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第4話 思い出はサイダーとともに
しおりを挟む「俺がどんなときでもサイダーを選ぶ理由の完全版、教えてやるよ。それ以上もそれ以外もないからな」
「話が早くて助かるぜ。聞かせろよ、オマエのサイダーにまつわる恋話ってやつをさ」
「…………期待されてるとこ悪いけど、サイダーに特別な思い出があるわけじゃないんだ。どっちかというと、片想いしてるときの印象のが強いくらいで」
砂糖どんだけ入ってんだよってぞっとするほど甘くて、來夢のボケみたいに舌の上で縦横無尽に弾ける炭酸を欲して、喉の渇きがピークに達した。禁断症状みたいじゃん。笑うしかないのに笑えねぇ。
「來夢、一緒帰るとき――……あ、今のは彼女の名前な。あいつ、いっつもサイダーのペットボトル持っててさ。付き合う前からなんだけど、毎回俺がいるのと逆の手に持ってたから『手繋いでもいいのかな』って期待したりして」
「うおお……! オマエの口からこんなベタな青春話が聞けるとは」
元からよく通る待田の声だが、今はいつにもまして大きい。相当テンション上がってんな。他人の気も知らずに呑気なこった。
「茶化すなよ。……結局、訊けないまま分かれ道まで来ちまうんだよな……。んで、『明日こそ!』って意気込むくせに、やっぱり無理で」
「オマエも可愛いとこあったんだな」
「うっせ。……付き合ってからもペットはずっと持ってたけど、デート行っても意外とサイダー飲める場所なくてさ」
「え? わりとどこのドリンクバーでも見かける気すんだけど、オマエらどんな店行ってたん?」
「あ、そっか。そういうとこ連れてけばよかったんだな。俺、店選びから間違えてたのか……」
「いや、サイダーのためだけにそこまでしなくていいだろ。察するに、オマエはいい彼氏だったと思うぞ」
「――んなわけないじゃん。手繋いでもいいかどうかも訊けなかったし、『好き』のひと言もずっと言えなかった。おまけに、ファミレス行けばサイダー飲めるって発想さえ出てこなかったダメ男だよ。俺は……」
來夢は俺のどこがよくて付き合ってたんだ? ――名前か? やっぱり名前しか取り柄のない男なのか、俺は。
「見るたんびに思い出すんだよ。手繋ぎたいのに勇気出なくて、來夢越しにこいつを謎に睨んでたときのこと。だから、これは――――あいつが好きだったものとかあいつを思い出すためのアイテムってより、俺の片想いの象徴……って感じなんだよな」
「ふーん? それはそれでいいんでね? 片想いしてたときの思い出も大事にしてるって事じゃん」
「んー……。そうなんだけど、それだけじゃないんだよな。『思い出せる』とか曖昧なのじゃなくて、もっと直接的なメリットがある。じゃなきゃ、あんな甘ったるい飲み物常飲してねぇよ」
「なんだよ。そのメリットってのは」
早く吐けと待田が肘で小突いてくる。こいつほんとわかりやすいな。聞かせ甲斐があって嫌いじゃない。誰かさんもそうだった。
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