yours-夢の罪過-

恋人遊戯

恋人遊戯＜134＞

「！」

　冷たく言い放った刹那、この空間で彼女だけが時間を止めてしまったかのごとく固まった。まばたきも呼吸も放棄した彼女は、精巧なつくりの蝋人形か何かのようだ。

「心の中で『あの人素敵だな』って思うくらいはいいと思うよ？　好きな人以外にも素敵な人はいっぱいいるから。だけど、紗世ちゃんは『いいな』って思ったら速攻で恋愛モード入っちゃうだろ」

　言いすぎたかもしれないと思い、軌道修正を図ったが、『次こそは俺を見てくれるのではないか』という淡く青い期待を悉く裏切られてきた経験が俺の口を動かした。

「それ、は――……そう、だけど…………」

　決まり悪そうに口ごもった彼女を見て、嗜虐心に駆られる。鼓動が急速に速まり、呼気によって人中が熱を帯び、組み敷いた細い身体の骨があちこち折れてしまうほど抱き締めたいという強い衝動が血に乗って駆け巡る。

（あ～……♡ 可愛いなあ♡♡ ぐっちゃぐちゃのどろっどろにしてあげたい……♡♡ 汗も涙も全部舐め取りたい♡ よしよしして俺だけに依存させれないかな？♡♡ 涙流させるのも止めるのも俺♡ とんでもない自作自演マッチポンプだけど、昏睡レイプよりはマイルドだやさしいよね？♡♡）
　
　人間は誰しも制御不能な領域を持っているはずだが、俺の場合は好きな女の子を甚振かわいがりたい欲求がそれに当たるらしい。

「…………ああ、訊かれる前に言っとこうか。悪くないよ、それ自体は。ただの性質だからね。問題があるのはそこじゃなくて、その性質が他の人にも共通してるんじゃないか――っていう思い込みを紗世ちゃんが持ってること」

「！！」

　返事のために再び動き出した彼女がまたもぴしっと固まった。

「もちろん紗世ちゃんと同じタイプの人もいるだろうけど、みんながみんなそうってわけじゃないよ。紗世ちゃんの場合は、相手も自分と同じタイプなんじゃないかって不安になって、ガチガチに束縛したりして関係が拗れるとか――そんな感じかな？　とにかく俺は簡単に恋に落ちたりしないから、不安にならなくていいよ。もし俺の指摘ことばに傷付いたなら詰ってくれていいし、殴ったり蹴ったりして気が済むならそうしてくれてもいい。……出来れば急・所・は避けてほしいけど、指図出来る立場じゃないしね」

　静止した彼女が最初に見せた大きな動きは、乳首をきゅっと摘まむことだった。

「！」

「急所って――――こ・こ・？♡♡」

　胸に置かれた手が悪戯を再開した――ことに気を取られた隙を狙い、彼女は攻勢に転じた。――といっても、特別なテクニックを使ったわけではない。埋め込んだ性器を締め付けてきただけだ。