は、いつの間にか萌え袖に変わっていた。
「私も楽しかったし、『今日も鏑木くんの隣だ~。よく隣になるなあ』って思ってたけど、あれ偶然じゃなかったの!?」
しかし、『仕向ける』という言葉の持つ不穏な響きに鑑みれば、かわいらしい小細工ではないか。恋愛におけるそれは努力と称してもいいかもしれない。
「まさか♡ 偶然だったら凄まじい確率引き当ててることになるし、ご縁がある感じでいいけど――……。ごめんね♡♡ 俺が紗世ちゃんの隣を死守してただけ♡♡」
「そっかあ…………」
「怒らないんだ?」
「うん。たぶんだけど、離れて座ってても鏑木くんのとこまで行ってたんじゃないかと思うし、鏑木くんが仕組まなくてもこうなってた気がするんだよね。……聞き上手な人、他にいなかったでしょ? それに、鏑木くんのおかげで毎回楽しかったから別にいいかなって! ずっと私の隣にいてくれてありがとう♡」
伝えることを怠けていた感謝を込めて、再び胸に顔を埋めた。
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